短編
名前変換
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祐介がプライベートで待ち合わせ時間通りに来る事はあまりない。普通の女の子ならどうして毎回遅れるの!とか怒ってしまいそうなものだけれど。きっと祐介のことだからまた電車賃を浮かせるために一駅か二駅か歩いているに違いない。祐介の絵画への熱量や金銭事情は知っているし、彼が遅刻して落ち合っても必ず謝ってくれるので特に気にすることは無くなっていた。
「お姉さん、ひとり?」
特にすることもなくスマホを弄っていたら知らない男の人に声をかけられた。
「いえ、待ち合わせしてます」
「ふうん。じゃあツレが来るまでご飯でもどう?」
「忙しいので、遠慮します」
これってナンパ?断っても男はなかなか立ち去ろうとしない。困るなあ。
「さっきから見てたけど暇そうじゃん。おツレさんも全然来ないし、急な用事ができちゃったんじゃない?」
さっきから見てたのか、怖いな。それにしても祐介に限ってドタキャンは無いはずだけど…。なにかあれば連絡くれるだろうし。いやでも祐介のことだからもしかしたら杏のような綺麗な女の子を見つけたら絵のモデルをお願いする為について行っちゃうかも…………。
「落ち込んじゃってかわいそー。オレが慰めてあげる」
「えっやだ!離してっ!」
私が無言で考え込んでるのを肯定と取ったらしい男が私の腕を掴んで歩き出す。やだ、怖いよ。助けて祐介…!
「いたっ…」
「ほら!大人しくついてくれば乱暴しないから」
これが既に乱暴だとかそんなことを言える程余裕がない。怖くてなにも考えられなくなって、涙が出そうだった。
「あ、」
ふいに男に掴まれてた腕が解放される。手元を見ると祐介が男の腕を掴んで私の腕を解放してくれていた。
「彼女、嫌がっているが?」
祐介は異世界ばりの目力の強さで男を睨んでいる。
「あん?なんだおまえ」
「その子の連れだ」
「ちっ、男かよ」
自分より背の高い祐介に睨まれてビビったのか男はそそくさと去っていった。た、助かった…。ホッとしたと同時に涙が溢れてきてそのまま感極まって祐介に抱きつく。
「ゆ、すけっ……!!うぅっ…」
「名前…!すまない、君と少しでも多くの場所を回ろうと思って電車賃を浮かせて歩いたのが仇になってしまった」
「わっ私……、祐介が杏を見つけた時みたいに、女の子について行っちゃったのかと思って……少しでも疑ってしまった、ごめんなさい」
「いや、元はと言えば俺が遅刻したからだ。名前を不安な気持ちにさせてしまった…もう少し来るのが遅れてたらと思うと…!本当にすまなかった」
祐介は眉を下げて私をじっと見つめる。祐介息切れしてる、私のために走ってくれたんだ。すごく嬉しいな。
「祐介、走ってくれたんだね。ありがとう」
「名前が男に腕を引っ張られた時は本当に冷や汗をかいた……」
次回からはもっも早めに寮を出ねば、と言う祐介はハンカチで私の涙を優しく拭いつつもう一度抱きしめてくれた。
「祐介、大好き」
「ふふ、俺も名前が好きだ」
祐介が電車賃を浮かしてくれたぶん2人でいっぱいデートを楽しむことにした。もちろんお互いの手と手はなるべく離さずに。