マッドハッターズ!
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【16.隠しきれない気持ち】
ブラッドから好かれたいのかもしれない、なんてあの夜に思ってしまったのは本当に失敗だった。
一度そう思ったらもうダメだ。
私はブラッドのことが気になって仕方がなくなってしまった。
いや、自分に嘘をついても仕方ない。
正直に言えば、彼のことが気になって仕方がないのはもっと前から始まっていた。
でもあのピクニックの夜に、もっと具体的にはっきりと自分の気持ちに確信を持ってしまった。
嫌だけど。認めたくないけど。
でもここまできたら認めざるを得ない。
……はっきりと言いましょう。
えぇ、そうです。
私は帽子屋ファミリーのボスである、ブラッド=デュプレが好きになってしまいました。
「あぁでもこんな予定じゃなかった。こんなはずじゃなかったのに……」
私は自分の部屋のテーブルに突っ伏してため息をついた。
ブラッドとは友達として一緒にいるのが一番いい、そう思っていた。
その反面、いつか戻れない所まで気持ちが進んでしまうんじゃないかという予感もしていた。
かなり前のことだと思うけど、本当に当たってしまうなんて……。
そりゃあね、かっこいい人だとは思っていましたよ? (見た目はね!)
「でも気分屋だし、だるそうだし、人のことおもちゃだと思ってるみたいだし、なんたってマフィアのボスという危険な人だし、セクハラっぽいけどモテるだろうし、つまりは色々経験豊富そうだし、私とは全く違うタイプの人じゃないですか!」
私は自分を本当にごくごく平凡な女子だと思っている。
そんな私とは対極にいるのがブラッドという人だ。
思いっきり特別なオーラが出ている上、服装は奇抜だけれどかなり整ったルックスだし、それはもう目立つ。
そんな人から告白めいたことを言われたり、キスをされたら誰だって気になる。(と思う)
それなのに、あの夜のピクニックでは話すらまともにしていない。
私ばっかりブラッドを気にしてるのかなと思えば、私にちょっかいを出してきたエースにフォークを投げつけるという奇行を見せるし
「名無しさんが大事ってことだよ」というエースの発言にも反論ひとつしなかった。
彼が気分屋だということは知っているけど、嫌われているのか好かれているのか全くわからない。
本当にブラッドは私のことをどう思っているんだろう?
「あぁ、もう嫌だ。もやもやする」
私がぐだぐだと考えていた時だった。
コンコンとドアをノックする音。
「名無しさん、いる?」
聞き覚えのある可愛らしい声。
突っ伏していた私は、はっと飛び起きてドアへ向かった。
ドアをあけると、そこには青いエプロンドレスのアリスがにこにこと立っていた。
「こんにちは、名無しさん。元気だった?」
笑顔のアリスを見た瞬間、私はなんだか泣きそうになった。
「アリス~!」
「え、ど、どうしたの!?名無しさん」
飛びつく私にアリスは驚いたように声を上げる。
「名無しさんったらそんな辛そうな顔をして……。やっぱりここに軟禁されてるって本当だったのね!?」
「……へ?」
彼女の思わぬ発言に、私の涙も引っ込んだ。
「名無しさんを外へ出すなってブラッドが命令したんでしょう? 名無しさんは屋敷から出してもらえずに、ブラッドの言いなりになってるって聞いたのよ」
心配そうに眉根を寄せて、アリスはよしよしと私の頭をなでる。
でも私には全く話が見えない。
屋敷から出してもらえない?ブラッドの言いなり? ……私が?
「えぇと、その情報源は……?」
「エースよ」
まさかと思って聞いてみると、アリスは予想通りの答えを返してきた。
「この間の夜に時計塔にふらりと来てね、『名無しさんがマフィアの上層部に連れまわされてる。最近時計塔に遊びに来ないのも、自由に外へ出してもらえないからだ』って教えてくれたの」
「……アリス。それ信じたの?」
あまりの脚色っぷりに唖然とする私。
アリスはそんな私の様子を見て、すべてを察したらしい。
「名無しさん……、私もしかしてエースに騙されたのかしら?」
「うーん、騙されたというか、からかわれた?」
アリスを部屋へ招き入れた私。
さっきまで私が突っ伏していたテーブルで紅茶を飲みながら、アリスは口をとがらせた。
「エースの話はもう絶対に信じないわ!」
「っていうかさ、普通そんな話を信じる? アリスって結構天然なんだね~」
笑い転げる私に、彼女は顔を赤くして反論する。
「だって! だって、なんだか本当っぽかったんだもの」
ユリウスも心配してたのよ、と言うアリス。
あぁ、ユリウスも変な所で天然ぽいよね。真面目に全力で勘違いしそうな感じ。
口には出さなかったけれど、なんだか納得してしまった私。
「でもブラッドが他人に執着なんてしないでしょう。軟禁するとかありえないよ」
「そうかしら? 名無しさんのことを気に入ってるんだから、それくらいしそうな気がするな。独占欲が強そうだもん」
「……独占欲はつよそうだけど、私のことを気に入っているというのはどうかなぁ」
私としては普通に言ったつもりだったけれど、アリスは何かを感じたらしい。
「やけに寂しそうな言い方をするわね」
「え?」
「ブラッドとなにかあったの?」
まっすぐに私をみるアリス。
悩んだ結果、私は今の自分のもやもやした思いをアリスに話すことにした。
紅茶を飲みながら、これまでのブラッドとのやりとりをアリスに話した私。
話を聞いているうちにどんどんニヤケ顔になっていったアリスは、私の話が終わるときっぱり言い切った。
「完全に恋する乙女よね、それ」
その言葉にずどーんと落ち込む私。
あぁ、やっぱり。よりによってブラッドなんて厄介な人に恋ですか……我ながら面倒な人に惹かれたものだ。
肩を落とす私の顔を不思議そうに覗き込むアリス。
「好きになりたくなかったの?」
「うーん、好きになりたくないっていうか、友達がちょうどよさそうでしょう。 だってあの人を好きなったら色々と苦労しそうだもん」
本当に色々と苦労しそうだ。
振り回されまくる自分が目に浮かびため息をつくと、アリスが苦笑いした。
「まぁ、確かに。マフィアのボスだしね?」
「そうそう」
「気分屋だしね?」
「そうそう」
「でも好きなのよね?」
「そうそう……ってなに言わせるの」
ノリツッコミをさせないでほしい。
がくりとうなだれる私にアリスがうふふと笑う。
「ね、名無しさん。今からブラッドの所に行ってみる?」
「はぁ!?」
「私、ブラッドに本を借りに行く約束をしてたのよ」
可愛らしく言うアリスだけれど、私をからかう気満々な表情だった。
「……アリス、ディーとダムみたいな目をしてるよ」
「うふふ。そうでしょうね」
楽しそうに笑って私の言葉を素直に認めたアリスがにくい。
そう言われたら文句も言えずに脱力するのみ。
ずるいなぁ、と思ってアリスを見ると彼女はふわりと笑った。
「好きになっちゃったんだからどうしようもないでしょう?」
……やっぱりずるい。
アリスの言葉は正しいし、自分の気持ちはごまかせない。
私を見つめて微笑むアリスを見たら、一気に力が抜けた。
「うん、そうだね」
私はそっとうなずく。
ブラッドのことをどうしようもなく好きになってしまったのだから、本当にどうしようもない。
そんな私は、これからどうしたらいいんだろう?
ブラッドから好かれたいのかもしれない、なんてあの夜に思ってしまったのは本当に失敗だった。
一度そう思ったらもうダメだ。
私はブラッドのことが気になって仕方がなくなってしまった。
いや、自分に嘘をついても仕方ない。
正直に言えば、彼のことが気になって仕方がないのはもっと前から始まっていた。
でもあのピクニックの夜に、もっと具体的にはっきりと自分の気持ちに確信を持ってしまった。
嫌だけど。認めたくないけど。
でもここまできたら認めざるを得ない。
……はっきりと言いましょう。
えぇ、そうです。
私は帽子屋ファミリーのボスである、ブラッド=デュプレが好きになってしまいました。
「あぁでもこんな予定じゃなかった。こんなはずじゃなかったのに……」
私は自分の部屋のテーブルに突っ伏してため息をついた。
ブラッドとは友達として一緒にいるのが一番いい、そう思っていた。
その反面、いつか戻れない所まで気持ちが進んでしまうんじゃないかという予感もしていた。
かなり前のことだと思うけど、本当に当たってしまうなんて……。
そりゃあね、かっこいい人だとは思っていましたよ? (見た目はね!)
「でも気分屋だし、だるそうだし、人のことおもちゃだと思ってるみたいだし、なんたってマフィアのボスという危険な人だし、セクハラっぽいけどモテるだろうし、つまりは色々経験豊富そうだし、私とは全く違うタイプの人じゃないですか!」
私は自分を本当にごくごく平凡な女子だと思っている。
そんな私とは対極にいるのがブラッドという人だ。
思いっきり特別なオーラが出ている上、服装は奇抜だけれどかなり整ったルックスだし、それはもう目立つ。
そんな人から告白めいたことを言われたり、キスをされたら誰だって気になる。(と思う)
それなのに、あの夜のピクニックでは話すらまともにしていない。
私ばっかりブラッドを気にしてるのかなと思えば、私にちょっかいを出してきたエースにフォークを投げつけるという奇行を見せるし
「名無しさんが大事ってことだよ」というエースの発言にも反論ひとつしなかった。
彼が気分屋だということは知っているけど、嫌われているのか好かれているのか全くわからない。
本当にブラッドは私のことをどう思っているんだろう?
「あぁ、もう嫌だ。もやもやする」
私がぐだぐだと考えていた時だった。
コンコンとドアをノックする音。
「名無しさん、いる?」
聞き覚えのある可愛らしい声。
突っ伏していた私は、はっと飛び起きてドアへ向かった。
ドアをあけると、そこには青いエプロンドレスのアリスがにこにこと立っていた。
「こんにちは、名無しさん。元気だった?」
笑顔のアリスを見た瞬間、私はなんだか泣きそうになった。
「アリス~!」
「え、ど、どうしたの!?名無しさん」
飛びつく私にアリスは驚いたように声を上げる。
「名無しさんったらそんな辛そうな顔をして……。やっぱりここに軟禁されてるって本当だったのね!?」
「……へ?」
彼女の思わぬ発言に、私の涙も引っ込んだ。
「名無しさんを外へ出すなってブラッドが命令したんでしょう? 名無しさんは屋敷から出してもらえずに、ブラッドの言いなりになってるって聞いたのよ」
心配そうに眉根を寄せて、アリスはよしよしと私の頭をなでる。
でも私には全く話が見えない。
屋敷から出してもらえない?ブラッドの言いなり? ……私が?
「えぇと、その情報源は……?」
「エースよ」
まさかと思って聞いてみると、アリスは予想通りの答えを返してきた。
「この間の夜に時計塔にふらりと来てね、『名無しさんがマフィアの上層部に連れまわされてる。最近時計塔に遊びに来ないのも、自由に外へ出してもらえないからだ』って教えてくれたの」
「……アリス。それ信じたの?」
あまりの脚色っぷりに唖然とする私。
アリスはそんな私の様子を見て、すべてを察したらしい。
「名無しさん……、私もしかしてエースに騙されたのかしら?」
「うーん、騙されたというか、からかわれた?」
アリスを部屋へ招き入れた私。
さっきまで私が突っ伏していたテーブルで紅茶を飲みながら、アリスは口をとがらせた。
「エースの話はもう絶対に信じないわ!」
「っていうかさ、普通そんな話を信じる? アリスって結構天然なんだね~」
笑い転げる私に、彼女は顔を赤くして反論する。
「だって! だって、なんだか本当っぽかったんだもの」
ユリウスも心配してたのよ、と言うアリス。
あぁ、ユリウスも変な所で天然ぽいよね。真面目に全力で勘違いしそうな感じ。
口には出さなかったけれど、なんだか納得してしまった私。
「でもブラッドが他人に執着なんてしないでしょう。軟禁するとかありえないよ」
「そうかしら? 名無しさんのことを気に入ってるんだから、それくらいしそうな気がするな。独占欲が強そうだもん」
「……独占欲はつよそうだけど、私のことを気に入っているというのはどうかなぁ」
私としては普通に言ったつもりだったけれど、アリスは何かを感じたらしい。
「やけに寂しそうな言い方をするわね」
「え?」
「ブラッドとなにかあったの?」
まっすぐに私をみるアリス。
悩んだ結果、私は今の自分のもやもやした思いをアリスに話すことにした。
紅茶を飲みながら、これまでのブラッドとのやりとりをアリスに話した私。
話を聞いているうちにどんどんニヤケ顔になっていったアリスは、私の話が終わるときっぱり言い切った。
「完全に恋する乙女よね、それ」
その言葉にずどーんと落ち込む私。
あぁ、やっぱり。よりによってブラッドなんて厄介な人に恋ですか……我ながら面倒な人に惹かれたものだ。
肩を落とす私の顔を不思議そうに覗き込むアリス。
「好きになりたくなかったの?」
「うーん、好きになりたくないっていうか、友達がちょうどよさそうでしょう。 だってあの人を好きなったら色々と苦労しそうだもん」
本当に色々と苦労しそうだ。
振り回されまくる自分が目に浮かびため息をつくと、アリスが苦笑いした。
「まぁ、確かに。マフィアのボスだしね?」
「そうそう」
「気分屋だしね?」
「そうそう」
「でも好きなのよね?」
「そうそう……ってなに言わせるの」
ノリツッコミをさせないでほしい。
がくりとうなだれる私にアリスがうふふと笑う。
「ね、名無しさん。今からブラッドの所に行ってみる?」
「はぁ!?」
「私、ブラッドに本を借りに行く約束をしてたのよ」
可愛らしく言うアリスだけれど、私をからかう気満々な表情だった。
「……アリス、ディーとダムみたいな目をしてるよ」
「うふふ。そうでしょうね」
楽しそうに笑って私の言葉を素直に認めたアリスがにくい。
そう言われたら文句も言えずに脱力するのみ。
ずるいなぁ、と思ってアリスを見ると彼女はふわりと笑った。
「好きになっちゃったんだからどうしようもないでしょう?」
……やっぱりずるい。
アリスの言葉は正しいし、自分の気持ちはごまかせない。
私を見つめて微笑むアリスを見たら、一気に力が抜けた。
「うん、そうだね」
私はそっとうなずく。
ブラッドのことをどうしようもなく好きになってしまったのだから、本当にどうしようもない。
そんな私は、これからどうしたらいいんだろう?