2.良かれと思って
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軽く意識を飛ばしていたらしい。がさりという音と人の気配にゆっくりと瞼を開けた。
「おれ、は、」
「あ、目を覚ましましたね」
そこには、組織に相応しくない空気を纏う少女がいた。高校生、いや中学生か?
「まだ動かないで下さいね、やっと止血できたんですから」
「…誰ですか」
「知らない人には教えたくないので黙秘で。ところで今日は何月何日か、ここが何処だか言えますか?」
年月日と住所を伝える。見当識障害は無さそうですね、と少女は安心した様子で足元に広がった消毒液やガーゼ、包帯など救急箱に詰めていく。
「あなたが、治療を?」
「止血程度です。救急車を呼んだら騒ぎになりそうだったので、勝手にやらせてもらいました。詮索はしません、あとが怖いので」
普通どうしたんですか?とか聞いてくるものだが。
こちらは人を殺すような、世界中で犯罪を犯している組織の人間だ。こちらの世界に彼女のような学生を巻き込みたくない。俺のもう一つの顔だったとしても、関わらせないだろう。彼女がそれ以上聞いてこないことを良いことに、そのまま口を閉じる。
片付けが終わり、スポーツドリンクとエネルギー補給のゼリーが入ったビニール袋を俺の傍らに置くと、彼女は立ち上がった。
「まだ開けてないので、良かったら飲んで下さい。それと」
パッと自分に影がさす。青色の傘が頭上に広げられていた。
「これ使って下さい。これから雨が降りそうなので」
はい、と傘の中棒を俺の上半身に立てかける。私はもう一本あるのでご心配なく、と彼女は黒の学生鞄を叩いて見せた。
「それじゃ、お兄さんお大事に」
そう言って彼女は荷物を抱えてかけ足でこの場を去っていった。特に制止はしなかった、むしろ早く立ち去ってほしかった。
彼女の気配が遠くなったあたりで「バーボン」と声をかけられる。まったく、
「遅いですよ、スコッチ」
「あの子がいたから、様子を伺ってた」
「ライは?」
「狙撃ポイントで周囲を警戒してもらってる。早く移動するぞ」
今回の任務は弱小組織の殲滅で、ライとスコッチが狙撃ポイントから、俺は工場の二階から奴らの息の根を止めていった。同じく二階にいた男に気付かなかった俺は、そいつから一発もらったが、作戦は成功。携帯で二人に連絡を入れた後から記憶がなくなっていた。
スコッチに肩を貸してもらって工場から脱出、車に乗り込む。ちょうど雨がぱらぱらと降ってきた。彼女の傘を後ろに座席に放る。少し走らせ、もう一人の仲間を拾い、今回の作戦結果を組織に報告した。
そして三人の話題はあの女生徒へ移るのだった。
「バーボンから連絡貰って急いで移動していたら、ライから一般人の侵入ありって言われて。工場に入って二階に向かったら、お前があの子に治療されてる現場だった」
「何故あの子が入ってきたんですか」
「猫を追いかけていたらしい。物好きなお嬢さんだ」
「でもその子のお陰でバーボンの血は止まっている。一応医者の所、寄る?」
「お願いします」
「バーボン。組織に彼女のことは伝えていないが、どうする?」
そう言って、ライは彼女の置いていった傘をバックミラー越しに見せてきた。彼女の指紋が付着した柄と、彼女の着ていた制服や鞄。それらを調べればすぐに身元が割れるだろう。しかし彼女の一件を誰も組織に報告しなかった。そこから今後の対応に関しても、おそらく同意見。
「気にはかかりますが、折角の彼女の善意です。悪いようにはしません。お二人ともいいですか?」
「ふっ、元はと言えば撃たれたお前が悪い」
「あなたの狙撃ポイントから狙えたはずですよね?殺し損ねたんですか?ライ」
「…お前ら、喧嘩するなら車を降りろ」
「おれ、は、」
「あ、目を覚ましましたね」
そこには、組織に相応しくない空気を纏う少女がいた。高校生、いや中学生か?
「まだ動かないで下さいね、やっと止血できたんですから」
「…誰ですか」
「知らない人には教えたくないので黙秘で。ところで今日は何月何日か、ここが何処だか言えますか?」
年月日と住所を伝える。見当識障害は無さそうですね、と少女は安心した様子で足元に広がった消毒液やガーゼ、包帯など救急箱に詰めていく。
「あなたが、治療を?」
「止血程度です。救急車を呼んだら騒ぎになりそうだったので、勝手にやらせてもらいました。詮索はしません、あとが怖いので」
普通どうしたんですか?とか聞いてくるものだが。
こちらは人を殺すような、世界中で犯罪を犯している組織の人間だ。こちらの世界に彼女のような学生を巻き込みたくない。俺のもう一つの顔だったとしても、関わらせないだろう。彼女がそれ以上聞いてこないことを良いことに、そのまま口を閉じる。
片付けが終わり、スポーツドリンクとエネルギー補給のゼリーが入ったビニール袋を俺の傍らに置くと、彼女は立ち上がった。
「まだ開けてないので、良かったら飲んで下さい。それと」
パッと自分に影がさす。青色の傘が頭上に広げられていた。
「これ使って下さい。これから雨が降りそうなので」
はい、と傘の中棒を俺の上半身に立てかける。私はもう一本あるのでご心配なく、と彼女は黒の学生鞄を叩いて見せた。
「それじゃ、お兄さんお大事に」
そう言って彼女は荷物を抱えてかけ足でこの場を去っていった。特に制止はしなかった、むしろ早く立ち去ってほしかった。
彼女の気配が遠くなったあたりで「バーボン」と声をかけられる。まったく、
「遅いですよ、スコッチ」
「あの子がいたから、様子を伺ってた」
「ライは?」
「狙撃ポイントで周囲を警戒してもらってる。早く移動するぞ」
今回の任務は弱小組織の殲滅で、ライとスコッチが狙撃ポイントから、俺は工場の二階から奴らの息の根を止めていった。同じく二階にいた男に気付かなかった俺は、そいつから一発もらったが、作戦は成功。携帯で二人に連絡を入れた後から記憶がなくなっていた。
スコッチに肩を貸してもらって工場から脱出、車に乗り込む。ちょうど雨がぱらぱらと降ってきた。彼女の傘を後ろに座席に放る。少し走らせ、もう一人の仲間を拾い、今回の作戦結果を組織に報告した。
そして三人の話題はあの女生徒へ移るのだった。
「バーボンから連絡貰って急いで移動していたら、ライから一般人の侵入ありって言われて。工場に入って二階に向かったら、お前があの子に治療されてる現場だった」
「何故あの子が入ってきたんですか」
「猫を追いかけていたらしい。物好きなお嬢さんだ」
「でもその子のお陰でバーボンの血は止まっている。一応医者の所、寄る?」
「お願いします」
「バーボン。組織に彼女のことは伝えていないが、どうする?」
そう言って、ライは彼女の置いていった傘をバックミラー越しに見せてきた。彼女の指紋が付着した柄と、彼女の着ていた制服や鞄。それらを調べればすぐに身元が割れるだろう。しかし彼女の一件を誰も組織に報告しなかった。そこから今後の対応に関しても、おそらく同意見。
「気にはかかりますが、折角の彼女の善意です。悪いようにはしません。お二人ともいいですか?」
「ふっ、元はと言えば撃たれたお前が悪い」
「あなたの狙撃ポイントから狙えたはずですよね?殺し損ねたんですか?ライ」
「…お前ら、喧嘩するなら車を降りろ」