第二十四・五章 姫の王子と桃の犬
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やたらテンションの高い、しかもカボチャを被った(気配からして)女子が小走りで近寄って来る。
「誰だ?」
「3年2組、執行部所属の山本です! 予想通りに着替えてない浦嶺くんに、朗報をお届けしようと思って」
サイズの合っていないカボチャを片手で支え、反対側の手で携帯を取り出して操作する。
「じゃん! 神楽 陸さんのハロウィン衣装です!」
「!!」
声とともに掲げられた携帯の画面には、淡いブルーのドレスに身を包み、友人と笑い合う陸の姿だった。
「……っ!」
「本当に陸だ。可愛いじゃん、なに、お姫様?」
「ご名答、シンデレラのお姫様! ちなみに、カップルは別になるようグループ分けされてるから、もちろん会長も例外じゃないよ」
「なんで、こんなことを?」
折角の祭りだというのに主催側がばらしてもいいのか問うと、カボチャがにこりと笑った(気がした)。
「浦嶺くんは会長の身内だし、同じクラスの贔屓ってことで」
「光晴の身内、か」
「なるほどね。で、郡司はなんなのさ?」
「そろそろ着替えた方がいいと思うよ? 制服での参加は認めてないし、神楽さんの安全のためにも。ね、王子様?」
「……へえ? 郡司、王子なんだ」
透の冷えた声音に、俺は頭を抱えた。陸のことで機嫌が左右されるのはいつものことだが、さっきからかったこともあって相当苛ついているのがわかる。
「じゃ、俺帰って寝るわ」
「透!」
「何が楽しくてこんな服着るわけ。俺が誰の家来だって? くだらない。一回着てやったんだから、もういいでしょ」
ぽい、と己の持つチップをカボチャに向けて投げると、透は振り返らずに歩き出した。
「あ、あのー、織部くんー」
「あー、悪い。あいつの分はそれとなく誤魔化してくれるか」
「……苦労してるんだね、浦嶺くん」
「もう慣れたよ」
――こうして自分のクラスに戻り、ようやくこの服に袖を通すことを決めた。