第二十九章 黒に堕ちる
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「陸は家族を壊して、忘れて、離れていった。可哀想だろ? 紘一が守りたかったものは、一番大切にしていた娘に奪われたんだ」
「壊したなんて、わたしは」
「兄たちを拒絶し、寮のある学校へ行くために家を出た。それを気に病んだ兄ふたりも進学を理由にそれぞれ家を出て行った。残ったのは母ひとり。ほら、陸のせいでバラバラじゃないか」
(わたしのせい……。あのとき、)
「今の陸を紘一が見たらなんて言うだろうな。なあお前はなんて言う? この10年、何を成した?」
「私がしたこと……」
考えた。10年。お父さんがいなくなってからのこと。お母さん。お兄ちゃん。中学、高校……鬼ケ里でのこと。
「私が成したことは」
(わたしは)
この手に掴めるものは、なにもなかった。
「わからない……わからないよ」
(どうしたらよかった?)
涙が溢れる。拭うことをしないそれでワンピースは濡れていく。俯く陸を黒田がそっと抱きしめたが今度は抵抗されなかった。
「本当はひとつだけあったはずなのにな」
ぽつり、呟いた声は陸には聞こえていなかった。
「どうしよう、お父さん……」
(このままじゃきっとガッカリする)
「大丈夫、出来ることはあるよ」
真っ黒い闇が嗤う。花のにおいがする。
「選べばいい。俺を」
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