これからともに
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揺さぶられている感覚に目を開くと、アシリパちゃんが私の顔を覗いているのが目に入った。
「☆☆、尾形起きろ。もう太陽が昇っているぞ。体調が悪いのか?」
「えっ?今何時……、八時じゃん!やばい寝坊した!」
目覚ましかけたのになんで!?あっ電池外れてる……。百ちゃんか。うるさかったから外して寝たのね。
たしか喉が渇いて台所で水を飲んだあと、杉元さんと会った。トイレに行きたいと言われ、使い方を教えたのだ。トイレの使い方を教え忘れるなんてひどいことをしてしまった。杉元さんに平謝りして部屋に戻り、タイマーを待ってられずエアコンを入れてまた寝たからスヤスヤ寝てしまった。なんという失態。
「ごめんねアシリパちゃん、すぐ起きるから。百ちゃん起きて!ていうかとりあえず離して!」
百ちゃんに背を向けて寝たはずなのになんで向かい合ってるの?エアコン入れたときも背を向けてたはずなんだけど。
「まだ眠い……」
「百ちゃんはまだ寝ててもいいけど、私は起きないとご飯作れないよ」
もぞもぞと動いて起きるか葛藤しているようだ。百ちゃんご飯食べないの?と聞くと少し悩む様子を見せたあと、腕をほどいてくれた。
「尾形が起きてないなんて珍しいな」
「……寝心地が良かった」
「確かに、この布団はとても寝やすかった。ぐっすり眠れたぞ」
アシリパちゃんはベッドの上に座ったまま百ちゃんとお話している。ここでは着替えられないから服を持って洗面所に行かないと。
「私洗面所行ってくるね」
「ああ」
「私も部屋に戻る」
洗面所に入ってまずは服を着替えた。肌を見せるのははしたないとよく言われていたので、ロングスカートとトップスにした。洗面台に目を向けると歯ブラシがコップに二本入っている。あれ?もしかして百ちゃんお風呂あがりに探して使ったのかな。あっ、昨日みんなに歯ブラシ渡してないじゃん!そりゃ歯磨き出来ないから探すよ……。百ちゃん自分で探して使ったのか、アシリパちゃんと杉元さんと白石さんに申し訳ないことをした。朝ごはんのあとにちゃんと渡さないと。
顔を洗って、歯を磨いたので洗面所を出ようとドアを開けると誰か立っているのに気づいた。
「ッ、なんだ百ちゃんか、びっくりした。ごめん、洗面所空くの空くの待ってた?」
「そういうわけじゃないが、まあ使う」
「昨日はごめんね、歯ブラシ探させちゃって。私渡してなかったね」
「別に良い、ちょっと探したら見つかったから」
「ふふ、ありがとう。じゃあ私はご飯作ってくるね」
ちょっとわがままなところはあるけど、相変わらず優しい子だ。
さて、寝坊したことを杉元さんと白石さんに謝って早くご飯を作らないといけない。リビングに行くと三人で雑誌を見ているようだった。
「おはようございます杉元さん、白石さん。ごめんなさい寝坊しちゃって、これから急いでご飯作りますね」
「おはよう☆☆ちゃん。大丈夫、気にしなくていいよ」
「おっはよ~☆☆ちゃん、そうそう気にしなくていいよ」
「☆☆、急がなくて平気だぞ」
みんなすごく優しい。急いで作らないといけないから、また簡単なので申し訳ない。
ご飯はタイマーかけといたから炊けている。ちゃんと起きれるか不安でかけといたのだ。自分を信じなくて良かった。
昨日の残りの卵で卵焼きと簡単豆腐ハンバーグとおにぎりを作った。あとは常備菜として作っておいたきんぴらごぼうを出そう。アシリパちゃんのお腹が鳴っているのが聞こえたのでとても急いで作った。
「ご飯できましたよ」
「もう出来たのか、私も運ぶの手伝うぞ」
「俺も手伝う」
アシリパちゃんと杉元さんが運んでくれているので、私はお茶を入れよう。冷蔵庫からお茶を出して
コップに入れ、お箸と一緒にテーブルに持っていった。
「わーい、今日も白米食べられる!」
「ふふ、いっぱい食べても大丈夫ですよ。おにぎりは塩にぎりとおかかです」
みんな「いただきます」と言って食べ始めた。アシリパちゃんは「ヒンナヒンナ」と食べている。やっぱり一人で食べるよりおいしい。
「ご飯食べ終わったら買い出しに行こうと思ってるんですけど、一緒に行きますか?」
「いいのか?なら私も一緒に行きたい」
「俺も行くよ」
「俺も行く~」
一人だけ返事がない。百ちゃん眠そうだったから今日は家にいるのかな?外は暑いからそれも良いと思う。
「百ちゃんはお留守番するの?」
「何言ってるんだよ、俺は☆☆が来なくて良いって言っても一緒に行く」
行くことが確定してたから、言うまでもなかったってことですね。
「杉元、白石、お前ら買い出し行く前に風呂入ってけよ」
「は?なんでだよ」
「この時代の人間は毎日風呂に入るんだ。外に出るんだからお前らも臭いを落としとけ」
お風呂入るなら沸かしたほうがいいかな。せっかく入るならシャワーだけより湯船に浸かりたいかもしれない。
「じゃあお風呂沸かしとくね」
「いや、大丈夫だ。これから出掛けるんだから、ゆっくり風呂に入る必要はねえだろう。シャワーで十分だ」
「相変わらず尾形ちゃんは俺たちに優しくないよね~」
「じゃあ、帰ってきたらお風呂沸かしますよ。夏なのですぐ汗かいちゃうだろうし」
近年の夏の暑さときたら凄まじいものがある。服装からしてみんなは冬から現代の猛暑の夏に来てしまったようだから、みんなの体調に気を付けないといけない。
そういえばアシリパちゃんはお風呂はいいのだろうか?
「アシリパちゃんもお風呂入る?」
「アイヌには風呂に浸かる習慣がない。だから私は風呂には入らない」
「そうなんだ。じゃあ、水浴びしたいとか思ったら言ってね。外すごく暑いから汗かいちゃうと思うんだ」
「わかった」
私がこれからするべきことは、杉元さんと白石さんにシャワーの使い方を教えること、みんなの服装をなるべく薄着にすること、レンタカーで車を借りてくることだ。
「ていうか☆☆ちゃんが作るご飯すっごくおいしいね!おれ毎日食べたい!」
「ふふ、ほんとですか?お世辞でも嬉しいです」
「ほんとだって~、ねえ杉元?」
「本当においしいよ☆☆ちゃん。いっぱい食べさせてもらって申し訳ないくらいだよ」
「ヒンナだから心配しなくて大丈夫だぞ、☆☆」
こうも誉められると照れてしまう。みんなたくさん食べてくれて嬉しい限りだ。一人で食べると味気ないからみんなで食べるのはとても楽しい。
「ごちそうさまでした」
百ちゃんが食べ終わったようだ。今日も食べるの早いね。百ちゃんは訴えかけるようにこちらをじっと見つめている。いつものですね、わかってるわかってる。
「たくさん食べてくれてありがとう」
頭を撫でながら言うと、当然だという顔をしている。そうだね、お腹いっぱいになるまで食べてくれてたもんね。
「☆☆ちゃん!俺もごちそうさま!いっぱい食べたよ!」
「はい、白石さんありがとうございます」
頭をなでなでして言っていると、隣の和室からまた何か落ちる音がした。あれ、今回人多いですね?物音がしないけど、どうしたんだろう。またいきなり首絞められたらどうしようかな。白石さんの頭に手を乗せたまま固まっていると、百ちゃんと杉元さんが静かに立ち上がり警戒している。すると引き戸が開き、白人男性が立っていた。百ちゃんのあとに来た外国人ってことはもしかするのかな。
「なんでここに露助がいるんだ!!」
「Я хотел встретиться ▲▲!(会いたかった☆☆!)」
「待って杉元さん!たぶんその人知ってる人!」
この人私の名前呼んだよね?ってことはやっぱりそうなのか。
「もしかしてヴァーシャ?」
「Ты помнишь!(覚えていてくれたのか!)
何か話しかけられると抱きしめられた。そして頬にキスされた。ヴァーシャで合ってたのかな?ていうかめっちゃちゅっちゅされてる!お願いだから離してください!恥ずか死ぬ。
「ヴァーシャ!だめでしょ!めっ!」
つい子供のときのように叱っていると、ヴァーシャの体が少し離れた。百ちゃんがヴァーシャの襟を引っ張っているようだ。
それでもまだ離れないとくっつこうとするヴァ―シャの背中をぽんぽんしていれば、少し落ち着いたのか百ちゃんと話し始めた。
「ヴァシリ、なにやってる」
「ひゃく、あいさつと、わたし▲▲すきつたえる」
「今、☆☆に駄目だと言われた。離れろ」
「▲▲、だめか?」
「駄目だ」
「なんでひゃくいう」
ちょっとした言い合いが始まってしまった。さてどうしたものか。
「し、白石が二人いる……。顔がそっくりだ」
「いやよく見てみろ杉元、今来たやつのほうが目がキリッとしているぞ。ニホンシライシとの違いだな」
二人ともヴァーシャに興味があるようだ。そりゃそうだよね、いきなり外国人が来たらびっくりしちゃうよね。白石さんは……、あっまだ頭に私の手を乗せたままだった。ごめんなさい、いま手を離しますね。
「そもそもお前なんで来たんだ。今回は杉元たちがお前の代わりだと思ったのに」
「なにいってる?よくわからない」
「なんでもない。とにかく☆☆から離れろ。☆☆が動けないだろう」
「▲▲、わたしくっついたらだめ?」
「うーん、そうだね。動けないから離れてほしいかな」
「わかった……」
ヴァーシャは座ったまま、渋々といった感じで離してくれた。改めて見るとヴァーシャ大きいな。子供のころと比べるとゴツくもなった。二人とも大人になったんだとさらに実感しちゃうね。
「紹介します。この人はヴァシリと言って、昔百ちゃんと私と一緒に生活してました。なので危ない人じゃないです」
「ひゃく、かれらはだれ?」
「危険なやつらじゃない、心配するな」
百ちゃんがヴァーシャに杉元さんたちを紹介している。ちょいちょい喧嘩するけど気は合うようだった。二人とも謝りはしないけど、いつの間にかいつも通り接していたのを思い出す。百ちゃんもヴァーシャもとてもかわいかった。
「これからみんなで買い出しに行くけど、ヴァーシャも行く?」
「いく」
「ならこいつも風呂入れるか」
時間がなくなるからと百ちゃんがみんなに歯磨きとシャワーの使い方を教えてくれた。私は先に歯磨きさせてもらったあと朝ごはんの後片付けだ。ヴァーシャは私の手伝いをすると言ってお皿拭いてしまってくれた。
「▲▲、ひゃくはいつきた?」
「昨日だよ」
「かれらは?」
「杉元さんたちも昨日だよ」
「またわたしおそい。ずるい」
「ずるくない」
「ずるい。わたしいないと、ひゃく▲▲とる」
「ずるくない。お前はくっつきすぎだ」
戻ってきた百ちゃんとヴァーシャがまた言い合いを始めてしまった。仕方ないから少しほっとこう。
アシリパちゃんと白石さんも戻ってきたから歯磨き終わったんだね。杉元さんはシャワー中かな。
「尾形ちゃんが子供みたいに言い合ってるなんて珍しいね」
「杉元とも言い合いするぞ」
「なんかちょっと信用してる感あるからさ~」
静かに言い合いする二人を座って眺めていると二人と目があった。
「▲▲、かいものなにでいく?」
「えっ買い物?車の予定だけど」
「全員入らなくないか?」
「とりあえず今回は大きい車借りてくるよ」
「なら先に借りてきたらいい」
「えっ、お風呂使ってるのに行ってこれないよ。危ないもん」
私がいない間に何かあったら大変だ。そんな危険なことしたくない。
「大丈夫だろ、だいたい思い出してきたし。そもそも誰でも使えるようになってるんだろ?」
「まあそうだけど……」
「▲▲、わたしとひゃくいればへいき」
私の意見が通りそうにない。しかも時間もないから言い合ってる場合でもない。これは諦めるしかないか……。
「ほんとに大丈夫?」
「俺たちは経験したことあるんだ。問題ない」
結局押しきられてしまったので、電話の使い方を教えてレンタカー店に行くことになった。アシリパちゃんと白石さんにも電話の使い方を教えた。お店までそこまで距離があるわけでもないから、さっさと行ってこよう。
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「ひゃく、かれらに▲▲とられない?」
「たぶん大丈夫だ。俺たちに接するより距離がある。このままなら問題ない」
「よくわからなかった。かんたんにいって」
「俺たちと話す時間が多ければ平気だ」
「そうか、わかった。」
ヴァシリは素直に「▲▲、かいものなにでいく?」と話しかけに行った。本当は俺一人で☆☆を独占したいが仕方ない。今は仲良くするさ、別に嫌いじゃないからな。おそらく三人で寝ることになるのが残念だが、☆☆姉さんがいるんだから我慢するか。連れて帰ったあと、場合によっては共有する形になるかもしれないが、なるべく独り占め出来るようにしよう。
2019/6/12