Greeting



「お前ってさ、好きなヤツ、いる?」


陵南高校バスケ部に入部し1ヶ月。俺は、特待生でちやほやされてるコイツ、仙道彰が気にくわなかった。
質問は別に何でもよかった。ただ、いつも飄々としてる奴の、困った顔が見てみたかっただけ。

「なんで?」

いきなり聞き返されて、慌てた俺はいい加減な返事をしてしまう。

「い、いや、何となく」

その口尖らせたわざとらしい驚き顔、ムカつくぜ。

すると僅かな沈黙の後、応えは返ってきた。

「いるよ」

「……へ、へぇ。どんなヤツだよ」

「ふっ……」

なんで笑うんだよ。わけわかんねぇ。聞いたこっちが恥ずかしくなるじゃねえか。

「可愛いヤツ、だよ」

あっそ、いきなりおのろけかよ。

「強がりだけど、なんか危なっかしくてさ……ほっとけないんだよね」

「ふーん」

珍しくよく喋んじゃねえかよ。他人に興味なさそうな君が。

「付き合ってるんだろ?」

「いや」

意外な応えだ。

自分と同類だと分かった瞬間、一気に親近感が湧いてきた。

「何だよ、片思いってやつか」

「ま、そんなとこ」

ほほう、でかい図体して可愛いとこあんじゃねえかよ。

「まさか……一目惚れ、とか?」

「ぴんぽーん」

「あっははは、面白い奴」

似合わねー。その顔で「ぴんぽーん」なんて言うなよな。

相手が誰だか聞いておきたい所だが、お前の面白さに免じて今回はこのくらいにしといてやる。


この時俺は、ちょっとばかし仲良くしてやってもいいかなんて、思っちまったんだ。