第二十九章 黒に堕ちる
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陸の腕を解放した黒田は、ベッドの傍に設置されていた椅子へ腰かけた。
「話を戻すけど、もちろん俺は陸の16歳の誕生日に迎えに行った。けれど既に陸はいなかった。悲しかったよ、これじゃ紘一も可哀想だ」
「かわいそう?」
突然の父親の話題に陸は首を傾げた。
「プレゼントのリボンの意味は覚えてる?」
「……可愛い、女の子だから」
「そう。同じ歳の女の子に比べて少しお転婆な陸をーーすぐに見つけるための目印だ」
“目印”と言われた瞬間、黒田の瞳が黄金(きん)色に見えた気がしてぞくりとした。
「あいつは本当に優秀な男だった。周りからの信頼も厚く、俺も尊敬していた。器用なやつだったから、家族との時間も上手く作って…… 陸にとっては優しくてかっこいい父親だったろう」
「うん……」
「それもそうだ。娘を守るのは自分の使命だなんて親馬鹿なことを言うほど愛していた。だから万が一のことがあったときはその使命を引き継ぐと話をしていた」
「お父さんは、おじさんに任せるって言ったの?」
「勿論だ」
「……」
「俺が守るべきは花嫁であり紘一が愛した陸だけど、陸は今の自分にそれほどの価値があると思う?」
「価、値?」
(価値って、なに)
黒田の口調は柔らかいが、声音はひどく冷たかった。