マッドハッターズ!
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【11.信頼だけじゃ足りなくて】
気のせいかもしれないけれど、なんだか最近とてもよくブラッドに遭遇する。
「やぁ、名無しさん」
ほらね。また会った。
廊下を歩いていたらばったりと会う、というのはこれで何回目だろう。
同じ敷地内にいるのだからと思う反面、こんな広い敷地内でどうしてこうも会うかなぁ、と疑問を抱かずにはいられない。
「こんにちは、ブラッド」
とりあえず挨拶を返すと、彼は私の前で立ち止まった。
「出かけるのか?」
「うん、暇だから散歩にでもいこうと思って」
「そうか」
うなずきつつも、彼は私の前に立ちふさがったまま動こうとしない。
仕方がないので、話を続けてみる。
「ブラッドは? 仕事?」
「いいや」
あまりに堂々と言われたので、思わず出た言葉がこれだった。
「……ブラッドって最近ヒマなの?」
私の言葉にブラッドはなんとも微妙な表情を見せた。
あれ、まずい表現だったかな。
「いや、だってほら、最近良く会うからさ。仕事がない時期とかなのかなぁって思って」
慌ててそう付け加える私だったけれど、彼はすぐにいつもの表情を見せる。
「ヒマに見えるというのなら、それでも構わないよ」
「ということはヒマではないんだね」
実はこっそりと仕事をしているんでしょう。
この人は意外とちゃんとしている人だ。人前では絶対にそんな姿は見せないけれど。
「名無しさん、散歩に行くならお茶会をしよう」
「……いいけど、なんだか最近このパターンが多い気がするよ」
散歩しようとしたらブラッドが現れてお茶会をする、というパターン。
「お茶会はいいものだ。たとえいつもと同じパターンだと言われてもやめる気はないね」
「ふうん。ブラッドにしては珍しいよね。そういうの」
「ふふふ。同じパターンでいいのはお茶会だけだよ。その他はそうであってはいけない」
「その他?」
「そう。その他。例えば…………なんだと思うかね?」
「……さぁ? ちょっとわからないなぁ」
たっぷりと間を取って私に問う彼は、にやりと笑って変に含みのある言い方をした。(きっとロクなことじゃないと思う。)
私の反応にふふふと楽しそうに笑うと、ブラッドは私の腰に手を回した。
「答えはそのうちじっくり教えてあげよう。まずはお茶会だ」
「お茶会はいいんだけど、答えはいらないや」
腰に回ったブラッドの手を見て、私はなんとなーくその手をほどこうとする。
しかし、彼はそんな様子の私を無視してさらにぎゅっと私を抱き寄せた。
「つれない答えだね、お嬢さん」
彼が私をお嬢さんという時は、からかう気満々だということなのだ。もうすでにわかっている。
あぁ、私またこの人に良いようにからかわれるのか。
暇つぶしにつき合わされる身にもなってほしい。
さっさとアリスとくっつけばいいのに。(あー、でもアリスは全然遊びに来ないなぁ)
私はくるりと回れ右をさせられて、元来た廊下をブラッドにエスコートされて歩く羽目になった。
ブラッドと一緒に廊下を歩く私。
特に会話はない。
ただひたすら歩いているだけだ。
沈黙は気にならないけれど、ブラッドは今なにを考えているんだろう、という疑問がわいてくる。
私の歩くペースに合わせてくれているので、一応気を使ってくれているみたいだけど。(そういう所ばっかり紳士だよね)
ブラッドは普段からよくわからない人だ。
口を開けば「めんどくさい」「茶が飲みたい」という彼。
だるだる~っとしていたかと思えば急に不機嫌になったり、真面目になったかと思えばセクハラ発言したり、気分屋もいいところだ。(大人のくせに!)
そんな気分屋な彼がまじめな顔で、この間私に話したことははっきりと覚えている。
「私が帽子屋ファミリーを崩壊させる人物になりうる」ということ。
あれ以来そんな話は全くしていないし、ブラッドはいつも通りのだるだるな感じだ。
でも、あの時のことは忘れられない。
ブラッドが私に『組織』の話をすることなんてこれまでなかったし、何と言っても怖かった。
次にその話が出るときは、彼が私に何かしらの決定事項を伝える時だろう。
彼がマフィアのボスであることをあの時、嫌と言うほど思い知った。怖かった。
あれでも彼のほんの一部なんだろう。
知らなくていいことはきっとたくさんある。
そんなことを考えていたら、隣でくすりと笑う気配がした。
顔をあげると、ブラッドが口元に笑みを浮かべて私を見ていた。
「どうした名無しさん? だいぶ真剣に考え込んでいたようだが」
おもしろそうに私を覗き込んでいるブラッドを、じぃっと見返す。
すると彼は不思議そうな顔をした。
私はそっと言ってみた。
「ブラッドはもしかして私を監視しているの? 危険人物だから?」
その言葉に彼は一瞬動きを止めてから、楽しそうに笑い出した。
「私が名無しさんを監視? それはいい。できることなら私の手元に置いて閉じ込めたいくらいだよ」
「だって私のこと悪魔呼ばわりしたじゃない。私が危険人物だから監視しているんじゃないの?」
ブラッドは私の突然の言葉に「あぁ、その話か」と納得したようにつぶやいた。
「監視なんて面倒なことを私がすると思うか? そんなのは部下にやらせればいい。それに長けた奴らがいるし、私がわざわざ出向く必要もないだろう」
「だって最近ブラッドと会うことが多いし……」
「私が名無しさんと一緒にいたいからだよ。ただそれだけだ」
「…………」
「疑いの目だな」
「それはそうでしょ。私はね、ブラッドから面白がられてるとは思っているけど、あの話をした日から信用されているとは思ってないの」
きっぱり言ってやった。
すると、彼はふむ、と考え込むように立ち止まった。
「なるほど」
「?」
しばらくそのまま何かを考えていたようだったが、彼はすっと私を見てこう言った。
「名無しさん、お茶会は後にしよう」
「え?」
「その前に連れて行きたいところがある」
「え?え??」
突然の展開についていけないまま、私はブラッドに腕を取られてその場を後にした。
「わぁ……!!!」
むせ返るほどの甘いバラの香り。
咲き誇る真っ赤なバラにくらくらとする。
連れて行かれた先は、見事な見事なバラ園だった。
ぐるりと見回しても、一面にバラ。
驚いて何も言えない私は、立ち尽くしたまま、ひたすら目の前の光景を眺めていた。
すると、後ろからポンと肩に手を置かれた。
「なかなか悪くないだろう?」
「悪くないどころか、すごすぎる。綺麗。圧巻。こんなの初めて見た」
「それは良かった」
圧倒されっぱなしの私に、ブラッドが楽しそうに笑った。
綺麗な小道や可愛らしいベンチやらブランコやら、もうとにかく知らない世界が広がっている。
白いベンチに座った私はそれをぼんやりと見ていた。
これまでの私には縁のなかった景色だ。
しばらく黙って隣りに座っていたブラッドがちらりと私を見た。
「名無しさん、ずいぶんと大人しいな」
「なんだか夢でも見てるみたいで」
「大袈裟だね」
「だってこういう景色を見たのって本当に初めてなんだもん」
満開の桜は見たことがある。ひまわり畑も見たことがある。
でも、こういうバラの庭園は初めてだった。
桜やひまわりと違って香りもすごい。なんていうか高貴な感じがするんですけど。
そこまで考えて私は自分を見下ろした。すっごく普段着の自分。
「ねぇ、私場違いじゃない? 大丈夫なの?」
「……突然だな」
珍しくブラッドが面食らったように言った。
「だって、こういう素敵な場所に私みたいな一般人がひょいって入っていいの? 大事な場所なんじゃないの?」
「一般人どころかエリオットだって入ったことがないし、存在すら知らないだろう」
「えぇ!?」
つまりものすごい秘密の場所ってことじゃないの!?
「君は特別だ、名無しさん」
優しい言い方に驚いてブラッドを見る。
彼は私の頬にそっと触れてきた。
心臓が飛び跳ねる。
「ここへ招待したいと思ったのは名無しさんだけだよ」
バラに囲まれて、中身はともかくものすごいかっこいい人に、じっと見つめながらそんなことを言われると、普通の女の子なら動揺する。
そして、私も例にもれず動揺しまくった。
それを隠したくて、私は言葉を紡ぐ。
「えぇと、信頼してるから連れてきてくれたって……そういうこと?」
「まぁ監視対象を連れてくるわけはないな。それもある」
くすくすと笑ってから、ブラッドは再び私をまっすぐに見つめた。
う、もうやめてください。(やたら色っぽいんで)
「でも、それだけじゃない」
大切なことを言うように、ゆっくりと静かな声でブラッドはそう言った。
『信頼しているけど、それだけじゃない。だからここに連れてきた。』
遊ばれているのでなければ、彼の言葉はかなり告白に近いと思うけれど、私が自意識過剰なのだろうか?
そんな思いが一気に頭の中を駆け巡り、私は今の状況すべてに混乱していた。
耳が熱いし、心臓が痛いし、なんだか酸欠な気がするし、言葉に詰まる。
すると、彼はそんな私を見てふふふと笑った。
「正しく意味を理解してくれたようで嬉しいよ」
正しい意味?ほんとうに?
そんな疑問を思い浮かべた瞬間、顎をとられてキスされた。
びくりとする私だったけれど、不思議と嫌ではなかった。
唇が離れてからブラッドは、私の髪の毛を梳きながら言う。
「参戦初日から一歩リード、と言ったところかな」
いきなり何するんだこの人、なんて言えなかった。
なんでだろう。
気のせいかもしれないけれど、なんだか最近とてもよくブラッドに遭遇する。
「やぁ、名無しさん」
ほらね。また会った。
廊下を歩いていたらばったりと会う、というのはこれで何回目だろう。
同じ敷地内にいるのだからと思う反面、こんな広い敷地内でどうしてこうも会うかなぁ、と疑問を抱かずにはいられない。
「こんにちは、ブラッド」
とりあえず挨拶を返すと、彼は私の前で立ち止まった。
「出かけるのか?」
「うん、暇だから散歩にでもいこうと思って」
「そうか」
うなずきつつも、彼は私の前に立ちふさがったまま動こうとしない。
仕方がないので、話を続けてみる。
「ブラッドは? 仕事?」
「いいや」
あまりに堂々と言われたので、思わず出た言葉がこれだった。
「……ブラッドって最近ヒマなの?」
私の言葉にブラッドはなんとも微妙な表情を見せた。
あれ、まずい表現だったかな。
「いや、だってほら、最近良く会うからさ。仕事がない時期とかなのかなぁって思って」
慌ててそう付け加える私だったけれど、彼はすぐにいつもの表情を見せる。
「ヒマに見えるというのなら、それでも構わないよ」
「ということはヒマではないんだね」
実はこっそりと仕事をしているんでしょう。
この人は意外とちゃんとしている人だ。人前では絶対にそんな姿は見せないけれど。
「名無しさん、散歩に行くならお茶会をしよう」
「……いいけど、なんだか最近このパターンが多い気がするよ」
散歩しようとしたらブラッドが現れてお茶会をする、というパターン。
「お茶会はいいものだ。たとえいつもと同じパターンだと言われてもやめる気はないね」
「ふうん。ブラッドにしては珍しいよね。そういうの」
「ふふふ。同じパターンでいいのはお茶会だけだよ。その他はそうであってはいけない」
「その他?」
「そう。その他。例えば…………なんだと思うかね?」
「……さぁ? ちょっとわからないなぁ」
たっぷりと間を取って私に問う彼は、にやりと笑って変に含みのある言い方をした。(きっとロクなことじゃないと思う。)
私の反応にふふふと楽しそうに笑うと、ブラッドは私の腰に手を回した。
「答えはそのうちじっくり教えてあげよう。まずはお茶会だ」
「お茶会はいいんだけど、答えはいらないや」
腰に回ったブラッドの手を見て、私はなんとなーくその手をほどこうとする。
しかし、彼はそんな様子の私を無視してさらにぎゅっと私を抱き寄せた。
「つれない答えだね、お嬢さん」
彼が私をお嬢さんという時は、からかう気満々だということなのだ。もうすでにわかっている。
あぁ、私またこの人に良いようにからかわれるのか。
暇つぶしにつき合わされる身にもなってほしい。
さっさとアリスとくっつけばいいのに。(あー、でもアリスは全然遊びに来ないなぁ)
私はくるりと回れ右をさせられて、元来た廊下をブラッドにエスコートされて歩く羽目になった。
ブラッドと一緒に廊下を歩く私。
特に会話はない。
ただひたすら歩いているだけだ。
沈黙は気にならないけれど、ブラッドは今なにを考えているんだろう、という疑問がわいてくる。
私の歩くペースに合わせてくれているので、一応気を使ってくれているみたいだけど。(そういう所ばっかり紳士だよね)
ブラッドは普段からよくわからない人だ。
口を開けば「めんどくさい」「茶が飲みたい」という彼。
だるだる~っとしていたかと思えば急に不機嫌になったり、真面目になったかと思えばセクハラ発言したり、気分屋もいいところだ。(大人のくせに!)
そんな気分屋な彼がまじめな顔で、この間私に話したことははっきりと覚えている。
「私が帽子屋ファミリーを崩壊させる人物になりうる」ということ。
あれ以来そんな話は全くしていないし、ブラッドはいつも通りのだるだるな感じだ。
でも、あの時のことは忘れられない。
ブラッドが私に『組織』の話をすることなんてこれまでなかったし、何と言っても怖かった。
次にその話が出るときは、彼が私に何かしらの決定事項を伝える時だろう。
彼がマフィアのボスであることをあの時、嫌と言うほど思い知った。怖かった。
あれでも彼のほんの一部なんだろう。
知らなくていいことはきっとたくさんある。
そんなことを考えていたら、隣でくすりと笑う気配がした。
顔をあげると、ブラッドが口元に笑みを浮かべて私を見ていた。
「どうした名無しさん? だいぶ真剣に考え込んでいたようだが」
おもしろそうに私を覗き込んでいるブラッドを、じぃっと見返す。
すると彼は不思議そうな顔をした。
私はそっと言ってみた。
「ブラッドはもしかして私を監視しているの? 危険人物だから?」
その言葉に彼は一瞬動きを止めてから、楽しそうに笑い出した。
「私が名無しさんを監視? それはいい。できることなら私の手元に置いて閉じ込めたいくらいだよ」
「だって私のこと悪魔呼ばわりしたじゃない。私が危険人物だから監視しているんじゃないの?」
ブラッドは私の突然の言葉に「あぁ、その話か」と納得したようにつぶやいた。
「監視なんて面倒なことを私がすると思うか? そんなのは部下にやらせればいい。それに長けた奴らがいるし、私がわざわざ出向く必要もないだろう」
「だって最近ブラッドと会うことが多いし……」
「私が名無しさんと一緒にいたいからだよ。ただそれだけだ」
「…………」
「疑いの目だな」
「それはそうでしょ。私はね、ブラッドから面白がられてるとは思っているけど、あの話をした日から信用されているとは思ってないの」
きっぱり言ってやった。
すると、彼はふむ、と考え込むように立ち止まった。
「なるほど」
「?」
しばらくそのまま何かを考えていたようだったが、彼はすっと私を見てこう言った。
「名無しさん、お茶会は後にしよう」
「え?」
「その前に連れて行きたいところがある」
「え?え??」
突然の展開についていけないまま、私はブラッドに腕を取られてその場を後にした。
「わぁ……!!!」
むせ返るほどの甘いバラの香り。
咲き誇る真っ赤なバラにくらくらとする。
連れて行かれた先は、見事な見事なバラ園だった。
ぐるりと見回しても、一面にバラ。
驚いて何も言えない私は、立ち尽くしたまま、ひたすら目の前の光景を眺めていた。
すると、後ろからポンと肩に手を置かれた。
「なかなか悪くないだろう?」
「悪くないどころか、すごすぎる。綺麗。圧巻。こんなの初めて見た」
「それは良かった」
圧倒されっぱなしの私に、ブラッドが楽しそうに笑った。
綺麗な小道や可愛らしいベンチやらブランコやら、もうとにかく知らない世界が広がっている。
白いベンチに座った私はそれをぼんやりと見ていた。
これまでの私には縁のなかった景色だ。
しばらく黙って隣りに座っていたブラッドがちらりと私を見た。
「名無しさん、ずいぶんと大人しいな」
「なんだか夢でも見てるみたいで」
「大袈裟だね」
「だってこういう景色を見たのって本当に初めてなんだもん」
満開の桜は見たことがある。ひまわり畑も見たことがある。
でも、こういうバラの庭園は初めてだった。
桜やひまわりと違って香りもすごい。なんていうか高貴な感じがするんですけど。
そこまで考えて私は自分を見下ろした。すっごく普段着の自分。
「ねぇ、私場違いじゃない? 大丈夫なの?」
「……突然だな」
珍しくブラッドが面食らったように言った。
「だって、こういう素敵な場所に私みたいな一般人がひょいって入っていいの? 大事な場所なんじゃないの?」
「一般人どころかエリオットだって入ったことがないし、存在すら知らないだろう」
「えぇ!?」
つまりものすごい秘密の場所ってことじゃないの!?
「君は特別だ、名無しさん」
優しい言い方に驚いてブラッドを見る。
彼は私の頬にそっと触れてきた。
心臓が飛び跳ねる。
「ここへ招待したいと思ったのは名無しさんだけだよ」
バラに囲まれて、中身はともかくものすごいかっこいい人に、じっと見つめながらそんなことを言われると、普通の女の子なら動揺する。
そして、私も例にもれず動揺しまくった。
それを隠したくて、私は言葉を紡ぐ。
「えぇと、信頼してるから連れてきてくれたって……そういうこと?」
「まぁ監視対象を連れてくるわけはないな。それもある」
くすくすと笑ってから、ブラッドは再び私をまっすぐに見つめた。
う、もうやめてください。(やたら色っぽいんで)
「でも、それだけじゃない」
大切なことを言うように、ゆっくりと静かな声でブラッドはそう言った。
『信頼しているけど、それだけじゃない。だからここに連れてきた。』
遊ばれているのでなければ、彼の言葉はかなり告白に近いと思うけれど、私が自意識過剰なのだろうか?
そんな思いが一気に頭の中を駆け巡り、私は今の状況すべてに混乱していた。
耳が熱いし、心臓が痛いし、なんだか酸欠な気がするし、言葉に詰まる。
すると、彼はそんな私を見てふふふと笑った。
「正しく意味を理解してくれたようで嬉しいよ」
正しい意味?ほんとうに?
そんな疑問を思い浮かべた瞬間、顎をとられてキスされた。
びくりとする私だったけれど、不思議と嫌ではなかった。
唇が離れてからブラッドは、私の髪の毛を梳きながら言う。
「参戦初日から一歩リード、と言ったところかな」
いきなり何するんだこの人、なんて言えなかった。
なんでだろう。