マッドハッターズ!
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【17. 恋心】
結局アリスに押し切られて、一緒にブラッドに会いに行くことになってしまった。
彼の部屋の前に立ち、顔を見合わせる私とアリス。
「……ねぇアリス。私、今ものすごく緊張してるんですけど」
「それはときめきと言うんじゃないの?」
私の言葉に、含み笑いするアリス。
「違うよ逃げたい帰っていい?」
「だめ」
恥ずかしくてばーっとしゃべった私だったけれど、にっこり笑ったアリスにあっさりと却下された。(可愛い顔してけっこう鬼だな)
アリスはそれはもう楽しそうで、「じゃあ行くわよ」とブラッドの部屋のドアをノックした。
「こんにちは、ブラッド」
アリスがドア越しに声をかける。
2,3秒してから「どうぞ」と言う声が聞こえてきた。
私達は再び顔を見合わせる。
「どうぞの一言すら気だるげってすごいわね」
アリスは変な感心の仕方をしているが、私は緊張してそれどころじゃない。
今ならまだ逃げられるかもと往生際悪く考えていたら、アリスは「逃げないでね?」と私の手を掴みながらドアを開けた。(バレてました)
ブラッドは仕事をしていたらしい。
帽子と上着を外して、ペンを片手に机で何かを書いていた。
私達が部屋に入ると、手をとめて顔をあげる。
「やぁ、お嬢さん」
「こんにちは、ブラッド」
「君が尋ねてくるなんて珍しいね」
そうアリスに声をかけてから、彼はちらりと私を見る。
「名無しさんも一緒とはますます珍しい」
「私達仲良しだから」
アリスはそう答えながら「ね?」と私に笑いかけた。
「それはいいことだ。2人で会いに来てくれるとは嬉しいよ」
「本を貸してもらおうと思ったの」
「あぁ、どうぞ。好きなだけ持っていくといい」
「ありがとう」
彼らのやりとりを一歩下がってぼんやり見ていた私。
アリスはさっさと本棚の前へ行くとあれこれ物色し始めた。(さすが読書家)
彼女が私の目の前から本棚へと行ってしまったので、自然とブラッドと向き合う形になった。
ふと見ると、彼は私をじっと見つめていた。
ドキリと鼓動が跳ね、私は思わず視線を逸らす。
あぁ、またやってしまった。これじゃあ本当に感じの悪い子だよ私。
しかし、ブラッドは特にそこを追及はせずいつも通りの調子で話しかけてきた。
「君も好きな本を選んだらどうだ? 名無しさん」
「え、えぇと……う、うん」
ブラッドの言葉に思わずうなずいてしまったので、私はアリスの隣りに並び本棚を見渡した。
アリスは真剣に本を選んでいるが、私はもうタイトルを読むことすらできなかった。目で文字を追っても、意味が頭に入ってこないのだ。
意識は完全に目の前の本ではない。
背中にものすごく視線を感じるけど、それはたぶん気のせいなんだろう。
ブラッドを意識するあまり、私の体は勝手に彼を感じようとするらしい。(いや、変な意味じゃなくてね)
はぁ……ダメだ。耐え切れない。
私ってこんなにも恋愛下手というか、奥手だったのね……相手が相手だからかもしれないけど情けない。
恋愛って今まで気づかなかった自分を知ることでもあるのかもしれない。
こってこての恋愛小説でも借りて勉強してやるかとやけになってみるが、ブラッドの本棚にそんな小説があるわけがないし、あったらちょっと嫌だ。
1人でぐるぐると考えていたら、真横からすっと手が伸びてきた。
「そんなに悩むなら私が選んであげようか? 名無しさん」
はっと意識を戻すと、いつのまにか背後にブラッドがいた。
私は金縛りにあったようにそのまま動けず、彼の手が本棚の前を行き来するのを目で追う。
「名無しさんの好みはどういうものだろうね」
その言葉が本の分野についてを指しているのは十分わかっている。
でも思わずドキリとしてしまった。
「好みのタイプとはちょっと違うけど、あなたが好きになってしまいました」と言わされるんじゃないかと思った。
私の気持ちに気づかれているような気がして、なんとも気まずい。
とりあえず何かを言わなければ、ということで私の口から出たのはこれだった。
「……あまり難しくないものがいいです」
「なるほど」
すぐ後ろでくすくすと笑うブラッドの気配。(頼むから横にきてくれないかな)
落ち着かない私をよそに、彼はすいすいと本を選んでいく。
「名無しさんならこういうのがいいのかもしれないな。それから、これとこれも……」
そう言いながら、彼は本をいくつか取り出して私に持たせた。
ジャンルはバラバラだったけれど難しくなさそうだし、タイトル的にも私の興味を引くものばかりだ。
「ありがとう、ブラッド」
私はそこで初めてくるりと振り返ってブラッドを見た。
久しぶりにまじまじと彼を見た気がする。
帽子のない彼はかっこよさ3割増しだ、なんて思う私は相当やられている。(恋って恐ろしい)
「どういたしまして」
珍しく素直に返してきたブラッド。本好きとしては人に本を勧めるのが嬉しいのかもしれない。
その時私はふとアリスを見た。
それはもうニヤニヤと笑っていた彼女に、私はとてつもなく恥ずかしくなり、さっとブラッドから離れる。
あぁ、もう子どもみたいな反応じゃないですか。(アリスも私も!)
ブラッドはそんな私達に絶対気づくに決まっている。
けれど、彼はそれについてはまたもや何も言わなかった。
「そちらのお嬢さんはもう決まったかな?」
「えぇ。3冊借りていくわね」
「本好きのお嬢さんにはおすすめがあるんだ。もし持てればということだが」
「本当? じゃあそれもお願い」
そこから彼らは本好き同士のトークを繰り広げ始めた。
半端じゃなく読む2人なので、話始めると色々盛り上がるようだった。
うん、なんかやっぱりあの2人の方がしっくりくる気がする。
…………。
今が2人の関係の始まりだったりして。
途切れることのない会話を続ける2人を見て、私の頭の中にそんな思いがよぎる。
だとしたらなに? 私ってすごい噛ませ犬的な役回りかしら?
そこまで考えて私は、自分がものすごーくマイナス思考に陥っていることに気がついた。
わりと楽天的な方だと思っていたけれど、やっぱり恋愛が絡むとこういう思考になるのね。
あぁ、私この時間で色々な自分を発見した気がするわ。
これ以上2人を見ていたら、嫌な自分を発見してしまいそうだ。
先に帰ろうかな、と思った時だった。
「あ!!」
突然アリスが声を上げた。
私もそしてブラッドも彼女を見つめる。
「私、ユリウスに買い物を頼まれてたんだ! 忘れてた!!」
そしてバタバタと借りた本をバックに詰め込みながら、私に言った。
「ごめん、名無しさん。先に行くわね! ブラッドも本をどうもありがとう! またね!!」
「え、あの、アリス!?」
「名無しさん、また遊びましょう」
いや、遊びましょうって……うん、遊ぶけどね?
突然のアリスの行動に驚く私。
彼女はすれ違いざまに「がんばってね☆」とささやきながらポンと私の肩をたたいた。
はっとアリスを見ると、彼女はウィンクという古典的な方法で合図を送り、さっさとドアから出て行ってしまった。
……謀ったな。
呆然と見送る私は、ブラッドと部屋に取り残されてしまった。
結局アリスに押し切られて、一緒にブラッドに会いに行くことになってしまった。
彼の部屋の前に立ち、顔を見合わせる私とアリス。
「……ねぇアリス。私、今ものすごく緊張してるんですけど」
「それはときめきと言うんじゃないの?」
私の言葉に、含み笑いするアリス。
「違うよ逃げたい帰っていい?」
「だめ」
恥ずかしくてばーっとしゃべった私だったけれど、にっこり笑ったアリスにあっさりと却下された。(可愛い顔してけっこう鬼だな)
アリスはそれはもう楽しそうで、「じゃあ行くわよ」とブラッドの部屋のドアをノックした。
「こんにちは、ブラッド」
アリスがドア越しに声をかける。
2,3秒してから「どうぞ」と言う声が聞こえてきた。
私達は再び顔を見合わせる。
「どうぞの一言すら気だるげってすごいわね」
アリスは変な感心の仕方をしているが、私は緊張してそれどころじゃない。
今ならまだ逃げられるかもと往生際悪く考えていたら、アリスは「逃げないでね?」と私の手を掴みながらドアを開けた。(バレてました)
ブラッドは仕事をしていたらしい。
帽子と上着を外して、ペンを片手に机で何かを書いていた。
私達が部屋に入ると、手をとめて顔をあげる。
「やぁ、お嬢さん」
「こんにちは、ブラッド」
「君が尋ねてくるなんて珍しいね」
そうアリスに声をかけてから、彼はちらりと私を見る。
「名無しさんも一緒とはますます珍しい」
「私達仲良しだから」
アリスはそう答えながら「ね?」と私に笑いかけた。
「それはいいことだ。2人で会いに来てくれるとは嬉しいよ」
「本を貸してもらおうと思ったの」
「あぁ、どうぞ。好きなだけ持っていくといい」
「ありがとう」
彼らのやりとりを一歩下がってぼんやり見ていた私。
アリスはさっさと本棚の前へ行くとあれこれ物色し始めた。(さすが読書家)
彼女が私の目の前から本棚へと行ってしまったので、自然とブラッドと向き合う形になった。
ふと見ると、彼は私をじっと見つめていた。
ドキリと鼓動が跳ね、私は思わず視線を逸らす。
あぁ、またやってしまった。これじゃあ本当に感じの悪い子だよ私。
しかし、ブラッドは特にそこを追及はせずいつも通りの調子で話しかけてきた。
「君も好きな本を選んだらどうだ? 名無しさん」
「え、えぇと……う、うん」
ブラッドの言葉に思わずうなずいてしまったので、私はアリスの隣りに並び本棚を見渡した。
アリスは真剣に本を選んでいるが、私はもうタイトルを読むことすらできなかった。目で文字を追っても、意味が頭に入ってこないのだ。
意識は完全に目の前の本ではない。
背中にものすごく視線を感じるけど、それはたぶん気のせいなんだろう。
ブラッドを意識するあまり、私の体は勝手に彼を感じようとするらしい。(いや、変な意味じゃなくてね)
はぁ……ダメだ。耐え切れない。
私ってこんなにも恋愛下手というか、奥手だったのね……相手が相手だからかもしれないけど情けない。
恋愛って今まで気づかなかった自分を知ることでもあるのかもしれない。
こってこての恋愛小説でも借りて勉強してやるかとやけになってみるが、ブラッドの本棚にそんな小説があるわけがないし、あったらちょっと嫌だ。
1人でぐるぐると考えていたら、真横からすっと手が伸びてきた。
「そんなに悩むなら私が選んであげようか? 名無しさん」
はっと意識を戻すと、いつのまにか背後にブラッドがいた。
私は金縛りにあったようにそのまま動けず、彼の手が本棚の前を行き来するのを目で追う。
「名無しさんの好みはどういうものだろうね」
その言葉が本の分野についてを指しているのは十分わかっている。
でも思わずドキリとしてしまった。
「好みのタイプとはちょっと違うけど、あなたが好きになってしまいました」と言わされるんじゃないかと思った。
私の気持ちに気づかれているような気がして、なんとも気まずい。
とりあえず何かを言わなければ、ということで私の口から出たのはこれだった。
「……あまり難しくないものがいいです」
「なるほど」
すぐ後ろでくすくすと笑うブラッドの気配。(頼むから横にきてくれないかな)
落ち着かない私をよそに、彼はすいすいと本を選んでいく。
「名無しさんならこういうのがいいのかもしれないな。それから、これとこれも……」
そう言いながら、彼は本をいくつか取り出して私に持たせた。
ジャンルはバラバラだったけれど難しくなさそうだし、タイトル的にも私の興味を引くものばかりだ。
「ありがとう、ブラッド」
私はそこで初めてくるりと振り返ってブラッドを見た。
久しぶりにまじまじと彼を見た気がする。
帽子のない彼はかっこよさ3割増しだ、なんて思う私は相当やられている。(恋って恐ろしい)
「どういたしまして」
珍しく素直に返してきたブラッド。本好きとしては人に本を勧めるのが嬉しいのかもしれない。
その時私はふとアリスを見た。
それはもうニヤニヤと笑っていた彼女に、私はとてつもなく恥ずかしくなり、さっとブラッドから離れる。
あぁ、もう子どもみたいな反応じゃないですか。(アリスも私も!)
ブラッドはそんな私達に絶対気づくに決まっている。
けれど、彼はそれについてはまたもや何も言わなかった。
「そちらのお嬢さんはもう決まったかな?」
「えぇ。3冊借りていくわね」
「本好きのお嬢さんにはおすすめがあるんだ。もし持てればということだが」
「本当? じゃあそれもお願い」
そこから彼らは本好き同士のトークを繰り広げ始めた。
半端じゃなく読む2人なので、話始めると色々盛り上がるようだった。
うん、なんかやっぱりあの2人の方がしっくりくる気がする。
…………。
今が2人の関係の始まりだったりして。
途切れることのない会話を続ける2人を見て、私の頭の中にそんな思いがよぎる。
だとしたらなに? 私ってすごい噛ませ犬的な役回りかしら?
そこまで考えて私は、自分がものすごーくマイナス思考に陥っていることに気がついた。
わりと楽天的な方だと思っていたけれど、やっぱり恋愛が絡むとこういう思考になるのね。
あぁ、私この時間で色々な自分を発見した気がするわ。
これ以上2人を見ていたら、嫌な自分を発見してしまいそうだ。
先に帰ろうかな、と思った時だった。
「あ!!」
突然アリスが声を上げた。
私もそしてブラッドも彼女を見つめる。
「私、ユリウスに買い物を頼まれてたんだ! 忘れてた!!」
そしてバタバタと借りた本をバックに詰め込みながら、私に言った。
「ごめん、名無しさん。先に行くわね! ブラッドも本をどうもありがとう! またね!!」
「え、あの、アリス!?」
「名無しさん、また遊びましょう」
いや、遊びましょうって……うん、遊ぶけどね?
突然のアリスの行動に驚く私。
彼女はすれ違いざまに「がんばってね☆」とささやきながらポンと私の肩をたたいた。
はっとアリスを見ると、彼女はウィンクという古典的な方法で合図を送り、さっさとドアから出て行ってしまった。
……謀ったな。
呆然と見送る私は、ブラッドと部屋に取り残されてしまった。