短編
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「ありがとう助かったよ。ほら、お駄賃だ」
「鶴見中尉ありがとうございます!」
最近私は鶴見中尉のお手伝いをしてお金をもらっている。なぜこうなったかというと、鶴見中尉に父の日の話をしたことが切っ掛けだ。鶴見中尉と月島さんに何か作ってプレゼントすると言うと、それなら鶴見中尉が出資すると言うのだ。鶴見中尉にプレゼントするものを鶴見中尉からお金をもらって買うなんてちょっと出来なかったのでお断りしたところ、お手伝いしてお駄賃を渡す方法なら良いだろうとなったのだ。それもどうかと思ったが、それ以外は許可しないと言われてしまえば受け入れるしかなかった。
「もうすぐ父の日なのだろう?楽しみにしているよ」
「はい。鶴見中尉に喜んでもらえるように頑張って準備しますね!」
「手伝いは今日まででいい。ゆっくり準備すると良い」
鶴見中尉はとても優しい。お手伝いしてお駄賃をくれただけでなく、準備の時間も考えてくれるなんて。そういえば、私はこの時代のお金の価値がいまいち分かっていない。一銭でどれくらいのものが買えるのか鯉登少尉に聞こうと思い探していると、意外とすぐに見つかった。
「鯉登少尉!」
「☆☆か、そろそろ鶴見中尉殿から頂いた給金も貯まっただろう?私が非番のときに贈り物を買いに行くぞ」
「えっ、本気だったんですか?」
「当たり前だ、鶴見中尉殿からの給金だけで買う気か?私が一緒に買えばもっと良いものを贈ることが出来るんだぞ」
本気でしたか。
最近鶴見中尉のお手伝いをしていたから、鯉登少尉に理由を聞かれて父の日のことを話したのだ。そしたら鯉登少尉も一緒にプレゼントすると言い出し、まったく引かないので連名でプレゼントすることになった。そのあとは音沙汰なかったので一人で買うのかと思っていた。
「わかりました。私この時代のお金の価値があまり分かってないので、当日はよろしくお願いします」
「ああ、分かっている。貴様が理解してるなどと思っておらん」
一言多いところが鯉登少尉らしい。
今日は鯉登少尉とプレゼントを買う日だ。いつも通り玉井班のみんなと朝ごはんを食べていると、食堂まで鯉登少尉が来てしまった。
「☆☆、何をしている。早く出掛けるぞ」
「鯉登少尉、私いまご飯食べてるの見えませんか?」
鯉登少尉はせっかちさんなのかもしれないけど、ご飯くらい食べさせてほしい。
「何を買うか吟味せねばならんのだぞ。時間がいくらあっても足りん」
「はあ、わかりましたよ。行きますよ」
まだご飯食べ終わってなかったのに。途中でお腹すいたら絶対おごってもらうんだから。
「おい、食い終わってねえんだろ?盆は置いていけ、俺が食う」
お盆を持って立ち上がろうとすると、尾形さんに止められた。尾形さんも勿体ないと思ったんですね。私も思います。
「その椎茸は食ってから行けよ」
「わかってますよ。約束ですからね」
隣の尾形さんと小声でやり取りし、煮物に入っている椎茸をちゃんと食べてから立ち上がる。私の楽しみである玉井班のみんなとの交流、朝は諦めよう。
「尾形さんあとはお願いしますね。晩ごはんはみんなと一緒に食べられるようにするからね!」
みんなにそう言い残して兵営を出た。それが朝だ。あれからああでもない、こうでもないとやり取りしいまは昼を過ぎた。お腹すいた。
鯉登少尉は鶴見中尉に高価なものをあげたいらしく、どうせなら懐中時計にしようかと言い出したこともあった。でも鶴見中尉ならお気に入りのものを持ってるかもしれないからと違うものを探すことになった。
「とりあえず食事にするか、何を食べたい」
「どういうのがあるかわからないので、鯉登少尉にお任せします」
「では西洋料理店に行くか。良いものを食べさせてやる」
鯉登少尉についていくと、煉瓦積みのお洒落なお店に着いた。けっこう混んでいるので人気のお店なのかもしれない。
「☆☆、食べるものは私に任せてもらっていいか?」
「いいですよ、お願いします」
店員さんを呼ぶと、小声で注文している。これは驚かせようとしてるのかな。何が出てくるのか楽しみだ。
「お待たせしました。ビーフシチューです」
「ああ、ありがとう」
とても良い匂いを漂わせたお皿が目の前に置かれる。頼んでくれていたのはビーフシチューだったんですね。とても美味しそうだ。
「旨いから食べてみると良い」
「はい、いただきます!」
すっごく美味しい!長時間煮込んでいるのかお肉がとても柔らかい。ああ、幸せな味がする……。
「鯉登少尉、すごく美味しいです!」
「ふふん、そうだろう。だがこれで終わりではない。楽しみにしていろ」
鯉登少尉に言われた通り楽しみにしながらビーフシチューを食べ終わると、次に出てきたのはパンケーキだった。明治でパンケーキが食べられるなんてとても嬉しい。
「パンケークだ。☆☆は甘味が好きだからこれも好きだろうと思ってな」
「私これ大好きなんです!ありがとうございます!」
鯉登少尉によるとパンケーキは外国人居留地や政財界人向けの食べ物で、まだ市民には提供されていないらしい。このお店は高級店らしく、パンケーキも最近メニューに加わったそうだ。
プレゼントを何にするか話ながら二人ともパンケーキを食べ終えた。今度一緒に出掛けるときはアイスクリームを食べさせてくれると言ってくれた。鯉登少尉ありがとうございます。
「鶴見中尉殿に贈るものが決まったからあとはすぐ決まる。月島といえばあれしかないからな」
そのまま二人のプレゼントを買って、花園公園の和菓子屋さんでお団子を買って兵営に戻った。
鯉登少尉に鶴見中尉からもらったお金を見せたときこんなに頂いたのかと文句を言われたので、お高いものを選んだ。たくさん貰っていたのに安いものを渡すわけにはいかないもんね。
「鶴見中尉、ただいま戻りました!父の日のプレゼント受け取ってください!」
「おや☆☆くん、おかえり。待っていたよ」
立ち上がり両腕を広げて言われたので、そのまま鶴見中尉の胸に飛び込んだ。後ろから鯉登少尉の叫び声も聞こえた。すごく大きい声だった。
「ウンウン、こんなに優しい娘を持ってお父さんは嬉しいよ」
「鶴見中尉、優しい息子もいますよ!私の後ろ見てください!」
私があとで鯉登少尉に怒られちゃうよ!
鶴見中尉に頭をなでなでされたあと解放されたので、鯉登少尉と一緒に選んだプレゼントを渡した。
「万年筆なんですけど、鶴見中尉書き物多いからどうかなって」
「鯉登少尉と選んだのかな?」
「はい、二人で決めました」
「そうかそうか、二人ともありがとう」
鶴見中尉に私はまた頭を撫でられ、鯉登少尉は肩をぽんぽんされていた。鯉登少尉は興奮しているのか何かよくわからないことを話していた。お団子も一緒に渡したので、鶴見中尉の執務室を退出した。喜んでくれて良かった。
次は月島さんだ。鯉登少尉によるとやっぱり執務室だそうだ。
「月島さん!父の日のプレゼント受け取ってください!」
「俺は父親になったことはないぞ。せめて兄にしてくれ」
「基お兄ちゃんいつもお世話してくれてありがとう!感謝の気持ちなので受け取ってください!」
鯉登少尉がしらっとした目で見ている。だって月島さんがお父さんじゃやだって言うから……。
「わかった受け取る、受け取るからそれはやめてくれ。俺が悪いことをしてる気がしてくる」
「そんな事ないですよ。私月島さん大好きだから大丈夫です。これ石鹸です。良いのと普段使いできるの両方入ってます。いっぱいありますよ!」
「月島は風呂が好きだからな、思う存分使ってくれ。あと月島の分の団子だ。受け取れ」
「鯉登少尉殿、ありがとうございます」
「月島さん、これもどうぞ。肩たたきとお手伝い券、どっちも使用回数無制限で無期限です!どうぞ!」
返されないように鯉登少尉の手を引っ張って急いで部屋を出た。私に出来ることはあまりないからこれくらいは受け取ってほしい。
「☆☆、あんな無制限で使えるもの渡して良かったのか?」
「はい、月島さんなら大丈夫です」
「ふん、なら私からも駄賃をやろう。鶴見中尉殿に贈り物ができた礼だ」
またお金をもらってしまった。鯉登少尉にできるお礼ってなんだろう?お金は無理だし、そもそもお金持ちだし。鶴見中尉の素晴らしいところを一緒に語り合うくらいしかできないかな。あとは小間使いとか。
「私こんなにもらってもお返し良いもの選べるかわからないし、出来ることもあまりないしで役に立たないですよ?」
「何を馬鹿なことを言っている。お前はそのままでいれば良い。余計なことを考えるな。素直に受け取れば良いのだ」
「……わかりました!じゃあ今度は玉井班のみんなにお礼するのに使います!」
そのまま頭を下げお礼を言い、食堂に走った。一緒に食べるって玉井班のみんなと約束したもんね!
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「あの馬鹿、また自分のためでなく他のやつに使うのか」
やはり現金で渡すのは駄目だ。直接買ってやらんと☆☆のものじゃなく他のやつのものになってしまう。
今度また一緒に出掛けよう。そのときに☆☆のものを買ってやる。何が良いだろうか、着物や装飾品を買ってやるのも良いかもしれない。綺麗に着飾ってやるのも楽しそうだ。
出掛けるのはいつがいいか。まあいつでも行けるか、アイスクリンを食べさせてやると約束したからな。
2019/6/19