マッドハッターズ!
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【13.ブラッドならいい】
メイド服に身を包み、私は掃除場所へとやってきた。
今回の担当は、お風呂場。
「なにこれ、なんの嫌がらせ……?」
私は目の前の湯船を見て絶句した。
もくもくとあたたかな蒸気とピンクのお湯がとってもファンタジックな感じだったが、私の注目はそこではない。
「ありえない……ありえない量だよ、これ」
小さな色とりどりの花々が、ピンクのお湯を埋め尽くす勢いでちりばめられていたのだ。
可愛く言うならば花風呂。まさにそれだった。
もし自分が入浴中なのであれば「わぁ、綺麗! お花のお風呂なんてステキ!」
なんてのんきなことを思っていたかもしれない。
でも私は今「お風呂掃除」をしにやってきたのだ。
こんな小さな花がびっしりと湯船に浮いていれば文句の一つもいいたくなる。
「このまま流したら、排水溝に詰まっちゃうじゃないの」
花を掬いながら、私は犯人に目星をつけた。
こんなことをするのはどう考えたってあの子たちだ。
「ほら、見て見て兄弟!お花だよ」
「わぁ、いいねいいね!これで風呂掃除する人は一気に大変になるね!後先考えない行動がかっこいいよ、兄弟!」
「排水溝に詰まって詰まって大変だろうね、兄弟!」
「僕達が掃除するんじゃないからいいと思うよ、兄弟!」
とかなんとか言って遊んだのだろう。
「掃除する身にもなってほしいよ」
今度会ったら文句を言ってやる。
たとえあの子たちに理解されなかったとしても、スルーされたとしても、返り討ちにあったとしても……!!
そこまで考えて、私は自分がやたらと攻撃的な思考になっていることに気がついた。
「……これはきっとストレスだ」
そう、今の私は精神的にそうとう疲れている。
それもこれもすべてブラッドのせいだ。そうに決まっている。
彼に振り回されっぱなしなのだ。
バラ園、そして食堂となんだかんだ問題行動をぶちかまされる私。
あれから数時間帯が過ぎた。
その間に私は仕事をしたり、散歩にでたり、アリスと遊んだり、たまにやってくる迷子のエースに絡まれたりしているが、あれ以降ブラッドとは会っていない。
仕事が忙しいのか、彼に会わないのだ。
会ってもどうしていいのかわからないので、会わない方がいいと思うけれど、時間が経てば経つほど「今度会ったらどうしよう」と考えてしまう。
つまり、裏を返せば私はいつもブラッドのことばかりを考えているのだ。最低なことに。
「最低最悪!」
私は考えるのをやめようと頭を振ると、再び湯船に散らばる花を掬う。
「あー、やっぱり掃除中か」
そんな声が聞こえたので振り向くと、お風呂場の入り口にエリオットが立っていた。(彼が脱ぐ前で良かった!)
「エリオット!」
「お、なんだ名無しさんか」
振り返った私を見て、エリオットはふっと表情を緩めた。
「風呂に入ろうと思ったけど、掃除中なんだな」
「うん、ごめんね。ちょっと時間がかかりそうなの」
その言葉に彼は不思議そうな顔をしながらつかつかとやってきた。
「うわ、なんだこれ。花?」
「そうなの。このまま流すわけにもいかないから」
「……ガキ共か」
「たぶんね」
「あいつらほんっとにふざけすぎだな」
「今度ばかりは私も文句を言ってやろうと思って」
「おー、その方がいいぜ。あいつら、名無しさんに叱られた方が聞くかもしれねぇし」
俺が言っても聞きゃしねぇ、と言うエリオット。
その言い方がなんだかお兄さんらしくて笑ってしまう。
「エリオットは仕事が終わったの?」
「あぁ。今日はすっげー早く終わったんだ。ブラッドが来てくれたからな」
「えっ!?」
突然出たその名前に、ずるっと滑りそうになる私。
「ブラッドが出てきてくれたから、相手も言うことをすんなり聞いてくれてな。やっぱブラッドはすごいぜ」
「……。まぁ、ボスだしね……」
動揺を隠して当たり障りのない反応を返すと、彼はきちんと私の反応に乗ってきてくれた。
「そうなんだよ。やっぱりボスが出てくると話が早いぜ。おもしろいほどすぐにまとまるんだよ。
でもなー、ブラッドの手をいちいち煩わせるのも申し訳ねぇし、俺がもっとしっかりしないといけねーよな!」
エリオットの言葉も耳から耳へすーっと抜けていく。
ブラッドもちゃんと仕事してるんだなぁとか、ほんとにボスなんだなぁとか、そんなことを考えてしまう私。
「まぁいいや。風呂に入れないなら、とりあえずにんじん茶でも飲むか」
「ごめんね、なるべくすぐに入れるようにするから」
「あぁ。悪いな」
そう言って彼はにんじん茶~♪と鼻歌交じりに風呂場を出て行く。
しかし、入り口ではたと止まったかと思うと、くるりと振り向いてこう言った。
「にんじん茶といえば珍しくブラッドのやつがココアだかなんだかを飲んだらしいな。 名無しさんも一緒だったんだろ?」
「は?」
「さっきブラッドににんじん茶を勧めたらさー、『紅茶以外は飲まない。わけのわからないにんじん茶やら甘すぎるココアやらお前も名無しさんも邪道すぎる』っていいやがんの」
にんじん茶うまいのにな、と口を尖らせつつエリオットは話を続ける。
「俺、あいつが紅茶以外のものを飲んでるとこ見たことなくてさ。どういう経緯でココアなんて飲んだのかちょっと気になったんだ。あいつのお茶会にココアなんて出るわけないしさ」
あんたがブラッドにふるまったのか?と首をかしげるエリオット。
私はと言うと、恥ずかしさと気まずさでいっぱいだった。
「ん、名無しさんどうした? 顔が赤いぜ。熱でもあるんじゃねぇのか?」
「……何を飲もうと私の勝手だよね」
「?」
「あー、ほんと最低最悪!」
あんなキスをするのが悪い!
そう言ってやりたいけど、絶対に言えない。
私の様子に、エリオットは不審そうな表情を浮かべた。
しかしはっとしたように私を見ると、とんでもないことを言い放った。
「食われたか……」
「食われてない!!」
思わずとんでもない表現で言い返してしまった。
「え、じゃあなんだよ」
なんだよと言われても困るんですけど。当たらずとも遠からずな感じだし。
黙りこむ私をエリオットはじっと見つめる。
「ガキ共に手を出されるくらいなら、ブラッドのが良いに決まってんだろ」
「手を出す、というのが問題だと思うんだけど」
「ブラッドならいいじゃねぇかよ」
「なにが!?変なこと言わないで」
「変か?ブラッドほどの男は世界中どこを探したっていないだろ?あいつがダメだなんてあんた見る目がねぇな」
「誠実という言葉が全く似合わない男はどうかと思うわよ」
「ふぅん、よくわかんねぇな」
口をとがらせる私に、エリオットは頭を掻きながらそう言った。
ダメだ、ブラッドに心酔しすぎていてエリオットには伝わらない。
「ま、いいや。あんたがブラッドの女になったらちゃーんと俺が守ってやるから安心しろよ」
ブラッドのじゃなくてもちゃんと守るけどな!
にかっと笑ってそういうと、エリオットはお風呂場を出ていった。
メイド服に身を包み、私は掃除場所へとやってきた。
今回の担当は、お風呂場。
「なにこれ、なんの嫌がらせ……?」
私は目の前の湯船を見て絶句した。
もくもくとあたたかな蒸気とピンクのお湯がとってもファンタジックな感じだったが、私の注目はそこではない。
「ありえない……ありえない量だよ、これ」
小さな色とりどりの花々が、ピンクのお湯を埋め尽くす勢いでちりばめられていたのだ。
可愛く言うならば花風呂。まさにそれだった。
もし自分が入浴中なのであれば「わぁ、綺麗! お花のお風呂なんてステキ!」
なんてのんきなことを思っていたかもしれない。
でも私は今「お風呂掃除」をしにやってきたのだ。
こんな小さな花がびっしりと湯船に浮いていれば文句の一つもいいたくなる。
「このまま流したら、排水溝に詰まっちゃうじゃないの」
花を掬いながら、私は犯人に目星をつけた。
こんなことをするのはどう考えたってあの子たちだ。
「ほら、見て見て兄弟!お花だよ」
「わぁ、いいねいいね!これで風呂掃除する人は一気に大変になるね!後先考えない行動がかっこいいよ、兄弟!」
「排水溝に詰まって詰まって大変だろうね、兄弟!」
「僕達が掃除するんじゃないからいいと思うよ、兄弟!」
とかなんとか言って遊んだのだろう。
「掃除する身にもなってほしいよ」
今度会ったら文句を言ってやる。
たとえあの子たちに理解されなかったとしても、スルーされたとしても、返り討ちにあったとしても……!!
そこまで考えて、私は自分がやたらと攻撃的な思考になっていることに気がついた。
「……これはきっとストレスだ」
そう、今の私は精神的にそうとう疲れている。
それもこれもすべてブラッドのせいだ。そうに決まっている。
彼に振り回されっぱなしなのだ。
バラ園、そして食堂となんだかんだ問題行動をぶちかまされる私。
あれから数時間帯が過ぎた。
その間に私は仕事をしたり、散歩にでたり、アリスと遊んだり、たまにやってくる迷子のエースに絡まれたりしているが、あれ以降ブラッドとは会っていない。
仕事が忙しいのか、彼に会わないのだ。
会ってもどうしていいのかわからないので、会わない方がいいと思うけれど、時間が経てば経つほど「今度会ったらどうしよう」と考えてしまう。
つまり、裏を返せば私はいつもブラッドのことばかりを考えているのだ。最低なことに。
「最低最悪!」
私は考えるのをやめようと頭を振ると、再び湯船に散らばる花を掬う。
「あー、やっぱり掃除中か」
そんな声が聞こえたので振り向くと、お風呂場の入り口にエリオットが立っていた。(彼が脱ぐ前で良かった!)
「エリオット!」
「お、なんだ名無しさんか」
振り返った私を見て、エリオットはふっと表情を緩めた。
「風呂に入ろうと思ったけど、掃除中なんだな」
「うん、ごめんね。ちょっと時間がかかりそうなの」
その言葉に彼は不思議そうな顔をしながらつかつかとやってきた。
「うわ、なんだこれ。花?」
「そうなの。このまま流すわけにもいかないから」
「……ガキ共か」
「たぶんね」
「あいつらほんっとにふざけすぎだな」
「今度ばかりは私も文句を言ってやろうと思って」
「おー、その方がいいぜ。あいつら、名無しさんに叱られた方が聞くかもしれねぇし」
俺が言っても聞きゃしねぇ、と言うエリオット。
その言い方がなんだかお兄さんらしくて笑ってしまう。
「エリオットは仕事が終わったの?」
「あぁ。今日はすっげー早く終わったんだ。ブラッドが来てくれたからな」
「えっ!?」
突然出たその名前に、ずるっと滑りそうになる私。
「ブラッドが出てきてくれたから、相手も言うことをすんなり聞いてくれてな。やっぱブラッドはすごいぜ」
「……。まぁ、ボスだしね……」
動揺を隠して当たり障りのない反応を返すと、彼はきちんと私の反応に乗ってきてくれた。
「そうなんだよ。やっぱりボスが出てくると話が早いぜ。おもしろいほどすぐにまとまるんだよ。
でもなー、ブラッドの手をいちいち煩わせるのも申し訳ねぇし、俺がもっとしっかりしないといけねーよな!」
エリオットの言葉も耳から耳へすーっと抜けていく。
ブラッドもちゃんと仕事してるんだなぁとか、ほんとにボスなんだなぁとか、そんなことを考えてしまう私。
「まぁいいや。風呂に入れないなら、とりあえずにんじん茶でも飲むか」
「ごめんね、なるべくすぐに入れるようにするから」
「あぁ。悪いな」
そう言って彼はにんじん茶~♪と鼻歌交じりに風呂場を出て行く。
しかし、入り口ではたと止まったかと思うと、くるりと振り向いてこう言った。
「にんじん茶といえば珍しくブラッドのやつがココアだかなんだかを飲んだらしいな。 名無しさんも一緒だったんだろ?」
「は?」
「さっきブラッドににんじん茶を勧めたらさー、『紅茶以外は飲まない。わけのわからないにんじん茶やら甘すぎるココアやらお前も名無しさんも邪道すぎる』っていいやがんの」
にんじん茶うまいのにな、と口を尖らせつつエリオットは話を続ける。
「俺、あいつが紅茶以外のものを飲んでるとこ見たことなくてさ。どういう経緯でココアなんて飲んだのかちょっと気になったんだ。あいつのお茶会にココアなんて出るわけないしさ」
あんたがブラッドにふるまったのか?と首をかしげるエリオット。
私はと言うと、恥ずかしさと気まずさでいっぱいだった。
「ん、名無しさんどうした? 顔が赤いぜ。熱でもあるんじゃねぇのか?」
「……何を飲もうと私の勝手だよね」
「?」
「あー、ほんと最低最悪!」
あんなキスをするのが悪い!
そう言ってやりたいけど、絶対に言えない。
私の様子に、エリオットは不審そうな表情を浮かべた。
しかしはっとしたように私を見ると、とんでもないことを言い放った。
「食われたか……」
「食われてない!!」
思わずとんでもない表現で言い返してしまった。
「え、じゃあなんだよ」
なんだよと言われても困るんですけど。当たらずとも遠からずな感じだし。
黙りこむ私をエリオットはじっと見つめる。
「ガキ共に手を出されるくらいなら、ブラッドのが良いに決まってんだろ」
「手を出す、というのが問題だと思うんだけど」
「ブラッドならいいじゃねぇかよ」
「なにが!?変なこと言わないで」
「変か?ブラッドほどの男は世界中どこを探したっていないだろ?あいつがダメだなんてあんた見る目がねぇな」
「誠実という言葉が全く似合わない男はどうかと思うわよ」
「ふぅん、よくわかんねぇな」
口をとがらせる私に、エリオットは頭を掻きながらそう言った。
ダメだ、ブラッドに心酔しすぎていてエリオットには伝わらない。
「ま、いいや。あんたがブラッドの女になったらちゃーんと俺が守ってやるから安心しろよ」
ブラッドのじゃなくてもちゃんと守るけどな!
にかっと笑ってそういうと、エリオットはお風呂場を出ていった。