このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

一章

目にも止まらぬ速さで変わる戦況。
素早いカードのやり取りに、火花が飛び散っているように見えた。
ゲーム中、俺は口を開けたまま間抜けな顔しかできなかった。

「くっ……さすがばあやさん、お強いですね」
「ふふ、腕を上げたのは認めますが、やはりまだまだですね」

5分後、壮絶な戦いの勝利を収めたのは、ばあやだった。
2人とも汗がキラキラと輝いている。結構激しい運動をしないとかかない量の汗だよね、コレ。

「いや、激しすぎるだろ」

俺がそう言うと、メイドとばあやは顔を見合わせ、同時に首を傾げた。

「これが普通じゃないですか?」
「坊ちゃん、ゲームの世界はも奥深いんですよ。70年以上生きてきて、まだ真髄には達せていないのですから」

……やっぱり身を捧げるものはゲームなのか?

「坊ちゃんの世話も、まだあなただけに任せるのは少し心配ですしね」

わたくしもまだまだ死ねませんね、と柔らかく笑うばあや。なんだよかった、メイド業も大事なのか。
なんだろう、それだけでなんだか目の前がぼやけてきた。
俺も涙もろくなったな……。

「ちょっと!ばあやさん!」

まだカードを片手にしているメイドが非難の声を上げた。おい、何かまた面倒なことを始めるんじゃ……。

「私だけでも坊ちゃんのお世話くらいできます!」

……なんだなとても嫌な予感がする。うん。
5/8ページ
スキ