第十七章 うつりゆくもの
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解散後、2階の私室にて――
「は? 私の昔のことを神無ちゃんに話した?」
「男が怖かった、ってことだけだけど。神無さん、気にして陸に訊きに来るかもだから言っておこうと思って」
「ふうん……」
テンパリ状態から脱した杏から聞かされたのは、さほど遠くない過去のこと。
(私の場合トラウマが治ったというか、忘れたっていう方が正しい。どうやって、なんて訊かれたらどうしようかな……)
「そもそも、何でその話になったの?」
「え? あ、あのーーなんとなくだよ」
「まあいいけど」
陸が追及してこなかったことに杏は胸を撫で下ろす。花嫁たちの口論の様子など、自分を心配してくれていた彼女に聞かせたくなどない。
「(私だって杏に言ってないことあるし。追及なんてできない)……にしてもさ、」
陸はゆるりと天井を仰ぐ。
「“昔”ってほど昔の話じゃないんだよね。……なんか嘘みたい」
「それは士都麻先輩の努力のたまものだよね」
「うん」
光晴の刻印がなかったらきっと、トラウマを持つこともなかった。でも、それを感じさせなくしたのもまた光晴だった。
「でも今回はちょっと反省してもらわないとだよね!」
「まあね。でもあの禁止令、いつまでやるつもり?」
「え? 決めてないよ」
「…………」
原因が向こうにあるのは確かだが、だんだん光晴のことが哀れに思えてきた陸だった。
(ごめん、光晴……)
「そういえば! 文化祭まであと2週間だけどさ、今年は一緒にまわれないかな?」
「いいよ。文化祭は2日間あるし、1日なら」
「ほんと?!」
ぱっと表情を明るくした杏に陸は微笑する。
「なに? やっぱり光晴に気ぃ遣うんじゃん」
「そりゃあね、去年は2日とも一緒にまわれて私は楽しかったよ。でもその時の士都麻先輩の気持ちを考えたら申し訳なかったし」
「?」
そんな他愛ない会話を楽しんでから、2人はゆっくりと眠りについた。