唯一の人
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「貴様、今なんといった…」
男は刃を再び下げる。面食らったのか、鋭い目が少し丸くなる。
その彼の瞳をまっすぐ見返す。ここで目を逸らしてしまっては自分の宣言を嘘と捉えてしまわれると考えたからだ。
「貴様が、脆弱なる女ごときが私の部下になって何ができる。」
「なんでも…なんでも!!!します!!貴方にお仕えできるなら何でもします!!用がなければこの首すぐに落としてください!!信用ならなければこの命すぐ差し上げます!!ですから、…お願いします…」
今まで学校の面接でもこんなに頭を下げたことはないぞ。そのくらい深々と頭をさげた。これでダメなら土下座でもなんでもしてやろう。彼の部下になって、私は変わりたいんだ。
すぐに命を投げ出せるような存在から、価値のある、命を惜しいと思えるような存在に。
彼は黙り込んで私の頭を凝視しているようだった。後ろの従者らしき男は何か思案しているのか、先ほどから何も言わない。
「おい、貴様」
「は、はい!!」
勢いよく頭をあげる。するとそこには先ほどのような眼光の鋭い彼はいなかった。
やはり目つきは悪いが、そこに敵意を感じる事はない。
変わらない目の美しさに見入っていると彼が言葉を続ける。
「名を何という」
「な、名前…ですか…?」
「答えろ」
「…いと…といいます…」
「いと、貴様は今日から私の配下だ。刑部、異存はないな」
「…あい分かった。ヌシの言い出すことはまっこと予想できんわ。まァその女子(おなご)に何かできるとは思わぬワ。やもやあの絆を謳う東照殿が戦えぬ女子を密偵として送り出す事もなかろ。」
``東照殿``、その単語を彼が聞いた瞬間、ピクリと眉が動いた。
元々よっていた眉間のしわをさらに寄せ、不愉快そうに舌打ちする。そこまで嫌われている``東照殿``とやらが少し気になるがここで下手な事を言うと間違いなく首が飛ぶ、そう私の第六感が告げていた。
なにやらとんとん拍子で進んでいった就活だが、見事内定を頂けたようだ。
ほっと胸をなでおろすのもつかの間、目の前にいた彼が手首を強く掴んできた。
「いっ、たぃ…」
「いと、私は裏切りをひどく憎む…貴様がもし私に背いたと分かれば貴様の望み通り、その場で断罪してやる」
「は、はい…!分かりましたから…手を…!」
ふん、とつぶやくと掴んでいた手を離される。
あれだけ刀を扱える人なんだから力が強いのは分かっていたが、ここまでとは思わなかった。手首が今でもジンジンする。
赤黒く跡が残った手首を片手で擦る。跡が残りそうだな。
「して三成よ。こやつを雇って何をさせる?刀は…ろくに扱えるようぬ見えぬが、飯炊きでもさせるか?女中は足りておるぞ」
「好きに采配しろ。貴様に任せる」
「ふむ…ヌシのそれにも慣れたわ。あい、分かった。決まればヌシに知らせるとしよ」
担当部署はまだ決まりそうにもないが、これでやっと一歩踏み出せた。
話し込む二人に向かい、もう一度深々とお辞儀をする。
「これからよろしくお願いいたします!」
死にたがりの私から変わるために、自分の価値を見つけるために。
男は刃を再び下げる。面食らったのか、鋭い目が少し丸くなる。
その彼の瞳をまっすぐ見返す。ここで目を逸らしてしまっては自分の宣言を嘘と捉えてしまわれると考えたからだ。
「貴様が、脆弱なる女ごときが私の部下になって何ができる。」
「なんでも…なんでも!!!します!!貴方にお仕えできるなら何でもします!!用がなければこの首すぐに落としてください!!信用ならなければこの命すぐ差し上げます!!ですから、…お願いします…」
今まで学校の面接でもこんなに頭を下げたことはないぞ。そのくらい深々と頭をさげた。これでダメなら土下座でもなんでもしてやろう。彼の部下になって、私は変わりたいんだ。
すぐに命を投げ出せるような存在から、価値のある、命を惜しいと思えるような存在に。
彼は黙り込んで私の頭を凝視しているようだった。後ろの従者らしき男は何か思案しているのか、先ほどから何も言わない。
「おい、貴様」
「は、はい!!」
勢いよく頭をあげる。するとそこには先ほどのような眼光の鋭い彼はいなかった。
やはり目つきは悪いが、そこに敵意を感じる事はない。
変わらない目の美しさに見入っていると彼が言葉を続ける。
「名を何という」
「な、名前…ですか…?」
「答えろ」
「…いと…といいます…」
「いと、貴様は今日から私の配下だ。刑部、異存はないな」
「…あい分かった。ヌシの言い出すことはまっこと予想できんわ。まァその女子(おなご)に何かできるとは思わぬワ。やもやあの絆を謳う東照殿が戦えぬ女子を密偵として送り出す事もなかろ。」
``東照殿``、その単語を彼が聞いた瞬間、ピクリと眉が動いた。
元々よっていた眉間のしわをさらに寄せ、不愉快そうに舌打ちする。そこまで嫌われている``東照殿``とやらが少し気になるがここで下手な事を言うと間違いなく首が飛ぶ、そう私の第六感が告げていた。
なにやらとんとん拍子で進んでいった就活だが、見事内定を頂けたようだ。
ほっと胸をなでおろすのもつかの間、目の前にいた彼が手首を強く掴んできた。
「いっ、たぃ…」
「いと、私は裏切りをひどく憎む…貴様がもし私に背いたと分かれば貴様の望み通り、その場で断罪してやる」
「は、はい…!分かりましたから…手を…!」
ふん、とつぶやくと掴んでいた手を離される。
あれだけ刀を扱える人なんだから力が強いのは分かっていたが、ここまでとは思わなかった。手首が今でもジンジンする。
赤黒く跡が残った手首を片手で擦る。跡が残りそうだな。
「して三成よ。こやつを雇って何をさせる?刀は…ろくに扱えるようぬ見えぬが、飯炊きでもさせるか?女中は足りておるぞ」
「好きに采配しろ。貴様に任せる」
「ふむ…ヌシのそれにも慣れたわ。あい、分かった。決まればヌシに知らせるとしよ」
担当部署はまだ決まりそうにもないが、これでやっと一歩踏み出せた。
話し込む二人に向かい、もう一度深々とお辞儀をする。
「これからよろしくお願いいたします!」
死にたがりの私から変わるために、自分の価値を見つけるために。
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