1.夢の続き
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少し、私の話をしよう。
一人の少女の生い立ちを夢に見る前、私は魔法師として戦場に立っていた。
自分の遠く後ろには、沖縄には妹と叔母様がいる。これ以上敵を進ませまいと、先輩と二人で、弟を守りながら敵を迎撃していた。私や先輩は二の次。四葉家のガーディアンを、自身の弟を失わないように、力を尽くした。そう、文字通り尽くしたのだ。
戦争が終わった頃。隣にいる先輩は既に冷たくなっている。魔法を使い過ぎたようだ、私の身体ももう動かない。
「さくら」
弟が私を呼ぶ。妹の感情のみを残し、殆どの感情を魔法のために消してしまった男の子。今も彼の表情がはっきり分からない。するりと抜け出ようとする意識をなんとか繋ぎ止めながら、ひとりの姉として言葉をつむいだ。
「達也。深雪と幸せになって」
あの子だけじゃなく、ちゃんと自分の幸せも考えること。いいわね?と念を押すように。こくりと頷いた彼を見て、本当に分かってるのか?と心配になったが、起きていたいという意思と裏腹に、とうとう自身の意識は薄らいでいく。ああ、風が気持ちいい。肌を滑る感覚にクスリと笑って、呆気なく終わった。四葉家の失敗作、司波さくら。沖縄侵攻時に衰弱死、享年18。涙する人はないに等しいだろうが、あの子は、深雪は泣いてくれるだろうか。
暖を取りたくなる夜に、ひとりお茶をすすり、人を待つ。今私がいるのは千影さんのお宅。息子さんを寝かしつけに行っているため、こうして回想に更けていた。
さて、情報の整理をしよう。
わたしは司馬さくら、小学6年生。生まれは山に囲まれた田舎。家族は父母兄の3人、両親は共働きだった。わたしが小学校に上がる前に離婚、母と東京へ移り住む。わたしは小学校へ特に問題なく通っていたが、あと数ヶ月で卒業するという時に母が亡くなった。母の知人の千影さんの助力もあって、近所のお寺の共同墓地にて供養してもらったところだ。
「お待たせ、さくらちゃん」
千影さんがティーセットの乗ったお盆をローテーブルに置く。
「早速だけど話を聞かせてもらってもいいかしら?」
「構いません」
「まず…死んだみたいだって言っていたけれど」
「正確な生死は分かりませんが、つい先程までいた司馬さくらの心は壊れました。原因は兄との会話です」
「もしかしてあの場所にお兄さんがいたの?」
「はい。一緒に来ないか?とお誘いがありましたが、この子は拒絶しました。母親の眠るこの土地から離れたくなかったのでしょう」
「でしょうって…まるで他人事ね」
「当然です。私はわたしじゃない。この子の傍にいた…そうですね、守護霊のようなものだと考えて下されば」
非科学的だけど、実際自分が体験しちゃってるわけだし。うんうん頭を悩ませている女性には申し訳ない。まずは情報を共有させて下さい。私としては早く寝たい、だって身体はまだ小学生だもの。
一人の少女の生い立ちを夢に見る前、私は魔法師として戦場に立っていた。
自分の遠く後ろには、沖縄には妹と叔母様がいる。これ以上敵を進ませまいと、先輩と二人で、弟を守りながら敵を迎撃していた。私や先輩は二の次。四葉家のガーディアンを、自身の弟を失わないように、力を尽くした。そう、文字通り尽くしたのだ。
戦争が終わった頃。隣にいる先輩は既に冷たくなっている。魔法を使い過ぎたようだ、私の身体ももう動かない。
「さくら」
弟が私を呼ぶ。妹の感情のみを残し、殆どの感情を魔法のために消してしまった男の子。今も彼の表情がはっきり分からない。するりと抜け出ようとする意識をなんとか繋ぎ止めながら、ひとりの姉として言葉をつむいだ。
「達也。深雪と幸せになって」
あの子だけじゃなく、ちゃんと自分の幸せも考えること。いいわね?と念を押すように。こくりと頷いた彼を見て、本当に分かってるのか?と心配になったが、起きていたいという意思と裏腹に、とうとう自身の意識は薄らいでいく。ああ、風が気持ちいい。肌を滑る感覚にクスリと笑って、呆気なく終わった。四葉家の失敗作、司波さくら。沖縄侵攻時に衰弱死、享年18。涙する人はないに等しいだろうが、あの子は、深雪は泣いてくれるだろうか。
暖を取りたくなる夜に、ひとりお茶をすすり、人を待つ。今私がいるのは千影さんのお宅。息子さんを寝かしつけに行っているため、こうして回想に更けていた。
さて、情報の整理をしよう。
わたしは司馬さくら、小学6年生。生まれは山に囲まれた田舎。家族は父母兄の3人、両親は共働きだった。わたしが小学校に上がる前に離婚、母と東京へ移り住む。わたしは小学校へ特に問題なく通っていたが、あと数ヶ月で卒業するという時に母が亡くなった。母の知人の千影さんの助力もあって、近所のお寺の共同墓地にて供養してもらったところだ。
「お待たせ、さくらちゃん」
千影さんがティーセットの乗ったお盆をローテーブルに置く。
「早速だけど話を聞かせてもらってもいいかしら?」
「構いません」
「まず…死んだみたいだって言っていたけれど」
「正確な生死は分かりませんが、つい先程までいた司馬さくらの心は壊れました。原因は兄との会話です」
「もしかしてあの場所にお兄さんがいたの?」
「はい。一緒に来ないか?とお誘いがありましたが、この子は拒絶しました。母親の眠るこの土地から離れたくなかったのでしょう」
「でしょうって…まるで他人事ね」
「当然です。私はわたしじゃない。この子の傍にいた…そうですね、守護霊のようなものだと考えて下されば」
非科学的だけど、実際自分が体験しちゃってるわけだし。うんうん頭を悩ませている女性には申し訳ない。まずは情報を共有させて下さい。私としては早く寝たい、だって身体はまだ小学生だもの。