日記
木花SS
2022/10/09 22:02カプ語り
3年ぶりに再会したそいつは、相変わらずのムカついた顔をしていたが、あろうことに俺のことを忘れていた。
「どういうつもりだよ?」
俺はそう訊いた。するとそいつはこう答えた。
「どうもこうもないさ。本当に忘れてただけなんだから」
「……」
「でも、仕方ないよな? だって俺にはもう新しい人生があるんだから。過去のことなんかどうでもいいんだよ」
その言葉に、俺は目の前が真っ暗になった。
それからのことは覚えていない。ただ気が付いたら、俺はそいつを殴っていた。
そいつの顔に傷がついたのを見て、ようやく自分がやってしまったことに気づいた。
「…もういいのか?」
咳き込みながらそいつは言った。
「みっともねぇザマだな」
「あー、お前のせいでな」
「……俺がだよ」
「…そうかもな」
少し考えるようにしてからそいつが答えた。
初めてちゃんと目が合った気がした。
「まぁ俺も言い過ぎたかもな。すまん」
「……そういう所がムカつくんだよ」
そいつは呆れたように小さく笑う。
「本当は過去がどうでもいいなんて思っちゃいないさ。勿論お前との事もな。
お前もそう思ってるんだろ?」
「……」
「確かにお前は過去の人で、俺は新しい人生の中にいるのは本当だ。そして今お前は俺の目の前にいる」
「お前から何か言ってくれないと始まらないんだよ、花宮」