第二十章 大切なひとに……
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ふ……、と意識が浮上する。薄く開いた瞳に映るのは薄暗い、黄昏時の空。
(……ん? 薄暗い……? って、)
寝惚けた頭の、ピントが合った。
「いま何時や!?」
がばっ!と起き上がった光晴の隣の椅子に座っていた陸は、勢いに驚きつつ「ご、5時……かな」と答えた。
「なんやて?! もう文化祭終わるやん! こんなに寝るつもりやなかったんに……!」
「それだけ疲れてたんでしょ。よかった、顔色いいね。はい飲み物」
「お、おおきに……」
「聞いたよ。今年は私といられるからすごく張り切ったんだって? 会長」
「っ……! 誰に聞いた?」
「藤塚くん。光晴が眠ったあと、備品を取りに来たんだよ」
「そ、か……。なんやカッコ悪いな」
がしがしと頭を掻く光晴を横目で見た陸は、小さく溜息をつく。
「文化祭は執行部主体の行事だし、私や神無ちゃんのことがあって尚更忙しいのわかるけど無理しないで。カッコ悪いなんて思わないから」
「陸……!」
じーん……と感動の眼差しを向けられ、居たたまれなくなった陸は慌てて椅子から立ち上がり、出入り口まで走る。
「でも! 杏に禁止令取ってもらったなんて知らなかった! あとの時間、つまんなかったら今度は私が禁止令出すんだからね!」
赤い顔でそう宣言した陸はそのまま走り去る。光晴はその行き先がわかっているため、焦って追い掛けることはしない。
「もっかい禁止令出されるんはイタイなぁ。――って、」
呟いてから、光晴は扉の向こうにある人物がいるのに気付く。
「……盗み聞きとはええ度胸やな」
話しかければ、その男はすぐに扉の影から顔を出した。
「いやー、すみません。悪気はないんですが……1日に2回となると、信じてもらえませんかね」
「? 何の話や」
「いえ、なんでも。後夜祭用のCD取りに来ただけなんで俺はもう行きます。――最後くらいカッコ良くキメてくださいよ、会長」
「……誰に言っとるんじゃ」
「ヘタレ」
「…………」