第二十六章 私の役目
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「……ん……? ここは、」
むくりと起き上がった光晴に、麗二はにっこりと微笑みかける。
「おや、ようやくお目覚めですか? 意外と眠っていましたねえ」
「……麗ちゃん? 人、気絶させといてえらいいい草やな。おお、痛」
床に転がされていたのと、手刀のせいで体に鈍い痛みが走る。
「私としては感謝してほしいくらいです。先程の状態のままではまともに話もできませんから……ね? 杏さん」
「あ、はい……」
麗二に同意を求められ返事をした際にはじめて光晴は杏を視認する。彼女のトレードマークである三つ編みはなく、ゆるく下ろされたままだった。
「……杏ちゃん」
光晴と目が合うなり杏は立ち上がり、頭を下げた。
「すみませんでした。謝って済む問題じゃないのはわかってますけど……あのとき陸と手を繋いで歩いていれば、ううん、先に着替えに行っていれば。陸も浦嶺先輩もこんなことになってなかったはずなんです」
杏の頬を、涙が伝う。
「私、前に陸の庇護翼になるなんて言ったんです。それなのに、あんなに近くにいたのに! なにも、できなかった……」
「……杏ちゃん……」
「杏さん、そんなに気に病まないでください。陸さんが見つからないと決まったわけではありませんし、浦嶺さんの怪我も治ります」
麗二は震える杏の背をさすり、椅子に座らせる。
「だから杏さんは、陸さんが帰って来たときに笑顔で迎えてあげてください」
(それで、じゅうぶんだ)
陸を攫い、郡司と透を倒し消えた犯人は間違いなく鬼の一族。親友とはいえ、“人間”である杏を巻き込んでしまったのは鬼(わたしたち)の落ち度だ。
「麗ちゃんの言う通りや。今回のことで杏ちゃんを怒るヤツなんておらんし、杏ちゃんに怪我がなくてホンマによかったと思っとるくらいじゃ」
「……高槻先生、士都麻先輩……ありがとうございます」
ぎこちなくではあったが、笑ってくれたことに麗二と光晴は安堵した。