第二十一章 疑惑のデート
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本日、私は朝の日差し――ではなく、目覚まし時計――でもなく、光晴の呼び声によって起こされた。
「陸、陸! 昨日透とデートしたってホンマか!?」
しかも、妙な言いがかりで。
「朝早くからなに……? 私と透が何だって?」
「昨日! デートしたって!」
「…………」
寝起きであまり考えたくなかったから光晴の問いには答えずに、携帯を取り出して電話をかけた。
「陸?」
「ちょっと待って」
……プルルル……ピッ、
「<どうした? 早いな>」
「郡司、ごめんね。今大丈夫?」
「<いや、起きてたから>」
「ん、ありがとう。あのね、悪いんだけど……透、叩き起してくれない?」
「<――わかった。ちょっと待ってろ>」
しばし保留の音楽が流れる。――そして。
「<痛ってえ……。もしもし陸? 何だよ朝っぱらから>」
「何だじゃないでしょ。透から話してくれるって言ったから黙ってたのに、なんで私と透がデートしたことになってるの」
「<はあ? その冗談、光晴はすぐに見抜いたはずだけど>」
「え? わかった、ありがとう」
パタンと携帯を閉じた陸は、振り返り光晴を睨んだ。
「……違うって思ってても、私が浮気したと思ったんだ」
「え゛、」
「透の軽口ひとつに騙されるくらい、私のこと信用してなかったんだ。昨日大切だって伝えたばっかりなのに」
「うっ……」
「心外。サイッテー」
グサグサと言葉が矢となって光晴に突き刺さる。
「じ、じゃあ、昨日は……?」
「透と一緒にいたのは本当だけど、私は部室から一歩も出てないよ。透がお昼買って来てくれて、あとは少し話し相手になってくれただけ。――これ、デート?」
「スミマセン」
誤解だと気付いてからの彼の謝罪は素早かった。
「いくら疲れてたからってコレは酷いんじゃない。明日代休だし、デートでも誘えば?」
「ええ? いいよー、埋め合わせなんて」
「今日のこと、すげえ楽しみにしてたのはどこの誰だか」
「だ、だって……」
「じゃあ俺が光晴にそれとなく言ってやるから、今日俺といたこと光晴に話すなよ」
「? いいけど……何か企んでるわけじゃないよね?」
「企まねえよ。そんなに信用ない? 俺」
「ううん。ありがとう、楽しみにしてる」
――こんな浮気疑惑のあった日に光晴と陸がデートに行ったかどうかは、言うまでもない。
(そんなつもりじゃなかったけど、憂さ晴らしになったな。光晴、ざまあみろ)
(透お前、悪い顔してるぞ……昨日何したんだ)
(さあな)