マッドハッターズ!
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【18.二人きり】
ど、どうしよう……
私はアリスが出て行ったドアを呆然と見つめたまま、その場に立ち尽くした。
ブラッドの部屋に置き去りにされた私。
当然のことながら、私とブラッドの二人きりになってしまった。
確かにね、私はブラッドが好きですよ?
でも、こんな風に突然彼と二人きりにされるというのはいかがなものだろう。
あからさますぎやしませんか?(もっと他に気の使い方があると思うの)
気まずいから私も帰ろう、そう思った時だった。
「予想外の状況、という顔をしているね。名無しさん」
ブラッドが楽しそうに笑うので、ちらりと彼を見た。
「別に取って食いやしないよ、お嬢さん。せっかくだから紅茶を飲んでいきなさい」
穏やかに、でも笑みを含んだ声色で言うブラッド。
一瞬のうちにどうするべきか散々迷ったが、断る理由も見つけられず、結局私は紅茶をごちそうになることにした。
「……美味しい」
思わぬ展開に緊張する私だったけれど、紅茶ははっとするくらい美味しかった。
ブラッドは満足そうに私をみてうなずいた。
「そうだろう? 名無しさんにぜひ飲んでほしかったんだ」
彼の部屋で紅茶を飲むのは初めてだ。
なんだかすごく変な感じ。
ブラッドの部屋の座り心地のいいソファに座って、美味しい紅茶を飲むというのはものすごく特別な気がした。
きっとこの紅茶だってものすごく貴重なものに違いない。(部屋に隠し持っているくらいだし)
斜め向かいに座るブラッドを見ると、彼は顔を上げた。
「どうした、名無しさん?」
「ブラッドは本当に紅茶が好きなんだなぁと思って」
「あぁ、好きだよ。 今の所、これ以上のものは思い浮かばないな」
優雅に紅茶を飲みながら、きっぱりと言い切ったブラッド。
彼はティーカップをソーサーに戻すと、まっすぐに私を見た。
「……」
「……??」
やけにじっと見つめてくるので、何か言葉が続くのかと思い待ってみた。
しかし、何も言わないブラッド。
さすがに耐えかねた私は口を開いた。
「な、なんですか?」
「いや、紅茶以上のものがあるかもう一度よく考えていただけだよ」
ブラッドは私を探るような目で見ながら、そう言った。
含みを感じる彼の視線と言葉。
思い切り動揺してしまう自分をなんとか押さえて、「……ふぅん」と返すのがやっとだった。
すると彼は、ふふっと小さく笑う。
あぁ、もう絶対に私の動揺っぷりを楽しんでいるんだろうな、この人。
恥ずかしさと、これ以上何か言われたくないという思いで、私は話題を変えようと必死に考えを巡らせた。
「えーと……あ、そうそう! 本! 私、本を読むのがすごく遅いんだけど、返すのが遅くなってもいい?」
無理やり思いついた話題ではあったが嘘ではない。
不自然な話題転換にブラッドはちゃんと乗ってきてくれた。
「本なんて急いで読むものじゃない。ゆっくり読むといい」
「ありがとう」
「ここへ読みに来たって構わないよ」
「ここって、ブラッドの部屋ってこと?」
私の言葉にうなずきながらブラッドが言う。
「名無しさんならいつでも歓迎するよ」
「うん、ありがとう。遠慮します」
「ずいぶんきっぱりと拒否するね」
明るく拒否した私に、ブラッドが笑う。
「一人でゆっくり読んだ方が集中できるもん」
「なるほど。確かに私がいたら名無しさんは集中できなそうだ」
どういう意味よと思ったらブラッドは立ち上がり、私の隣りに座った。
突然の彼の行動を見守ることしかできない。
「私が名無しさんに構ってほしくなるからね」
隣に座ったブラッドは、私を見て薄く笑った。
手袋をした手のひらが目の前を通り過ぎたかと思ったら、その手が私の頬に触れた。
彼の方へ顔を向かされてしまう。
目が合い、どきりとして息が詰まりそうになった。
そんな私とは逆に、ブラッドはすごく落ち着いた様子で静かに言った。
「せっかく2人きりなのに、本なんて読まれたらつまらない」
「……今、本は読んでないよ!」
ブラッドの手から逃れようと、私は横へ移動して座りなおす。
彼の手が宙へ落ちた。
「あぁ、そうだね」
距離を取った私をブラッドが楽しそうに見る。
「でも、せっかくアリスが気を利かせてくれたんだ。それなりの成果を上げるべきだと思わないか?」
「!?」
彼の言葉に何も言えなくなる。
黙り込む私に、ブラッドは追い打ちをかけた。
「彼女の気持ちにこたえるという意味でも、そろそろ素直になったらどうかな? お嬢さん」
あぁやっぱり。
この人は全部知っている。
私は逃げだしたい気持ちをなんとか抑えて、目の前のブラッドを見つめた。
私の気持ちも、状況も、もしかしたら私とアリスの乙女トークすらおおよその所は分かっているのかもしれない。
その上で、これまでずっと黙っていたんだ。(すごい意地悪)
「名無しさん、私は君がなにをそんなに躊躇しているのかがわからないよ」
「……ブラッドほど厄介な人ってそうそういないでしょ」
わたしの言葉にブラッドは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑い出した。
「なるほど……それが素直になってくれない原因か」
「……」
もう告白したも同然な会話じゃないですか、これ。
「つまらない男より、よっぽどいいと思うがね。飽きないだろう?」
「刺激を求めているわけじゃないのよ、私は」
もうなんだかよくわからなくなって、そんなことまで言ってしまう。
ブラッドはふむ、と考え込む仕草を見せてから私に向き直った。
「名無しさん、私にしては珍しく時間をかけている方なんだ」
「え?」
「でも、これ以上待つのも面倒だ。そろそろ方法を変えようか」
そう言ったかと思うと、彼は私の肩を押した。
あっというまにソファに押し倒される私。
「ちょっ……!?」
驚く私を、ブラッドがじっと見下ろす。
私の顔にかかった髪の毛を優しく払い、ブラッドが私の名を口にした。
「名無しさん」
頭は真っ白で、ドキドキとかそんなものは通り越してしまっている。
自分の鼓動なのに、誰かが耳元で太鼓でも叩いているんじゃないかと思うくらいの音がする。
「……離して」
「嫌だ」
「そんなの困る」
私の答えに、彼は楽しそうに笑って「困る、か」とつぶやいた。
「困っている名無しさんが可愛くて仕方ないよ。私は君を困らせるのが好きなんだ」
「最低」
私のつぶやきに、ブラッドはふふふと笑った。
「……ブラッド、からかわれるのは嫌だよ私」
「からかってなんかいないよ。前にも言ったと思うがね」
ブラッドはそう言って私の耳元にキスをする。
思わずびくりとしてしまうけれど、拒否しきれないのはなぜなのか。自分が嫌になる。
「……もうやだよ」
ぽろりと出た言葉。私の言葉にブラッドの表情が曇った。
「何が嫌なんだ」
わからない。
ブラッドが嫌なのか、こういうことをされるのが嫌なのか、拒否しきれない自分が嫌なのか。
それとも、気まぐれなブラッドに振り回されて、あとでみじめになるのが嫌なのか。
「わからないな。私は君の気持ちを聞きたいだけなんだが」
私だってよくわからない。
あれこれ考えすぎるのがいけないのかもしれない。
好きだと素直に言えばいいのかな。
たとえ、この人の気まぐれで遊ばれていたとしても、いつか飽きられることがあっても、素直に言えばいいの?
追い詰められて混乱する私に、ブラッドがすっと顔を寄せる。
「君がこれ以上悩まなくてもいいようにしてあげようか、名無しさん」
ブラッドはそう言ってそのまま私にキスをした。
深くなるそれのせいで、彼の言う通り悩むことなんてできない。
ただ息が苦しくて、胸が痛い。
好きだって言ったらこの痛みは楽になるのかもしれない。
唇が離れ、目を開けるとブラッドが口元に笑みを浮かべて、じっと私を見ていた。
「わたしは……」
自分が何を言おうとしているのかもわからない。
でも勝手に口が動いた。
「わたしは、あなたみたいな人に振り回されるのは嫌なの」
「ほう……」
私の言葉にブラッドは小さく笑う。でも目が真剣だった。
その目がちょっと怖かったけれど、私の言葉はもう止まらない。
「自分勝手だし、いつもだるそうだし、めんどくさがりだし、いきなりキスとかするし、人のことからかっておもしろがるし、マフィアのボスなんていう怖い人だし、でも……」
そこまで言って私はため息をついた。
こんなに嫌な面があるというのに、私はそんな彼に対して、全てをひっくるめて全然違うことを言おうとしている。
自分の気持ちをすべて素直に言うとなると、この先も言わなければいけないのだ。
私はまっすぐにブラッドを見た。
「それでも、わたしはブラッドのことが好き」
言った瞬間、すっと肩の力が抜けた。脱力。
本当は伝えたくて仕方なかったのかもしれない。そう思うくらいスッキリした。
もう何を言われてもいいや、言うべきことは全て言った。
そんな感覚だった。
ブラッドはというと、たっぷり10秒くらい私を見つめてから口を開いた。
「あぁ、知っているよ」
「なっ!?」
何を言われてもいいやとは思ったけど、あまりにさらりとそんなことを言われてびっくりした。
あぁ、やっぱり遊ばれていたのね、私。
落ち込みと情けなさで、目の前が真っ暗になった。
「ずっとその言葉を待っていたんだ」
意地悪く笑っていたけれど、優しい目でブラッドが私を見ていた。
「いつ名無しさんがそれを言い出すのか、そればかり気になっていたよ」
なかなか複雑な気持ちにさせてくれる告白だったがね、と笑うブラッドを不思議な気持ちで見つめていると、彼は再び唇を寄せた。
「もう君は私のものだ」
キスの合間に小さく囁かれた言葉は、私の胸を甘くしめつけた。
ど、どうしよう……
私はアリスが出て行ったドアを呆然と見つめたまま、その場に立ち尽くした。
ブラッドの部屋に置き去りにされた私。
当然のことながら、私とブラッドの二人きりになってしまった。
確かにね、私はブラッドが好きですよ?
でも、こんな風に突然彼と二人きりにされるというのはいかがなものだろう。
あからさますぎやしませんか?(もっと他に気の使い方があると思うの)
気まずいから私も帰ろう、そう思った時だった。
「予想外の状況、という顔をしているね。名無しさん」
ブラッドが楽しそうに笑うので、ちらりと彼を見た。
「別に取って食いやしないよ、お嬢さん。せっかくだから紅茶を飲んでいきなさい」
穏やかに、でも笑みを含んだ声色で言うブラッド。
一瞬のうちにどうするべきか散々迷ったが、断る理由も見つけられず、結局私は紅茶をごちそうになることにした。
「……美味しい」
思わぬ展開に緊張する私だったけれど、紅茶ははっとするくらい美味しかった。
ブラッドは満足そうに私をみてうなずいた。
「そうだろう? 名無しさんにぜひ飲んでほしかったんだ」
彼の部屋で紅茶を飲むのは初めてだ。
なんだかすごく変な感じ。
ブラッドの部屋の座り心地のいいソファに座って、美味しい紅茶を飲むというのはものすごく特別な気がした。
きっとこの紅茶だってものすごく貴重なものに違いない。(部屋に隠し持っているくらいだし)
斜め向かいに座るブラッドを見ると、彼は顔を上げた。
「どうした、名無しさん?」
「ブラッドは本当に紅茶が好きなんだなぁと思って」
「あぁ、好きだよ。 今の所、これ以上のものは思い浮かばないな」
優雅に紅茶を飲みながら、きっぱりと言い切ったブラッド。
彼はティーカップをソーサーに戻すと、まっすぐに私を見た。
「……」
「……??」
やけにじっと見つめてくるので、何か言葉が続くのかと思い待ってみた。
しかし、何も言わないブラッド。
さすがに耐えかねた私は口を開いた。
「な、なんですか?」
「いや、紅茶以上のものがあるかもう一度よく考えていただけだよ」
ブラッドは私を探るような目で見ながら、そう言った。
含みを感じる彼の視線と言葉。
思い切り動揺してしまう自分をなんとか押さえて、「……ふぅん」と返すのがやっとだった。
すると彼は、ふふっと小さく笑う。
あぁ、もう絶対に私の動揺っぷりを楽しんでいるんだろうな、この人。
恥ずかしさと、これ以上何か言われたくないという思いで、私は話題を変えようと必死に考えを巡らせた。
「えーと……あ、そうそう! 本! 私、本を読むのがすごく遅いんだけど、返すのが遅くなってもいい?」
無理やり思いついた話題ではあったが嘘ではない。
不自然な話題転換にブラッドはちゃんと乗ってきてくれた。
「本なんて急いで読むものじゃない。ゆっくり読むといい」
「ありがとう」
「ここへ読みに来たって構わないよ」
「ここって、ブラッドの部屋ってこと?」
私の言葉にうなずきながらブラッドが言う。
「名無しさんならいつでも歓迎するよ」
「うん、ありがとう。遠慮します」
「ずいぶんきっぱりと拒否するね」
明るく拒否した私に、ブラッドが笑う。
「一人でゆっくり読んだ方が集中できるもん」
「なるほど。確かに私がいたら名無しさんは集中できなそうだ」
どういう意味よと思ったらブラッドは立ち上がり、私の隣りに座った。
突然の彼の行動を見守ることしかできない。
「私が名無しさんに構ってほしくなるからね」
隣に座ったブラッドは、私を見て薄く笑った。
手袋をした手のひらが目の前を通り過ぎたかと思ったら、その手が私の頬に触れた。
彼の方へ顔を向かされてしまう。
目が合い、どきりとして息が詰まりそうになった。
そんな私とは逆に、ブラッドはすごく落ち着いた様子で静かに言った。
「せっかく2人きりなのに、本なんて読まれたらつまらない」
「……今、本は読んでないよ!」
ブラッドの手から逃れようと、私は横へ移動して座りなおす。
彼の手が宙へ落ちた。
「あぁ、そうだね」
距離を取った私をブラッドが楽しそうに見る。
「でも、せっかくアリスが気を利かせてくれたんだ。それなりの成果を上げるべきだと思わないか?」
「!?」
彼の言葉に何も言えなくなる。
黙り込む私に、ブラッドは追い打ちをかけた。
「彼女の気持ちにこたえるという意味でも、そろそろ素直になったらどうかな? お嬢さん」
あぁやっぱり。
この人は全部知っている。
私は逃げだしたい気持ちをなんとか抑えて、目の前のブラッドを見つめた。
私の気持ちも、状況も、もしかしたら私とアリスの乙女トークすらおおよその所は分かっているのかもしれない。
その上で、これまでずっと黙っていたんだ。(すごい意地悪)
「名無しさん、私は君がなにをそんなに躊躇しているのかがわからないよ」
「……ブラッドほど厄介な人ってそうそういないでしょ」
わたしの言葉にブラッドは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑い出した。
「なるほど……それが素直になってくれない原因か」
「……」
もう告白したも同然な会話じゃないですか、これ。
「つまらない男より、よっぽどいいと思うがね。飽きないだろう?」
「刺激を求めているわけじゃないのよ、私は」
もうなんだかよくわからなくなって、そんなことまで言ってしまう。
ブラッドはふむ、と考え込む仕草を見せてから私に向き直った。
「名無しさん、私にしては珍しく時間をかけている方なんだ」
「え?」
「でも、これ以上待つのも面倒だ。そろそろ方法を変えようか」
そう言ったかと思うと、彼は私の肩を押した。
あっというまにソファに押し倒される私。
「ちょっ……!?」
驚く私を、ブラッドがじっと見下ろす。
私の顔にかかった髪の毛を優しく払い、ブラッドが私の名を口にした。
「名無しさん」
頭は真っ白で、ドキドキとかそんなものは通り越してしまっている。
自分の鼓動なのに、誰かが耳元で太鼓でも叩いているんじゃないかと思うくらいの音がする。
「……離して」
「嫌だ」
「そんなの困る」
私の答えに、彼は楽しそうに笑って「困る、か」とつぶやいた。
「困っている名無しさんが可愛くて仕方ないよ。私は君を困らせるのが好きなんだ」
「最低」
私のつぶやきに、ブラッドはふふふと笑った。
「……ブラッド、からかわれるのは嫌だよ私」
「からかってなんかいないよ。前にも言ったと思うがね」
ブラッドはそう言って私の耳元にキスをする。
思わずびくりとしてしまうけれど、拒否しきれないのはなぜなのか。自分が嫌になる。
「……もうやだよ」
ぽろりと出た言葉。私の言葉にブラッドの表情が曇った。
「何が嫌なんだ」
わからない。
ブラッドが嫌なのか、こういうことをされるのが嫌なのか、拒否しきれない自分が嫌なのか。
それとも、気まぐれなブラッドに振り回されて、あとでみじめになるのが嫌なのか。
「わからないな。私は君の気持ちを聞きたいだけなんだが」
私だってよくわからない。
あれこれ考えすぎるのがいけないのかもしれない。
好きだと素直に言えばいいのかな。
たとえ、この人の気まぐれで遊ばれていたとしても、いつか飽きられることがあっても、素直に言えばいいの?
追い詰められて混乱する私に、ブラッドがすっと顔を寄せる。
「君がこれ以上悩まなくてもいいようにしてあげようか、名無しさん」
ブラッドはそう言ってそのまま私にキスをした。
深くなるそれのせいで、彼の言う通り悩むことなんてできない。
ただ息が苦しくて、胸が痛い。
好きだって言ったらこの痛みは楽になるのかもしれない。
唇が離れ、目を開けるとブラッドが口元に笑みを浮かべて、じっと私を見ていた。
「わたしは……」
自分が何を言おうとしているのかもわからない。
でも勝手に口が動いた。
「わたしは、あなたみたいな人に振り回されるのは嫌なの」
「ほう……」
私の言葉にブラッドは小さく笑う。でも目が真剣だった。
その目がちょっと怖かったけれど、私の言葉はもう止まらない。
「自分勝手だし、いつもだるそうだし、めんどくさがりだし、いきなりキスとかするし、人のことからかっておもしろがるし、マフィアのボスなんていう怖い人だし、でも……」
そこまで言って私はため息をついた。
こんなに嫌な面があるというのに、私はそんな彼に対して、全てをひっくるめて全然違うことを言おうとしている。
自分の気持ちをすべて素直に言うとなると、この先も言わなければいけないのだ。
私はまっすぐにブラッドを見た。
「それでも、わたしはブラッドのことが好き」
言った瞬間、すっと肩の力が抜けた。脱力。
本当は伝えたくて仕方なかったのかもしれない。そう思うくらいスッキリした。
もう何を言われてもいいや、言うべきことは全て言った。
そんな感覚だった。
ブラッドはというと、たっぷり10秒くらい私を見つめてから口を開いた。
「あぁ、知っているよ」
「なっ!?」
何を言われてもいいやとは思ったけど、あまりにさらりとそんなことを言われてびっくりした。
あぁ、やっぱり遊ばれていたのね、私。
落ち込みと情けなさで、目の前が真っ暗になった。
「ずっとその言葉を待っていたんだ」
意地悪く笑っていたけれど、優しい目でブラッドが私を見ていた。
「いつ名無しさんがそれを言い出すのか、そればかり気になっていたよ」
なかなか複雑な気持ちにさせてくれる告白だったがね、と笑うブラッドを不思議な気持ちで見つめていると、彼は再び唇を寄せた。
「もう君は私のものだ」
キスの合間に小さく囁かれた言葉は、私の胸を甘くしめつけた。