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1.黄色い耳飾りの鬼

「善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないなら、

柱なんて辞めてしまえ!」





額に痣を持つ隊士がそう言い放った瞬間、隣から気配が消えた。

鈴の音が鳴り響き、皆はっとしたように視線を動かす。

彼らの視線の先では、奇抜な格好をした青年が箱を物色していた。





「…」

「おいテメェ、邪魔すんじゃ」





言葉を止めた風柱の姿は、まさに”蛇に睨まれた蛙”。

めったに物怖じしないその男を圧倒する青年の前で、

それ以上誰も言葉を発しなかった。



静かになった庭で、青年は地面においた箱へ刀を向ける。





「やめっ、グハ、」

「煩い。」





炭治郎は地面に叩きつけられ、身動きが取れなくなってしまった。

顎を強く打ったために声が出せない。

妹が刺される瞬間を、兄は黙って見ているしかできなかったのだ。



青年と箱は逆光で照らされ、白い歯が不気味に浮かび上がる。

箱から抜かれた刀からは液体がしたたり、庭の石を赤く染めた。





「イヤッ、」

「おい!お館様の指示を待て!」





炎柱の言葉など既に手遅れ。

こちらを向いた青年の顔には赤い液体が散っている。

その目は大きく見開かれ、どこか狂気じみていた。





「鬼が善良かどうかなんて関係ない。みんな僕が殺す。」





その言葉の向こう側にいる"かつての青年の姿”を、

伊黒は思い出していた。





青年の耳で、黄色い飾りが笑うように揺れた。

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