第二十九章 黒に堕ちる
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「ちがう……」
「違わない。花嫁の色香は鬼の強さに比例する。強いんだよ。血なら、なおさら」
「ーーーー」
(いきが、くるしい)
「お前は俺のほかにも鬼がいるからね」
黒田は続けた。公園で兄たちと遊んでいて、手足を擦りむいた陸。手当てのため帰ろうと横断歩道へ向かい、そこへ、ハンドル操作を誤ったトラックがふたりの前に飛び込んできたのだと。
「勤勉な男だったそうだよ。飲酒運転なんてありえない。なら、男は何に酔っていたんだろうね?」
「わ、たし……が、いた、から?」
身体じゅうの震えが止まらない。だって、それなら。
おじさんの持つリボンが赤い、紅い、緋いーーーー
「俺はね、紘一との約束を守りたいよ。陸を守る。それがあいつの希望だったからーーでもね、」
椅子から立ち上がり、ベッドの上に移動する。陸の頬に触れる手は、今度は拒まれなかった。
「先に、さよならをしようか」
「さよ、なら」
「そう。何も言わずにここへきてしまったからね、心残りがあるといけない。もう会うことはない、愛していた……とでも伝えてあげるといいよ」
にこりと笑って、服の中に仕舞っていた携帯を陸に手渡した。
「古い携帯だけど、かけることはできるから」
「はい」
「じゃあ俺は一度出かけてくるよ。明日また食事を持ってくるからね」
格子戸の鍵が閉まる。花びらが一枚、はらりと落ちた。
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