≪それじゃあ、ハロウィンパーティーはじまるよ！≫


そんなこんなで１５分前に強制的に開始された祭り。しかし俺は未だに制服で、目の前にある仮装用の衣装が入った箱を睨みつけていた。


「…………」


シルクだか何だか知らないが、こんなびらびらした服を着る気にはなれない

――が、ここで大きな問題が起きた。




時は１０分前に遡る。

いくらふざけた祭りといえど、全校生徒参加であるなら無視して帰ることは出来ない。その考えの元、同じ主に仕える相棒のクラスへと向かう。


「おい、透。おま――……」


眼前には、信じがたい光景が広がっていた。


「きゃ～っ！　織部くん可愛い～！」
「ねえねえ、耳触っていい？」
「執行部グッジョブだよね～」
「写真撮っていい？」


様々な衣装を身に纏った女子の中心にいる犬。それは顔が出るタイプの着ぐるみであり、犬の表情は禍々しい殺気に満ち溢れているが、お構いなしに遊ばれている。

その犬――もとい、透がふいにこちらを振り返った。


「げっ、郡司」

「よお」


目があった途端に方向転換し、俺の方へと歩み寄る。


「お前、なんでまだ制服のままなわけ？」

「まずは情報がいると思ってな。透はすぐそれ着たのか？」

「女子に押し付けられたんだ！　誰が好き好んでこんな衣装……っていうか、陸は？」

「まだ」

「はあ？！　じゃあこのまま情報収集させるつもり？！」

「仕方ないだろ。お前が悪い」


今の透に凄まれても痛くも痒くもない。なんせ格好が犬。しかもなかなか愛嬌がある。


「それより、犬ってなんだ？」

「…………桃太郎」

「！　えらく似合わないのに当たったな」

「そういう郡司はなんなわけ？」

「俺は、」

「あー！　浦嶺くんはっけーん！」

「あ？」