第十五章 複雑な心境
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差し出された右手に光晴、水羽、麗二が次々に鍵を落とした。
「誰を選んでも、花嫁が幸せになるんが一等嬉しい。せやから、こーゆうんはフェアにな?」
「いつでもおいで。言っとくけど、僕は誰にでも渡すってわけじゃないからね」
「耳が痛いですねえ。私は、これが最後ですから」
「――陸さん、私たちも」
「はい。神無ちゃん、手、そのままね」
ちゃり、と神無の手に更に三つの鍵が追加された。
「リボンがついてるのが4階の神無ちゃん専用部屋の鍵で、若葉のキーホルダーは1階のもえぎさんの部屋、クマのキーホルダーは2階の私の部屋の鍵だよ」
「「「え」」」
三翼がぎょっとした様子でもえぎと陸を見る。
「鬼は紳士的だからいらないと思ってたんですが、どうも必要そうだったので用心のために用意しておきました」
「も、もえぎさん?!」
「昨日みたいな話がなくっても、いつでも泊まりに来ていいからね」
「羊をみすみす、オオカミの中には置けませんので」
そう付け足したもえぎの背に、三翼は何やら黒いものが見えた気がした。
「いざとなったら鍵なんて壊してしまいますけど、意思表示のようなものですよ。鍵を渡すのは心を許してる相手だけ。その辺りは鬼も人と同じです」
「意思表示」
「ええ」
「でも……華鬼は使わないみたいです」
「鬼頭は以前からつかってませんね。……だから婚礼の晩に細工ができたんですが」
「鍵かかっとったら気い咎めるし、無理に開けることはせん。……鍵なんてあってないようなもんやけど、その辺はマナーやからな」
苦い顔をして言った光晴を見て、陸は少し顔を伏せ視線を逸らす。“鍵をかけた”のは――昨夜の自分だったから。
(神無ちゃんに鍵をあげるのはいいけど、タイミング最悪だったな。顔、見れないや)
ガチン、と鍵のかかったドアノブの音がしてからしばらく――光晴は、多分ずっとそこにいた。陸はその間、ずっとドアの側に居たからわかる。
(光晴……何も言わなかった)
「――さん、陸さん?」
「っ!あれ、神無ちゃんは……」
はっと我に返ると、もえぎが心配そうにこちらを見ていた。
「もう4階に」
「あ……。すみません、少し、ぼうっとしてました」
「どこか具合でも、」
「大丈夫ですよ。――さ、食べましょうか」
未だ浮かない顔のもえぎに陸はもう一度、『大丈夫です』と伝えてからテーブルの席に着いた。