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 ボクが偶然執務室であるじさんとこんのすけの会話を聞いてしまった日の翌日。朝食後に決まって行われている今日の当番と出陣部隊の連絡の前に、あるじさんが話を切り出した。ボクを含めて多くの男士の予想通り、内容は、池田屋への出陣についてだった。


「――と、いうわけで、今までと少し部隊編成を変更します。具体的には、これからしばらく、第二部隊は短刀、必要に応じて脇差や打刀を加えた夜戦に対応できる編成とする予定です。理由としては、当面の目標である池田屋の歴史を守るべく、その周辺に出現する時間遡行軍を問題なく倒す上で最適な編成を検討するためです」

 ここまでで何か質問は? とボクたちの顔を一通り見て確認するあるじさん。そこで、スッと手を挙げたのは鶴丸さんだ。どうぞ、とあるじさんが鶴丸さんに発言を促す。

「なあ、主。今の説明だと、当分は第二部隊で短刀の育成を中心に部隊の補強として脇差、打刀の奴らを入れるってことだよな。俺たち第一部隊はこれまで通りってことでいいのかい?」

 顕現してしばらく、飄々とした態度はさておきその実力を遺憾なく発揮して第一部隊の常連として本丸を牽引している。そんな彼からの質問に、あるじさんは「概ねそんな感じでしょうか」と言った。

「第一部隊には、これまでと同じように時間遡行軍の反応があった際の出陣と、新たな催しである大阪城の探索をしていただく予定です。あとは、他部隊の欠員補充をお願いするかもしれません」
「ちなみに、第二部隊には今まで出陣した経験のある時代への出陣や演練で経験を積んで、タイミングを見て池田屋と第一部隊と交代で大阪城へ。第三部隊は隊員を入れ替えつつ、遠征隊員を編成する予定だ」
「負担が多くなってしまいますが……。できる範囲で構いませんので、本丸全体の戦力強化にご協力お願いします」

 そう言ってあるじさんは申し訳なさそうにしているけれど、当の鶴丸さんはむしろ嬉しそう、いや、楽しそうにしている。他の第一部隊常連の男士も、あるじさんに笑いかけていた。

「ま、ちっと忙しくはなりそうだが、新しい仕事が増えるってのは退屈しなくていいもんだ。任せておけ!」

 うちの本丸では、主に切国さん、三日月さん、鶴丸さん、同田貫さん、和泉守さん、堀川くんの六振りが第一部隊として戦力の筆頭となっている。そのためか、遡行経験のない時代に向かう際は、彼らが最初に向かうことがほとんどだった。
 ボクたちは、本丸発足時期の関係上、最短ルートで敵に対抗できるだけの最低限――六振りを主戦力として確保する必要があった。その上で、「無理な進軍はしない」というあるじさんの運営方針に則り、中傷以上での進軍を極力避けてきた。早く強くなる、そして必ず無事に帰還する、という絶対条件をクリアするには、一点集中型の育成戦略を取らざるを得なかったのだ。そのことに関しては、あるじさんの性格をよく理解している男士の尽力やあるじさん自身の男士との交流もあってか、不満は上がっていない。
 けれど、経験によるレベル差が開いていることも事実。特に短刀は今まで遠征を中心に任されていた分、実戦の経験は十分とは言えない。そこで、まずは古参の短刀から集中的に育成をすることになった――というのがあるじさんと切国さんの話だ。

「では、これから今日の部隊編成と出陣メンバーを発表する。まず、遠征に向かう第三部隊から――」
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