願い星にかける
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いつもの様に夜が開けきらぬうちに目を覚ます。衝立で仕切られた向こう側には人の気配が無い。また今夜も帰らなかったのか、と小さくため息を零した。立ち上がり衝立から顔を覗かせると畳まれたままの布団が主の不在を告げていた。
「阿呆が」
ボソリと呟くがそれに食ってかかる同室の男はいない。仙蔵は諦めて顔を洗うため井戸に向かった。空を見上げるとまだ朝焼けに負けず星が幾ばくが輝いて見える。
「お、起きたのか」
井戸の水をくんでいると背後から声をかけられる。声だけで分かる言わずもがな同室の潮江文次郎だ。仙蔵は目線だけでその姿を捉えると興味が無い風を装いながら身支度を進めた。
「おい、無視するなよ仙蔵」
「…お前、クマが酷くなってないか?」
「そうか?あんまり変わらんと思うが」
「夜の鍛錬で朝を迎えるのは控えたらどうだ」
「夜は忍者のゴールデンタイム!ギンギンに鍛錬しないでどーするんだ」
「ちっ、この鍛錬バカめ」
「なんだと、おい」
「部屋に戻る。今日は課題をやるのだ一日部屋にこもってな」
暗に部屋に来いと言っているのだが鍛錬の事しか頭にないこの男に果たして伝わるのだろうか。間抜けな顔で呆けている文次郎に背を向けて、仙蔵はそそくさと部屋に戻った。
残された文次郎は眉間に皺を寄せ老けた顔を更に老け込ませて先程の仙蔵の言葉を考えた。一日部屋にいるから戻ってこいと暗に言っているようにも聞こえたが、もしも邪魔するなという意味だとしたら大変な事になる。半日は焙烙火矢の雨を受けることとなるだろう。あの冷静沈着な仙蔵が寂しがっているとは考えにくい。哀れな文次郎は後者と捉え今日も部屋に帰れそうにないとため息をついた。
「という訳なんだがどう思う」
手持ち無沙汰でやってきたのは五年長屋の一室。この部屋は五年生の竹谷八左ヱ門の部屋だ。
「いやそんな事よりなんでここにいるんですか、潮江先輩」
「たまたま五年長屋の前を通ったらお前が部屋にいるのがわかってなつい」
「つい、じゃないです」
「仕方ないだろう、後輩にこんなこと相談できるか恥ずかしい」
「俺も一応後輩なんですけどね。同級生の先輩方に相談すればいいのでは?」
「ダメだ、相談できる相手がいない」
「おほー」
何を根拠に自分に相談に来ているのだろうかと八左ヱ門は思案するが、悩み事のある潮江先輩はとにかく変な方向に思考が飛びまくるので仕方ないかと自分の運命を少しばかり呪った。
「話聞く限りだと立花先輩は寂しんじゃないかと思うんですけど」
「いや、仙蔵に限ってそれは無いだろうな」
「そうなんですか…もう直接聞くしかないですよ。怒られるの覚悟で部屋行きましょう」
「む、そう、だよな…仕方ない、か」
なんだもう答え決まってるじゃんと八左ヱ門は心の中でため息をついた。この先輩は背中を押してもらいたかっただけなのかもしれない。その相手が俺なのは少し不満ではあるが、この際それはどうでもいい。
「頑張ってくださいね、潮江先輩」
「あぁ、すまなかった」
潮江先輩は何か吹っ切れたように部屋を後にした。
「阿呆が」
ボソリと呟くがそれに食ってかかる同室の男はいない。仙蔵は諦めて顔を洗うため井戸に向かった。空を見上げるとまだ朝焼けに負けず星が幾ばくが輝いて見える。
「お、起きたのか」
井戸の水をくんでいると背後から声をかけられる。声だけで分かる言わずもがな同室の潮江文次郎だ。仙蔵は目線だけでその姿を捉えると興味が無い風を装いながら身支度を進めた。
「おい、無視するなよ仙蔵」
「…お前、クマが酷くなってないか?」
「そうか?あんまり変わらんと思うが」
「夜の鍛錬で朝を迎えるのは控えたらどうだ」
「夜は忍者のゴールデンタイム!ギンギンに鍛錬しないでどーするんだ」
「ちっ、この鍛錬バカめ」
「なんだと、おい」
「部屋に戻る。今日は課題をやるのだ一日部屋にこもってな」
暗に部屋に来いと言っているのだが鍛錬の事しか頭にないこの男に果たして伝わるのだろうか。間抜けな顔で呆けている文次郎に背を向けて、仙蔵はそそくさと部屋に戻った。
残された文次郎は眉間に皺を寄せ老けた顔を更に老け込ませて先程の仙蔵の言葉を考えた。一日部屋にいるから戻ってこいと暗に言っているようにも聞こえたが、もしも邪魔するなという意味だとしたら大変な事になる。半日は焙烙火矢の雨を受けることとなるだろう。あの冷静沈着な仙蔵が寂しがっているとは考えにくい。哀れな文次郎は後者と捉え今日も部屋に帰れそうにないとため息をついた。
「という訳なんだがどう思う」
手持ち無沙汰でやってきたのは五年長屋の一室。この部屋は五年生の竹谷八左ヱ門の部屋だ。
「いやそんな事よりなんでここにいるんですか、潮江先輩」
「たまたま五年長屋の前を通ったらお前が部屋にいるのがわかってなつい」
「つい、じゃないです」
「仕方ないだろう、後輩にこんなこと相談できるか恥ずかしい」
「俺も一応後輩なんですけどね。同級生の先輩方に相談すればいいのでは?」
「ダメだ、相談できる相手がいない」
「おほー」
何を根拠に自分に相談に来ているのだろうかと八左ヱ門は思案するが、悩み事のある潮江先輩はとにかく変な方向に思考が飛びまくるので仕方ないかと自分の運命を少しばかり呪った。
「話聞く限りだと立花先輩は寂しんじゃないかと思うんですけど」
「いや、仙蔵に限ってそれは無いだろうな」
「そうなんですか…もう直接聞くしかないですよ。怒られるの覚悟で部屋行きましょう」
「む、そう、だよな…仕方ない、か」
なんだもう答え決まってるじゃんと八左ヱ門は心の中でため息をついた。この先輩は背中を押してもらいたかっただけなのかもしれない。その相手が俺なのは少し不満ではあるが、この際それはどうでもいい。
「頑張ってくださいね、潮江先輩」
「あぁ、すまなかった」
潮江先輩は何か吹っ切れたように部屋を後にした。
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