短編2
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【クロスワードと恋のカギ】
ハートの城の執務室。
ひたすら仕事をするペーターの傍で、私はひたすらクロスワードパズルをしていた。
タテのカギ・ヨコのカギっていうあのパズル。
ペーターの仕事が終わるまでの暇つぶしで始めたが、いつのまにか本気になってしまうのが不思議。
「えぇと、ここは『ドレス』でしょ。それからここが『キャンディ』でしょ……」
白黒のマス目と問題を見比べて、私はどんどん問題を解いていく。
「ん? 和羹塩梅(わこうあんばい)とは有能な○○○○○のことである……ってなにそれ? 5文字?」
そんな言葉初めて聞いたんですけど。
ペーターに聞いてみようと彼を見ると、その横顔はかなり真剣。(そして端正)
けっこう真面目に仕事をしているようだった。邪魔はできない。
「……いいや、わからないから飛ばそう」
よし、次だ!と息込んだ私だったが、この世界ならではの問題ももちろんある。
「ハートの女王が好む花。あぁ、これは簡単!」
マスに『バラ』とかきながら、やっぱり有名人なんだなぁ、とビバルディを思い浮かべる。
「3勢力の1つで、城・マフィア、あともう一つ。……これは『遊園地』だよね。
ん? なにこれ。『回転式の銃のこと』? 5文字……」
か・い・て・ん・じゅう、違うなぁ。
ピ・ス・ト・ル?
指を折りながら考える私。
さすがというべきか、銃が標準装備のこの世界にはこんな問題が普通に出てくるのだ。
「あ! マ・シ・ン・ガ・ンかなぁ?」
あれって回転式なのかなぁ?
私は以前ブラッドがぶっ放していたマシンガン(薔薇付き)を思い浮かべる。
うーん、わからない。
ちらりとペーターを見てみる。
相変わらず書類とにらめっこしているが……もういいや。ペーターに聞いてみよう。
「ねぇペーター。回転式の銃を5文字で言うとなに? マシンガン?」
「回転式……リボルバー、ですかね」
書類を作成しているらしい彼は、ペンを止めずにさらりと答えた。
「リ・ボ・ル・バ・ー。あ、ほんとだ」
文字数を確認して、マスを埋めていく。
ついでにわからなかったところも全部聞いてみよう。
「えぇと……じゃあ『法令や方針・命令がむやみに変更されてさだまらないこと』の朝令○○○ってなに?」
「朝令暮改(ちょうれいぼかい)ですね」
すごいなこの人。
なに聞いてもすらすら答えるなぁ。(私が物を知らないだけなのかしら?)
感心する私をよそに、ペーターは眼鏡を押さえながらため息をついた。
「本当、女王陛下の朝令暮改ぶりはひどいです。あの人のせいで今僕は仕事に追われているんですよ」
忌々しそうに書類にサインをしている彼だけれど、なんだか知的に見える。
実際頭のいい人なんだろう。
「ありがと……仕事の邪魔してごめんね」
するとペーターが初めて仕事の手を止めて私を見た。
「邪魔? 僕はあなたに邪魔なんてされていませんよ」
「そう? ならいいんだけど私うるさくない?」
ぶつぶつと独り言を言いながら問題を解いていた私。
ユリウスなら確実にうるさいって怒っているだろう。
「いいえ。楽しいですよ。独り言のおかげで名無しさんの様子が見なくてもわかりますからね」
「……あ、そう」
それはそれでけっこう恥ずかしいかも。
「ところで名無しさん、ずいぶん前におっしゃっていた問題なんですけど」
「?」
「和羹塩梅とはっていうアレです」
「あぁ、うん。5文字のやつね。わからなくて飛ばしちゃった」
「あれは僕のことですよ」
「え?」
にこりと笑うペーターに、私は一瞬止まる。
どういうこと?
え、もしかして……でもまさかね?
「は・ら・ぐ・ろ・い?」
「違います。酷いこと言いますね、名無しさん」
勇気を出して言ってみたら、大真面目に否定された。(どうやら自覚はないらしい)
「えー、なに? どういう意味?」
「宰相のことですよ。主君を助けて、国を治める有能な宰相。それが和羹塩梅です」
「……」
にこにこ笑う彼をまじまじと見てしまった。
「あんなヒステリックな女王陛下だけじゃ、上手く国が回るわけないじゃないですか」
「……ははは」
ノーコメントにしておこう。
私のそんな思いに気づく様子もないペーターは、機嫌よさそうに続けた。
「名無しさん、もうすぐこれが終わるんです」
書類をぽんとたたいてペーターはじっと私を見つめた。
「あ、うん。おつかれさま。仕事早いね! さすが!和羹塩梅!」
覚えたての言葉を使ってはやし立ててみると、彼はちらりと私を見てため息をついた。
「褒められている気はしませんが、まぁいいでしょう。仕事が済んだら、お茶にしましょう」
「うん」
「だいぶ名無しさんを待たせてしまいましたからね、美味しいお茶を僕が淹れますよ」
「え、いいよ。仕事後のお茶は私が淹れてあげる」
遊んで待ってただけだし、と付け加えるとペーターはふわりと笑った。
「嬉しいです。ありがとうございます」
う……やられた。
そう素直にくるのは反則じゃない?
思わず頬を押さえるが、当の本人はすでに書類と向かい合っている。
頭が良くて有能な宰相だけれど、私が彼を好きだということにたぶん気づいていない。
クロスワードみたいに「カギ」をあげればすぐに答えてくれるかな?
ハートの城の執務室。
ひたすら仕事をするペーターの傍で、私はひたすらクロスワードパズルをしていた。
タテのカギ・ヨコのカギっていうあのパズル。
ペーターの仕事が終わるまでの暇つぶしで始めたが、いつのまにか本気になってしまうのが不思議。
「えぇと、ここは『ドレス』でしょ。それからここが『キャンディ』でしょ……」
白黒のマス目と問題を見比べて、私はどんどん問題を解いていく。
「ん? 和羹塩梅(わこうあんばい)とは有能な○○○○○のことである……ってなにそれ? 5文字?」
そんな言葉初めて聞いたんですけど。
ペーターに聞いてみようと彼を見ると、その横顔はかなり真剣。(そして端正)
けっこう真面目に仕事をしているようだった。邪魔はできない。
「……いいや、わからないから飛ばそう」
よし、次だ!と息込んだ私だったが、この世界ならではの問題ももちろんある。
「ハートの女王が好む花。あぁ、これは簡単!」
マスに『バラ』とかきながら、やっぱり有名人なんだなぁ、とビバルディを思い浮かべる。
「3勢力の1つで、城・マフィア、あともう一つ。……これは『遊園地』だよね。
ん? なにこれ。『回転式の銃のこと』? 5文字……」
か・い・て・ん・じゅう、違うなぁ。
ピ・ス・ト・ル?
指を折りながら考える私。
さすがというべきか、銃が標準装備のこの世界にはこんな問題が普通に出てくるのだ。
「あ! マ・シ・ン・ガ・ンかなぁ?」
あれって回転式なのかなぁ?
私は以前ブラッドがぶっ放していたマシンガン(薔薇付き)を思い浮かべる。
うーん、わからない。
ちらりとペーターを見てみる。
相変わらず書類とにらめっこしているが……もういいや。ペーターに聞いてみよう。
「ねぇペーター。回転式の銃を5文字で言うとなに? マシンガン?」
「回転式……リボルバー、ですかね」
書類を作成しているらしい彼は、ペンを止めずにさらりと答えた。
「リ・ボ・ル・バ・ー。あ、ほんとだ」
文字数を確認して、マスを埋めていく。
ついでにわからなかったところも全部聞いてみよう。
「えぇと……じゃあ『法令や方針・命令がむやみに変更されてさだまらないこと』の朝令○○○ってなに?」
「朝令暮改(ちょうれいぼかい)ですね」
すごいなこの人。
なに聞いてもすらすら答えるなぁ。(私が物を知らないだけなのかしら?)
感心する私をよそに、ペーターは眼鏡を押さえながらため息をついた。
「本当、女王陛下の朝令暮改ぶりはひどいです。あの人のせいで今僕は仕事に追われているんですよ」
忌々しそうに書類にサインをしている彼だけれど、なんだか知的に見える。
実際頭のいい人なんだろう。
「ありがと……仕事の邪魔してごめんね」
するとペーターが初めて仕事の手を止めて私を見た。
「邪魔? 僕はあなたに邪魔なんてされていませんよ」
「そう? ならいいんだけど私うるさくない?」
ぶつぶつと独り言を言いながら問題を解いていた私。
ユリウスなら確実にうるさいって怒っているだろう。
「いいえ。楽しいですよ。独り言のおかげで名無しさんの様子が見なくてもわかりますからね」
「……あ、そう」
それはそれでけっこう恥ずかしいかも。
「ところで名無しさん、ずいぶん前におっしゃっていた問題なんですけど」
「?」
「和羹塩梅とはっていうアレです」
「あぁ、うん。5文字のやつね。わからなくて飛ばしちゃった」
「あれは僕のことですよ」
「え?」
にこりと笑うペーターに、私は一瞬止まる。
どういうこと?
え、もしかして……でもまさかね?
「は・ら・ぐ・ろ・い?」
「違います。酷いこと言いますね、名無しさん」
勇気を出して言ってみたら、大真面目に否定された。(どうやら自覚はないらしい)
「えー、なに? どういう意味?」
「宰相のことですよ。主君を助けて、国を治める有能な宰相。それが和羹塩梅です」
「……」
にこにこ笑う彼をまじまじと見てしまった。
「あんなヒステリックな女王陛下だけじゃ、上手く国が回るわけないじゃないですか」
「……ははは」
ノーコメントにしておこう。
私のそんな思いに気づく様子もないペーターは、機嫌よさそうに続けた。
「名無しさん、もうすぐこれが終わるんです」
書類をぽんとたたいてペーターはじっと私を見つめた。
「あ、うん。おつかれさま。仕事早いね! さすが!和羹塩梅!」
覚えたての言葉を使ってはやし立ててみると、彼はちらりと私を見てため息をついた。
「褒められている気はしませんが、まぁいいでしょう。仕事が済んだら、お茶にしましょう」
「うん」
「だいぶ名無しさんを待たせてしまいましたからね、美味しいお茶を僕が淹れますよ」
「え、いいよ。仕事後のお茶は私が淹れてあげる」
遊んで待ってただけだし、と付け加えるとペーターはふわりと笑った。
「嬉しいです。ありがとうございます」
う……やられた。
そう素直にくるのは反則じゃない?
思わず頬を押さえるが、当の本人はすでに書類と向かい合っている。
頭が良くて有能な宰相だけれど、私が彼を好きだということにたぶん気づいていない。
クロスワードみたいに「カギ」をあげればすぐに答えてくれるかな?