短編
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「誕生日は何のためにあると思う? 」
「いや、いきなり何の話? 」
「俺が聞いてんのに質問で返すんじゃねえよ」
お昼休みになり、今日は何を食べようかなと考えていれば、良い店があるから付き合えと同期の尾形に連れてこられた。
外観も店内も和の趣がある落ち着いた雰囲気だ。お米にこだわりを持っているお店らしく、週ごとにお米が変わるという。以前、月島さんに連れてきてもらってから贔屓にしているそうだ。たしかに魚料理もお米もおいしく、ご飯もおかわりできるみたいなので、味にうるさい尾形が気に入るのもよくわかる。
尾形がおすすめだというのでヒラメの煮付けをおかずに選んだところ、脂がのっていて箸が進んでしまった。美味しさのあまりにおひつのおかわりをしてしまったところで、体重の心配をしてしまうものの、美味しいものは仕方がないと自分に甘めの判断を下すのだ。
幸せな気持ちで食を堪能していると、突然尾形は訳のわからない話題を提供してくる。
「誕生日が何のためにあるかって? やっぱ、祝うためと歳を数えるときの区切りじゃないの? 」
「年齢はそうだな。だが、二十歳超えたらいちいち祝わなくても良くなってこないか? おっさんになってくると余計にそう思う」
「まだおっさんっていう歳でもないでしょ。ていうか同期なんだから私も被弾するからやめてくれない? 」
「ははっ、いいじゃねえか、社会人になって気がつけばってやつだ。」
「うるさいよ、無駄にモテるからって私に余計な一撃をよこさないで。そんなこと言ってくるなら、もうご飯付き合ってあげないからね」
尾形がご飯付き合えって言うから、女子社員の視線が少し痛いなか来てあげたのに。そんな嫌味言われるなら来ないほうがよかったじゃないか。
不満ですという態度を隠さずにいれば、よくする髪を手で撫でる仕草をする。彼がこういう動作をするときは、たいがい失敗したときや、気を落ち着けたいときなどが多い。あとは成績がよかったなど嬉しいときだ。
「わかったわかった、それじゃあ話を戻そう。他人はどうだ? 例えばたまたま知り合ったその日に、実は今日が誕生日なんだと言われたら? 」
「え、別にそうなんですか~って言って、おめでとうございます~って言うね」
「なら知り合いは? 」
「知り合いだったら、おめでとうございますって言って後日何かプレゼントするかな」
「じゃあ友人」
「なんなのこれ、取り調べみたいなんだけど」
「いいから答えろ」
「はいはい、友達だったら何でもっと早く教えてくれなかったの! って言って、おめでとう言って、後日ご飯一緒に食べてプレゼント渡します」
尋問を受けているような問いの連続が続いたかと思えば、尾形は目線を下げ定食を見つめている。何か考えているようだ。
尾形は綺麗に食べるので、残った魚の骨と皮も綺麗に端に避けられている。口は悪いところがあるけれど、こういうところを見ると品が良いのだろうと思ったりする。
さっき話しているときに持ってきてもらったご飯のおかわりをだし汁とお魚でお茶漬けにして食べていれば、考えがまとまったのだろう尾形が口を開いた。
「実は今日、俺の誕生日なんだ」
「そうなの? おめでとう」
それなりに長い付き合いだけど、そういえば尾形の誕生日がいつかは知らなかったなあ。
「俺とお前は知り合いではあるよな」
「そうだね」
「しかも同期で付き合いも長いから友人と言っても過言じゃない」
「まあそうかな」
「じゃあ空いてる日教えろ」
いきなりのお誘いに目を丸くして固まってしまった。
「お前が言ったんだぜ、友人は後日一緒にメシ食ってプレゼント渡すって。俺は友人枠なんだろ? だったらいいだろ」
「たしかに言ったね。うーん、じゃあ来週か再来週でいい? 良さそうなプレゼント買ってくるからさ」
「俺はいつでもいい」
「それじゃあ、買ったら連絡するよ。そしたら日にち決めよう」
このあとの尾形おたおめお食事会で、なぜか私もプレゼントをもらい、休日もご飯を食べに行く仲になる。そしていつの間にか付き合いが始まり結婚までたどり着いてしまうのだ。
ちなみにあの嫌味だと思った失言は、尾形的には俺がもらってやるという方向に持って行きたかったらしい。
2024/1/22
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