第十六章 花の名
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翌日、放課後――
「んーっ、今日も疲れたなあ。でも、美味しい料理が待ってると思えば明日も頑張れる!」
ぐっ、とガッツポーズをつくる杏に陸は嘆息する。
「もえぎさんの料理が目当てなわけ? だったら早く女子寮戻りなよ」
「ばれた? 女子寮のご飯って毎日どっかのパーティーみたいなバイキングだからつまんないんだもん。陸もいないしさ」
「最近私にこだわるね。何かあった?」
「私は普通! 陸が私をほっときすぎなんだよ」
「それはごめん」
杏の言う通りだ。夏休みが明けてから神無のことがあって、彼女との時間が格段に減った。
「いいよー、事情わかってるから。その代わり、もう何日か泊めてねっ」
「……りょーかい」
二人で談笑しつつ、職棟のドアを開けると――見慣れない少女がそこにいた。
「え」
「あっ、」
「誰?」
三人がそれぞれ驚きで固まる中、口を開いたのは陸の目の前の少女だった。
「えっと、先生の誰かの花嫁さんですか? あたし、神無の友達で土佐塚桃子っていいます」
「……神楽陸です」
「三浦杏です」
「神無、具合悪いみたいで……今日はあたしの部屋に泊まるんです。だから着替えを取りに来てて」
「……そ、ですか」
「じゃ、失礼します」
脇を通り過ぎて小さくなっていく桃子を陸は静かに見つめていた。
「陸、どうかした?」
「……あの子、花嫁だ……。なのに、神無ちゃんの友達?」
小さな違和感。そして、神無が女子寮に泊まるということの意味を、陸はわかっていなかった。