SSたち!
7月。
今年は涼しいね、なんて言葉がとんだまやかしだったと実感している今日この頃…。
俺、佐々木奏ささき・かなでは、学内の掲示板の前で立ち尽くしていた。
というのも、右手に握りしめているこの紙切れは、先日行われた前期実技試験の結果…つまり、成績順位を俺に知らせる恐ろしい代物で、その記載内容によって俺は今、地獄の底に叩き落とされたかのような感覚に陥っているのである…。
正直に白状しよう、前期試験の結果は最悪だった。試験を受けた全員のうち、下から数えて片手の指に入ってしまう程度の最悪…。
実力が発揮できなくて~とか、調子が悪くて~とか、そういう要因による結果ならまだよかったのだが、いつも通りにいつも通りの実力を発揮した結果がこうなってしまうと、俺も露頭に迷ってしまうというものだ。
ここ、明鏡音楽大学は、ごく一般的な4年制の音楽大学だ。俺はこの春、ヴァイオリン専攻へ入学したピカピカの1年生。高校までは一般の普通科に通いながら、4歳の頃に始めたヴァイオリンのホームレッスンへ通っていた。
入学試験も何ら問題なく突破していたし、入学してからの授業にも問題なくついていけていたと、そう思うのだが…。
「はあ。ショックだ…」
大学へ入って新しく師事した先生も、長く通い続けている昔馴染みの先生も、口をそろえて、まあまだ1年生の前期だから、始まったばかりだから、と言ってくれたけれど、それにしたって…。これからよ、これから、という優しさが逆に傷口に染みる。
まもなく、晴れて長い長い大学生初の夏休みだというのにこんな気持ちにならなければならないなんて!成績公開スケジュールを恨めしく思う。…全面的に俺のせいだけど。
「そこの美しいお姉さん?一緒にお茶でも如何かな~?」
そう聞こえたかと思うと、両肩に適度な重さを感じる。気がついた時には、気さくすぎる男子が瞬く間に俺とマブダチのように肩を組んでいた。ちなみに知り合いなので心配は要りません。
「よ、佐々木~!お前な、なに湿気た面してんだよ…せっかくの麗しいお顔が台無しだぞ」
「えーっと…何その新しいタイプの冗談…。なんか、褒められてるのかどうなのかあんまりよくわからない…」
「褒めてるに決まってるだろ?」
そう笑顔を輝かせている彼は、朝井という男だ。実は、下の名前は知らない。大学に入って間もなく仲良くなった同級生で、座学も同じクラスになることが多かった為よく話す。確か、専攻はヴィオラだったかな?
「てか前期試験どうだった?結果貰ってきた?事務でもらえるらしいぞ」
「う…聞かないで…なにも…」
「あ~おっけい把握した…。まあとりあえず忘れてあそぼーぜ!せっかく夏休みになるんだし!」
とかいってカラカラと笑う彼は、それでいて、しっかりと上位10名に名を連ねているのだ。実技試験の上位者は貼り出され、全生徒へ公開される。俺は自分の成績を突き付けられた絶望の中、何の気なしに掲示を目の端に入れたところ、「朝井」の文字をハッキリと識別して俺は愕然としたものだった。
今年は涼しいね、なんて言葉がとんだまやかしだったと実感している今日この頃…。
俺、佐々木奏ささき・かなでは、学内の掲示板の前で立ち尽くしていた。
というのも、右手に握りしめているこの紙切れは、先日行われた前期実技試験の結果…つまり、成績順位を俺に知らせる恐ろしい代物で、その記載内容によって俺は今、地獄の底に叩き落とされたかのような感覚に陥っているのである…。
正直に白状しよう、前期試験の結果は最悪だった。試験を受けた全員のうち、下から数えて片手の指に入ってしまう程度の最悪…。
実力が発揮できなくて~とか、調子が悪くて~とか、そういう要因による結果ならまだよかったのだが、いつも通りにいつも通りの実力を発揮した結果がこうなってしまうと、俺も露頭に迷ってしまうというものだ。
ここ、明鏡音楽大学は、ごく一般的な4年制の音楽大学だ。俺はこの春、ヴァイオリン専攻へ入学したピカピカの1年生。高校までは一般の普通科に通いながら、4歳の頃に始めたヴァイオリンのホームレッスンへ通っていた。
入学試験も何ら問題なく突破していたし、入学してからの授業にも問題なくついていけていたと、そう思うのだが…。
「はあ。ショックだ…」
大学へ入って新しく師事した先生も、長く通い続けている昔馴染みの先生も、口をそろえて、まあまだ1年生の前期だから、始まったばかりだから、と言ってくれたけれど、それにしたって…。これからよ、これから、という優しさが逆に傷口に染みる。
まもなく、晴れて長い長い大学生初の夏休みだというのにこんな気持ちにならなければならないなんて!成績公開スケジュールを恨めしく思う。…全面的に俺のせいだけど。
「そこの美しいお姉さん?一緒にお茶でも如何かな~?」
そう聞こえたかと思うと、両肩に適度な重さを感じる。気がついた時には、気さくすぎる男子が瞬く間に俺とマブダチのように肩を組んでいた。ちなみに知り合いなので心配は要りません。
「よ、佐々木~!お前な、なに湿気た面してんだよ…せっかくの麗しいお顔が台無しだぞ」
「えーっと…何その新しいタイプの冗談…。なんか、褒められてるのかどうなのかあんまりよくわからない…」
「褒めてるに決まってるだろ?」
そう笑顔を輝かせている彼は、朝井という男だ。実は、下の名前は知らない。大学に入って間もなく仲良くなった同級生で、座学も同じクラスになることが多かった為よく話す。確か、専攻はヴィオラだったかな?
「てか前期試験どうだった?結果貰ってきた?事務でもらえるらしいぞ」
「う…聞かないで…なにも…」
「あ~おっけい把握した…。まあとりあえず忘れてあそぼーぜ!せっかく夏休みになるんだし!」
とかいってカラカラと笑う彼は、それでいて、しっかりと上位10名に名を連ねているのだ。実技試験の上位者は貼り出され、全生徒へ公開される。俺は自分の成績を突き付けられた絶望の中、何の気なしに掲示を目の端に入れたところ、「朝井」の文字をハッキリと識別して俺は愕然としたものだった。