第十六章 花の名
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「女子寮――!?」
「水羽!」
「嫌だ」
「せやかて!」
「心配しなくても、お友達の部屋に泊まるだけなんですよ?」
「どうかしたんですか?」
夕飯時ということで食堂にやってきた陸と杏は、光晴と水羽の叫びに首を傾げた。
「神無ちゃんが、女子寮に行ってもうたんや!」
「なにか問題ある?」
「今日の朝教室で……神無が華鬼の花嫁だって言いふらされたんだ。本人に悪気はないんだろうけど、タイミングが最悪」
ざわり、と陸の表情が一変する。頭に浮かぶのは先程出会った少女。
「え、それってもしかして」
「たぶん。水羽、その人の名前は?」
同じ考えであろう杏に頷いて、水羽に向き直る。
「土佐塚桃子。神無の友達で、鬼の花嫁」
「知っとるんか? 二人とも」
「今日私たちが職棟に帰って来たときに会ったんです。神無さんの着替えを取りに来たとかで……」
「挨拶したくらいなんだけど……私にはあの子、神無ちゃんの友達に見えなかった」
本当に神無のことを想っているのであれば、花嫁であることを周りに安易に話すはずがない。自身も鬼の花嫁なら、尚更。
「とにかく、今の状況で神無が僕たちの手の届かない所にいるのは危険なんだ。でも、」
「女装は嫌じゃ!」
言って、光晴と水羽は項垂れる。やはり女装するしかない――と思ったその時だった。
「だったら、私が行きましょうか」
ピタリと皆の動きが止まって、声の主に注目する。
「女子寮暮らしの私なら、何の問題もないですよね?」
「杏!?」
「あかん! 杏ちゃんを巻き込むことはでけん」
「でも、士都麻先輩や水羽くんが女装して行ったら寮長からありがた~いお説教もらって終わりでしょうし、陸を行かせるわけにもいきませんよね? だったら、私が適任じゃないですか」
「せやけど、」
「……わかった。神無ちゃんはこの子ね」
「わ、寝顔の写メ? かわいー」
あっさり承諾し、今は携帯の画像を見せている陸に光晴は戸惑いを隠せない。
「陸! 杏ちゃんのこと心配やないんか?!」
「もちろん心配! でも杏の言ってることはなにも間違ってないし、それ以外の方法もないなら仕方ないじゃない」
「私なら大丈夫です。神無さんを連れ出せばいいんですよね」
「っ……わかった。水羽、ええな?」
「うん。杏、神無のことよろしくね」
「任せて!」