短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「月島さん!指相撲してください!」
「また突然どうしたんだ」
俺はあまり暇じゃないんだぞ。遊んでほしいなら暇そうな一等卒に相手してもらえ、と言いたいところだが世話役だから多少のことは仕方がない。
「聞いてくださいよ!指相撲勝ったら甘いもの買ってくれるって言うんでやったんですけど、誰にも勝てなかったんです!」
「お前が勝てるわけがないだろう」
「そうなんですよ!だからみんなは始まってから三十秒動かないって決まりだったんですけど、全然駄目で」
「谷垣や三島あたりなら負けてくれそうだが」
「尾形さんがわざと負けそうな人は駄目だって言って外しちゃったんですよ!」
尾形のやつ完全に遊んでるな。
あいつが言ったんじゃ一等卒はなにも言えんし仕方がない。それに☆☆を負かせばムキになって対戦相手を探すから、対戦相手は手を握れる。☆☆は兵たちに人気はあるが、鶴見中尉が可愛がっているから迂闊に近寄れない。今回のは良い機会だったのだろう。尾形にすればムキになる☆☆をからかって遊んでたんだろう。だから負けてやるやつじゃ面白くないと。
「甘味なら鶴見中尉殿から頂いているだろう」
「だって働けないから自分で買ったことないし、指相撲で勝てば戦利品みたいな感じで買い物っぽくなるかなって」
つまり自分で働き、その給金で甘味を買いたいと。
しかし、鶴見中尉は☆☆を働かせるのを嫌がるだろうから無理だ。まあ気分が味わえればいいならなんとかなるか。
「月島さん月島さん、早く指相撲しましょうよ」
「やってもお前が負けるだけだぞ」
「わかってますけど、みんなとやったからせっかくだし月島さんとも指相撲やりたいです」
「はあ、仕方がない」
近くの机に向かい合わせで座る。☆☆の手を握り、親指を向かい合わせた。改めて手の大きさの違いがよく分かる。こうも小さいとかわいいと思う。ほかのやつらも手を握ってみたかったのだろう。こんな男所帯だと女の手を握る機会もあまりないからな。今回は目をつぶってやるか。
「月島さん三十秒動かないでくださいね?」
「ああ、わかってる」
「じゃあ始めっ」
一瞬名前を呼ばれたのかと思った。俺としたことが、少し動揺した。顔には出さないが。
☆☆は勝とうと必死で指を動かしているが、ただ撫でられてるようなものだ。これはみな相手したがっただろう。
負けてやってもいいのだが、そうするとほかの負けてやりそうなやつを探す可能性がある。いや勝っても同じことだな。
「☆☆、そろそろだぞ」
「わかってますよ!月島さんの親指全然動かない~!」
「ほら時間だぞ。俺の勝ちだな」
☆☆の親指を上から抑える。これで俺の勝ちだ。
「あ~月島さんにも負けた~。もうこうなったら隠れて谷垣さんにお願いしてこようかな」
「☆☆、十分ほどでいい。俺の肩たたきをしてくれないか?」
「え~どうしたんですか?月島さんがそんな事言うなんて珍しいですね。良いですよ、いつもお世話になってますから」
☆☆は俺の後ろに回り込み、肩たたきを始めた。色々と話したが、一つ問題があった。どの兵かはわからないが、☆☆を茶屋に誘ったやつがいるようだ。しかも複数ときた。これは注意しなければならない内容だ。誰が言ったか分かればしごいてやるからな。
「☆☆、もういいぞ。ありがとうな」
「良いですよ。月島さんいつも忙しそうだし、出来そうなことがあったら言ってください」
「ああ、今度からそうする。ほら肩たたきの駄賃だ。甘味を買ってやる」
「えっ、ほんとですか!やった!月島さん大好き!」
こいつは安易にこういうことを言う。誰にでも言ってるんじゃないかと疑りたくなる。
まあ甘味でこれだけ喜んでくれると嬉しいものだ。鶴見中尉が可愛がっているのも頷ける。だが、ほかのやつらのところに行かれては困るからよく言って聞かせなければいけない。欲しいものがあるならまず俺に言うようにと。
2019/5/28
1/16ページ