最強の敵
陵南高校バスケ部。
ある日の出来事である――
「集合だ!」
キャプテン、ビック純こと魚住は、部員達を呼び集めた。
「今日は倉庫の大掃除をやってもらう!」
「ええ……」
「掃除かよ」
「やだなぁ」
ブーイングの嵐。
「こぉら!これは田岡先生からの指示だっ」
魚住の雄叫びが響き渡った!
すると、池上が鋭い表情で尋ねる。
「おい魚住、倉庫っつったら、何年も掃除してないんじゃないのか?」
「……3年だ!」
魚住は、はらたいらさん以来の得意気な顔で応えた。
その後ろで、話を聞いていたのかいなかったのか、仙道が欠伸をこらえていた。
さあ、大掃除の始まりである。
倉庫の扉を開けると、3年間で蓄積された埃が、部員達を待ちかまえていた。
「うっ……すごい、臭いだ」
「さあて、それじゃここから……」
池上が奥にあるダンボールを動かした……その瞬間!
何かがシュッと、ものすごい早さで飛び出した。
それは、黒光りした……
特大の……
「ゴキブリだっ!!!」 (以下G)
池上は叫んだ。
そいつは、7,8センチはあるだろうか。今までみたことのない、巨大Gである。
「ふん、Gごときが。叩きのめしてくれるわ」
魚住の鼻息が一気に荒くなる。
「彦一ぃ!ホウキを持って来い!」
「は…はい~っ」
「よーし、一気にぶったたくぜ!」
と、負けん気の強い越野は、Gめがけてホウキを振り下ろした!
が、敵は素早くそれをかわすと、ものすごい勢いで走り出した。
は……はやいっ!
「くっそ~~~」
悔しがる越野。
「魚住さん、たのんますっ!」
キャプテン魚住にバトンタッチ。
さあ、猿とGの対決、これは見ものだ。
「ウホ~~!!」
魚住は名物の雄叫びをあげたが、それに驚いた敵は物陰に隠れてしまった。
全く逆効果であった。
カサッ……
「そこだ!池上~!」
柱の影から物音がした。
「ここは通させん!」
敵(G)は、長い触角をピクピクさせて、こちらをうかがっているではないか。
池上は定評のあるディフェンス力で立ち向かった。
右か!左か?
だがそのディフェンスも及ばず、敵は池上の足の間を抜けていった。
「ちくしょう!」
一目散に走り出す敵が向かう先……
「バカめ!そっちには天才がいるんだ!」
皆が一斉に叫ぶ。
「「仙道~たのんだ!」」
ん……?いない!どこへいったんだ!
なんと、天才は跳び箱の上で丸くなっていた。
「く……来るな……」
実は、仙道はGが大の苦手であった。
「わちゃ~わちゃ~」
それを見て勢いづいた、福田の鋭いモップ攻撃!
巨大Gに、少しはヒットしたようである。
「よくやった、福田!」
福田はプルプルと震えながら、もう一発。
「ほわちゃ~!!」
ブーーン。
たまらず敵は羽ばたいた!
「と、飛んだぞ~~!」
すると敵は、天才仙道の額に……
「¢£%#&☆~~!!」
「「せ、仙道が倒れたっ!」」
ピキーンと福田の瞳が光る。
(あの仙道を、一撃で倒す攻撃力……)
天才の額から降り立った敵は、扉に向かって一直線に走っていく!
「ドアを閉めろ!外に出させるな!」
「死守だ~~」
このまま脱出されてはたまらない。
だめだっ!
追いつけない!
その時、いきなりドアが開かれた。
……!!
「おお、掃除やっとるか」
茂一!!!
あっ……
グシャッ
闘いは、終わった。