マッドハッターズ!
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【8.もはや殺し屋】
「あらぁ? 何かあったんですか~?」
先に玄関の掃除をしていたメイドさんは私を見るなりそう言った。
のんきな口調だったけれど、私の様子の変化に気づいているのだから、鋭いのかもしれない。
ディーとダムに追い詰められてしまった私。
とりあえずポカリと殴って逃げてきた。
私が手を出すのは予想外だったようで、痛みというよりも驚きで彼らはぽかんとしていた。
でもね、「なにするのよ!」という私の言葉に
「まだ何もしてないよ」「しようとしたんだよ」というトンチンカンな訂正を入れてきた彼らには、反省の色など全くなかった。
「はぁ……あの育ち方はきっと周りにいる大人のせいだわ」
私は双子の周りにいる大人代表を思い浮かべた。
エリオット、というよりもたぶんブラッドの方が影響力が大きそうだ。
思わず深いため息が出てしまう。
すると、玄関にモップをかけていたメイドさんは、私を見てのんびりと楽しそうに笑った。
「あのお二人から~よく逃げられましたね~」
「おでこに一発……ってなんで!?」
「あなた様の様子を見れば~すぐにわかりますよ~」
普通に言ってくるので普通に返したが、私の身に起きたことを彼女はなんとなく察していたらしい。(すごいな)
だるそうだけど、やっぱり鋭い。
さすがマフィアの構成員。さすがブラッドの部下!
「もうこの際、護身術でも教わっておきたいかも」
おっとりだるだるに見えるメイドさんも、恐ろしいことにプロだ。
「護身術ですか~? あなた様に~?」
そう言って彼女はのんびりと私を見る。
……その視線、私には無理だとでも言いたげな感じに見えますけど。
「そんなの大声を出す、が一番だろ」
聞き覚えのある声に振り向くと、エリオットが部下を引き連れ歩いてきた。
「あ~エリオット様~。お帰りなさいませ~」
だるだる~っと上司を迎え入れるメイドさん。
エリオットは彼女の言葉に軽く手をあげつつ、私の前までやってきた。
「名無しさんは鈍そうだし、銃を持つのが嫌なら声出すのが一番早い」
そう言いながら、エリオットは後ろの部下達に視線をやり、先に行くよう合図を送る。
彼らは頭を下げて私たちの横を通り過ぎて行った。
なぜか一緒に掃除をしていたメイドさんもにこやかに通り過ぎて行く。(あれ?)
玄関に取り残された私は、エリオットと向かい合った。
「護身術を知りたいだなんて、なんかあったのか?」
彼は眉をひそめて私に問う。
「え、いやぁ別にないけどさ……万が一の時に備えてね」
双子に襲われかけました、なんて言えるわけがない。
「ふぅん?」
怪訝な顔をするエリオット。なんとなく信用されてない感じ。
「なんかあったら声出せ。俺を呼べよ。すぐ助けてやるから」
「うん、ありがとう」
実際助けに来るというのは難しいと思うが、彼の気持ちは嬉しい。
いい人だなぁなんて思ったけど、次の言葉はやっぱり物騒だった。
「特にクソガキ共が相手だったらなおさらだ。ぶちのめしてやるからな」
「あ……うん」
「なんなら今から行ってくるぜ?」
「……え!?」
彼の言葉に思わず止まった私。
そんな私の様子に、エリオットの機嫌がみるみる急降下していった。
「やっぱりな」
「や、やっぱりって?(もしかしてはめられた!?)」
「あいつらが名無しさんになんかしたんだろ?」
「えーと……」
「門にいなかったし、あんたの様子はおかしいし……あいつらぶち殺してやる」
本気だこの人。(怖すぎる!!)
「えぇと、ちょっと待って。たしかに何かあったっちゃあったけどね?
何かされたわけじゃなくて、まだなにもされなかったというか、されそうになったというか……」
さっきの双子と同じようにトンチンカンなことを自分で言ってしまっている私。
双子を擁護するつもりなんてなかったのに、今のエリオットの様子を見ると擁護せずにはいられない。それくらい怖い。私を見る目つきなんて鋭すぎて、自分が悪いことしたみたいな気がしてくる。
「えぇと、とりあえず落ち着いて!
私はあの子たちをポカっと殴って逃げたから大丈夫だったし、万が一また何かあったらその時はエリオットにあの子たちを懲らしめてもらうからさ」
「……懲らしめるっつーかぶち殺すけどな」
「殺し屋ですか、あなた。そこまでしなくていいよ」
エリオットはふかーいため息をついた。思わずうつむいてしまう。
「名無しさんのこと心配してるんだぜ」
「うん。ありがとう。気をつけます。ごめんなさい」
「一度痛い目見ないとわかんねぇとかやめてくれよな」
「……はい。気をつけます」
痛い目なんて見たくない。
おそるおそるエリオットを見上げる。顔をしかめているエリオットが腕組みをして私を見ていた。
すごい威圧感です。さすがNo.2。
「なんかあったら、ちゃんと大声をだします」
子どものように宣言してみた。
すると、それまでじっと私を見ていたエリオットの表情がすっと和らいだ。
「よし、約束な」
「うん」
「んじゃそういうことで飯でも食いに行くか!」
「え?」
突然にぱっと笑ってそんなことをいうエリオットに、私は思いっきり変な声を上げた。
「前に約束したろ? 俺のオススメの店に連れてってやるよ。すっげーうまいの!」
もちろんにんじん料理だろうなぁ。
「でも、私もうちょっと仕事があってね……」
「もうすぐ終わるだろ? その間にガキ共を半殺しにしたり、風呂に入ってくるから大丈夫だぜ」
「……お風呂はいいんだけどさ、はんごろしって……」
「名無しさんに免じて半殺しで済ませようってんだ」
「いや免じてないよね、それ」
どれだけ怖い人なんでしょう、この人。
顔が引きつる私をよそに、エリオットは「じゃあ後でな!」と手を振って行ってしまった。
「……面倒事は嫌だよ私」
思わずそうつぶやいていた。
「あらぁ? 何かあったんですか~?」
先に玄関の掃除をしていたメイドさんは私を見るなりそう言った。
のんきな口調だったけれど、私の様子の変化に気づいているのだから、鋭いのかもしれない。
ディーとダムに追い詰められてしまった私。
とりあえずポカリと殴って逃げてきた。
私が手を出すのは予想外だったようで、痛みというよりも驚きで彼らはぽかんとしていた。
でもね、「なにするのよ!」という私の言葉に
「まだ何もしてないよ」「しようとしたんだよ」というトンチンカンな訂正を入れてきた彼らには、反省の色など全くなかった。
「はぁ……あの育ち方はきっと周りにいる大人のせいだわ」
私は双子の周りにいる大人代表を思い浮かべた。
エリオット、というよりもたぶんブラッドの方が影響力が大きそうだ。
思わず深いため息が出てしまう。
すると、玄関にモップをかけていたメイドさんは、私を見てのんびりと楽しそうに笑った。
「あのお二人から~よく逃げられましたね~」
「おでこに一発……ってなんで!?」
「あなた様の様子を見れば~すぐにわかりますよ~」
普通に言ってくるので普通に返したが、私の身に起きたことを彼女はなんとなく察していたらしい。(すごいな)
だるそうだけど、やっぱり鋭い。
さすがマフィアの構成員。さすがブラッドの部下!
「もうこの際、護身術でも教わっておきたいかも」
おっとりだるだるに見えるメイドさんも、恐ろしいことにプロだ。
「護身術ですか~? あなた様に~?」
そう言って彼女はのんびりと私を見る。
……その視線、私には無理だとでも言いたげな感じに見えますけど。
「そんなの大声を出す、が一番だろ」
聞き覚えのある声に振り向くと、エリオットが部下を引き連れ歩いてきた。
「あ~エリオット様~。お帰りなさいませ~」
だるだる~っと上司を迎え入れるメイドさん。
エリオットは彼女の言葉に軽く手をあげつつ、私の前までやってきた。
「名無しさんは鈍そうだし、銃を持つのが嫌なら声出すのが一番早い」
そう言いながら、エリオットは後ろの部下達に視線をやり、先に行くよう合図を送る。
彼らは頭を下げて私たちの横を通り過ぎて行った。
なぜか一緒に掃除をしていたメイドさんもにこやかに通り過ぎて行く。(あれ?)
玄関に取り残された私は、エリオットと向かい合った。
「護身術を知りたいだなんて、なんかあったのか?」
彼は眉をひそめて私に問う。
「え、いやぁ別にないけどさ……万が一の時に備えてね」
双子に襲われかけました、なんて言えるわけがない。
「ふぅん?」
怪訝な顔をするエリオット。なんとなく信用されてない感じ。
「なんかあったら声出せ。俺を呼べよ。すぐ助けてやるから」
「うん、ありがとう」
実際助けに来るというのは難しいと思うが、彼の気持ちは嬉しい。
いい人だなぁなんて思ったけど、次の言葉はやっぱり物騒だった。
「特にクソガキ共が相手だったらなおさらだ。ぶちのめしてやるからな」
「あ……うん」
「なんなら今から行ってくるぜ?」
「……え!?」
彼の言葉に思わず止まった私。
そんな私の様子に、エリオットの機嫌がみるみる急降下していった。
「やっぱりな」
「や、やっぱりって?(もしかしてはめられた!?)」
「あいつらが名無しさんになんかしたんだろ?」
「えーと……」
「門にいなかったし、あんたの様子はおかしいし……あいつらぶち殺してやる」
本気だこの人。(怖すぎる!!)
「えぇと、ちょっと待って。たしかに何かあったっちゃあったけどね?
何かされたわけじゃなくて、まだなにもされなかったというか、されそうになったというか……」
さっきの双子と同じようにトンチンカンなことを自分で言ってしまっている私。
双子を擁護するつもりなんてなかったのに、今のエリオットの様子を見ると擁護せずにはいられない。それくらい怖い。私を見る目つきなんて鋭すぎて、自分が悪いことしたみたいな気がしてくる。
「えぇと、とりあえず落ち着いて!
私はあの子たちをポカっと殴って逃げたから大丈夫だったし、万が一また何かあったらその時はエリオットにあの子たちを懲らしめてもらうからさ」
「……懲らしめるっつーかぶち殺すけどな」
「殺し屋ですか、あなた。そこまでしなくていいよ」
エリオットはふかーいため息をついた。思わずうつむいてしまう。
「名無しさんのこと心配してるんだぜ」
「うん。ありがとう。気をつけます。ごめんなさい」
「一度痛い目見ないとわかんねぇとかやめてくれよな」
「……はい。気をつけます」
痛い目なんて見たくない。
おそるおそるエリオットを見上げる。顔をしかめているエリオットが腕組みをして私を見ていた。
すごい威圧感です。さすがNo.2。
「なんかあったら、ちゃんと大声をだします」
子どものように宣言してみた。
すると、それまでじっと私を見ていたエリオットの表情がすっと和らいだ。
「よし、約束な」
「うん」
「んじゃそういうことで飯でも食いに行くか!」
「え?」
突然にぱっと笑ってそんなことをいうエリオットに、私は思いっきり変な声を上げた。
「前に約束したろ? 俺のオススメの店に連れてってやるよ。すっげーうまいの!」
もちろんにんじん料理だろうなぁ。
「でも、私もうちょっと仕事があってね……」
「もうすぐ終わるだろ? その間にガキ共を半殺しにしたり、風呂に入ってくるから大丈夫だぜ」
「……お風呂はいいんだけどさ、はんごろしって……」
「名無しさんに免じて半殺しで済ませようってんだ」
「いや免じてないよね、それ」
どれだけ怖い人なんでしょう、この人。
顔が引きつる私をよそに、エリオットは「じゃあ後でな!」と手を振って行ってしまった。
「……面倒事は嫌だよ私」
思わずそうつぶやいていた。