キミをたべたい
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「…痛むか?」
長次はゆっくりと頷いた。言わずもがな小平太の言う痛みとは頬の傷の事だ。慈しむように触る小平太のゴツゴツとした手の平が長次の頬を撫でる。しかし、傷は痛くない。痛いのは別の場所だ。
「…痛むのか?」
「ここが、痛い」
長次は隣から覗き込む小平太の頬に添えられた右手を掴み厚い胸板へと誘導する。
「ここが、痛いのか…」
長次は静かに頷いた。
「ごめん、長次」
「…謝るな」
「ごめん」
ずっと一緒に居るって言えなくてごめん。長次には小平太の声が聞こえた気がした。
「いさっくんに、見てもらおう?」
伊作に見せてどうこうなる痛みでは無いことは長次も小平太も理解していた。ただ、この痛みに名前を付けて欲しかったのだ。だから、長次は小平太の言葉に静かに頷き立ち上がった。
「え?治療したい?別に目立つ怪我は無いけど…」
伊作は首を傾げて苦笑した。激しい実習もここの所なく怪我をする要因が伊作には思い付かなかった。
「まぁ、強いて言えば…その痛みを治せるのは小平太だけなんじゃないかな?」
伊作は繋がれたままの手を見つめて笑った。そのまま伊作は薬草を詰みに医務室を後にした。残された2人は見つめ合う。沈黙を破ったのは小平太だった。
「…長次」
呟いた小平太の声は震えていた。
「長次は…私の事好きか?」
突然の質問。嫌いなわけが無い。ひたすらに思い続けてきたのだ。答えは分かりきっている。でも、今の自分に、堂々とそれに答える権利があるのか分からない。
「答えて」
小平太は目をそらすことを許さない。長次は小さく答えた。
「…すき、だ」
「私だって好きだ。愛しているぞ、長次」
小平太が身を乗り出した。身構えることなく唇が重ねられる。
「だから…」
ずっと一緒にいよう。
嘘だった。小平太が付いた優しく苦しい嘘。最初で最後の不器用な嘘。長次は微笑み頷いた。
「もう、痛くない」
「そうか、良かった」
抱き締められて、抱き締め返して。
この日を大切に大切に。
別れの日は着実に近付いているのだから、せめて、その瞬間まで、長次は小平太のこの嘘を愛そうと心に誓った。
長次はゆっくりと頷いた。言わずもがな小平太の言う痛みとは頬の傷の事だ。慈しむように触る小平太のゴツゴツとした手の平が長次の頬を撫でる。しかし、傷は痛くない。痛いのは別の場所だ。
「…痛むのか?」
「ここが、痛い」
長次は隣から覗き込む小平太の頬に添えられた右手を掴み厚い胸板へと誘導する。
「ここが、痛いのか…」
長次は静かに頷いた。
「ごめん、長次」
「…謝るな」
「ごめん」
ずっと一緒に居るって言えなくてごめん。長次には小平太の声が聞こえた気がした。
「いさっくんに、見てもらおう?」
伊作に見せてどうこうなる痛みでは無いことは長次も小平太も理解していた。ただ、この痛みに名前を付けて欲しかったのだ。だから、長次は小平太の言葉に静かに頷き立ち上がった。
「え?治療したい?別に目立つ怪我は無いけど…」
伊作は首を傾げて苦笑した。激しい実習もここの所なく怪我をする要因が伊作には思い付かなかった。
「まぁ、強いて言えば…その痛みを治せるのは小平太だけなんじゃないかな?」
伊作は繋がれたままの手を見つめて笑った。そのまま伊作は薬草を詰みに医務室を後にした。残された2人は見つめ合う。沈黙を破ったのは小平太だった。
「…長次」
呟いた小平太の声は震えていた。
「長次は…私の事好きか?」
突然の質問。嫌いなわけが無い。ひたすらに思い続けてきたのだ。答えは分かりきっている。でも、今の自分に、堂々とそれに答える権利があるのか分からない。
「答えて」
小平太は目をそらすことを許さない。長次は小さく答えた。
「…すき、だ」
「私だって好きだ。愛しているぞ、長次」
小平太が身を乗り出した。身構えることなく唇が重ねられる。
「だから…」
ずっと一緒にいよう。
嘘だった。小平太が付いた優しく苦しい嘘。最初で最後の不器用な嘘。長次は微笑み頷いた。
「もう、痛くない」
「そうか、良かった」
抱き締められて、抱き締め返して。
この日を大切に大切に。
別れの日は着実に近付いているのだから、せめて、その瞬間まで、長次は小平太のこの嘘を愛そうと心に誓った。
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