第二十章 大切なひとに……
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校庭の中央で行われているのはキャンプファイヤー。スピーカーからは軽快な音楽も流れていて、生徒の中にはやぐらを囲んで踊る者や、それを眺めて談笑する者など、さまざまだ。
光晴と陸はその輪に入らず、少し離れた所に二人でいた。
「キャンプファイヤーってこんなに盛大だったんだねー。去年はさっさと帰っちゃったから知らなかった」
「執行部の祭りに手加減はナシや。これで毎年何組かのカップルもできとるらしいで?」
「へぇー、そうなんだ」
中学が女子校だった陸にとってはキャンプファイヤーもフォークダンスも馴染みが薄く、珍しいせいかまじまじと見つめていた。
「まざるか?」
「ううん、いい。もう充分見たから」
「――なぁ、陸。手ぇ出して?」
「? うん」
陸の手のひらに乗せられたのは暗い屋外でもきらきらと光を放つ碧色の装飾がついたブレスレット。
「うわあ、綺麗。光晴、これ……」
「知ってるか? 後夜祭でプレゼントを交換したカップルは必ず結ばれるって伝説」
「……うん。あのね、私もあるんだ」
「え、」
制服のポケットから差し出されたのは淡い緑色のリボン。
「昨日、クラスの子から初めて伝説のこと聞いて用意したの。考えたんだけど、私にとってリボンは大切なひとに贈るものだから」
大切な人に贈るもの――とは言ったものの、男性に対してリボンはいささか無理があったかと思い、俯く。
「や、やっぱそれ返し「陸。これ、腕に付けてくれん?」
「え」
「結び方は何でもええ。蝶々結びでも、固結びでも。ただ、絶対解けんように!」
にかっと笑い、光晴は左腕をずいっと陸に差し出す。
「……いいの?」
「いいに決まっとるやん! めっさ嬉しいで? 俺を縛ってええんは陸だけじゃ」
「最後のは余計! でも……ありがと」
「おお」
光晴が変わらぬ笑顔で受け入れてくれたことが素直に嬉しかった。いつもそうだ。彼がリボンをぞんざいに扱ったことなど一度もない。
陸はまず固結びをして、蝶々結びを重ねた。
「私のも、光晴がはめてね」
「もちろん!」
絶対はずれないように。ずっと一緒にいられるようにと願い、お互いが相手の瞳の色のプレゼントを選んだ。
二人の左手首を飾るそれは、目に見える絆ともいえる。
はずれることなんてないと――そう、信じていた。