短編
名前変換
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怪盗業をやっていて、ハプニングというものは常に付き物な気がする。たとえば、思いがけない技が来てネズミ姿になってしまったり、混乱させられて所持金をばら撒いてしまったり(敵を倒してもマイナスである)、メメントスで刈り取る者に追いかけられたり、崩れゆくパレスから脱出したり。
それはいつものようにメメントスで鍛えていた時のこと。たまたま出会った敵が強敵で、しかも私のペルソナのスキルと相性が悪く、ダウンさせられてしまった。結構キツイ。敵に有利な技を出すと追い討ちができるのは相手側も同じようで、しかもその攻撃がまた私に向かっていた。2度目は流石にやばいと思いながらも動けないので申し訳程度だけど目をかたくつむった。
「名前、危ない!」
あ、祐介コードネーム忘れてる。ふとそんな事を考える私は敵の技から多分現実逃避していた。掛け声と同時に祐介は私を抱きしめるようにしながら倒れ込んだ。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう」
私に負担が少ないように片腕を下に回してくれている。祐介のこういう優しいところがすごく好きだなあと思った。それと同時に仮面は付けてるものの、至近距離で綺麗な顔に見つめられ私は恥ずかしくなり視線を逸らしてしまう。
「名前に大きな怪我がなくてよかった」
「大袈裟だよ、リーダーやみんなが回復技や蘇生技も覚えてるし。でも心配してくれてありがとう」
その時ハプニングは起こったのだ。祐介は私の背中に回していた手を優しく抜くと同時にもう片方の手にぐっと力を入れて起き上がったつもりだった。
「ひゃぁっ」
「!」
私はプチパニックになりながらもまた祐介の方に視線を戻した。祐介が力を入れた片手は地べたではなく私の胸をむにと鷲掴んでいたのだ。というかすごく恥ずかしい声を出してしまった気が…。みんなの視線が集まって、しばらく沈黙する。竜司がヒュウと口笛で煽る。
「あ……す、すまない」
「だ、大丈夫!い、嫌じゃ、ない…から」
私は何を言っているんだ。いや、嫌じゃないのは本当だ。好きだから。
「そ、そうか……」
祐介がゆっくりと私の胸から手を離す。そしていつもの感じで少し笑っていた。ナビが「オイナリ、変態みたいだぞー、あ、変態か」と1人で自己完結。祐介は双葉の言葉に言い返さずボーッとしている。結局シャドウはリーダーが倒してくれた。その後はひたすら戦闘に打ち込んで、いつどうやって帰ったのか正直覚えてない。一方祐介が始終手をわきわきと動かしていた事を私は知らない。
▼
次の日。今日は依頼も兼ねてまたメメントスに行く事になっていた。放課後にみんなでアジトに集まり、作戦会議をして突入する。
そこまではいつも通り。ただ祐介の方をチラッと見ると心ここにあらずという感じだった。イセカイナビを立ち上げ、メメントスの入口に集まる。リーダーが前衛メンバーを選出し始めた。相変わらず祐介の方を見ると呆けている。
「フォックス、聞いてる?」
「あ、あぁ…ジョーカー。今日の晩飯がルブランのカレーという事か?」
「全然違う」
「そうか、すまない…」
ジョーカーとそんなやり取りをした後、私の方に向かってくるフォックス。なんだろう。
「昨日、その、考えたんだが……」
「うん?」
「本当にすまなかった」
「えっ!あっ……」
私にとっては昨日の事は別に嫌なことじゃなかったから(びっくりはしたけど)、そんな思い悩んではいなかったんだけど、祐介の方はなんだか悩んでるみたいで申し訳なくなった。
「私は本当に大丈夫だよ?」
「そうか。ならいいんだが……。俺はあれから帰って絵を描こうにも手付かずで……」
「ええ!?ごめんね、そんなに悩んでたなんて…!」
「違う!ただ……」
「ただ…?」
「やはりあの時の胸の感触が忘れられないんだっ…!」
みんながいる事も忘れて(忘れてはないのかもだけど)、大声で吐露する祐介。背景に効果音が付くならドン!という感じだろうか?私には昨日の出来事よりここで今大声で改めて言われたことの方が正直恥ずかしい。心なしか周りもざわついてる。
「わ、わかったから!」
「!それはまた触らせてくれるという事でいいのか…!?」
「ちょ!声大きいよ!」
私の胸で着想が浮かぶなら嬉しいことこの上ないけど。傍で竜司が「ラッキースケベってヤツだろ?いいなー」とか双葉が「やっぱり変態だ…!」とか、頬を赤らめている女性陣を見て私も改めて恥ずかしくなってしまった。祐介は嬉しそうに目をつむっていつものように笑っていた。