第四章 守り手たち
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薬品の匂いが漂う一室に、男が9人、女が1人集められていた。その内6人の男は困惑した表情を見せていたが、他の4人の視線は職員宿舎へと向けられていた。
「景気よくやりましたねぇ」
「先生も当事者じゃないですか。明るいと惨状がよく見えますね」
「あれだけ鬼が集まれば当然やろ。壁や柱なんかがちょっといかれたんやけど」
「ちょっとじゃないよ。僕の部屋、天井でっぱってたんだよ」
「そらご愁傷さま」
「楽しそうだね……。もう手当てしてあげない」
「ちょ、陸!?」
壁の一部は崩れ去り、屋根には大きな穴。もちろん床も無事ではなくて、階下まで被害が及んでいた。
その様子を後ろで見ていた6人は胸中で溜息をつき、その内のひとりが声をかけた。
「本題に入りませんか? ここに呼ばれた理由はわかっているつもりです」
「求愛の件ですよね?」
「しかも鬼頭の花嫁」
「なに考えてるんだよ、水羽!!」
「あんた子供でしょ!?」
「いや、その件はおいといて、まず求愛の話を――」
「おいとくな!! 33歳って言ったらまだ子供だよ! 子供!! それが鬼頭の花嫁に求愛して、あの人に恥かかせて、無事でいられると思ってるの!?」
長命である鬼にとってその年齢での求愛はあり得ない事柄で、鏡に映したように同じ顔の少年二人が水羽を責めた。
(人間なら、とっくに大人だけどねぇ……)
陸も彼らの年齢を聞いたときは、それはもう驚いたものだった。
「歳は関係ないし、僕にだって守りたい人はいる」
「そーゆーことや。郡司、透、主の命じゃ。庇護翼として花嫁を守れ」
光晴に呼ばれた二人は椅子から立ち上がった。がっしりとした大柄な男が、隣にいる長髪の男に一瞬だけ目を向けて、光晴に向き直る。
「花嫁は、鬼と婚姻した後は庇護翼の手を離れ、その鬼が守ることになるはずです」
「なんや郡司、不満か?」
花嫁を守るはずの庇護翼が求愛し、さらに自分の庇護翼にまで守らせる。それはあまりに異常な出来事で、男は困惑するが、やがて深呼吸をして頷いた。
「お受けします」
「透は?」
「受けます。――ですが、陸はどうなるんですか?」
透、そう呼ばれた男の視線は光晴の隣にいる彼の花嫁・陸に向けられていた。
「私?」
「陸もや。二人とも、俺の花嫁やからな」
「はい」
そして麗二や水羽が自分の庇護翼に伝えている最中、陸は郡司と透の元へと歩み寄った。
「郡司、透」
「陸」
「陸は、納得してるのか?」
「うん、してるよ。私は、昨日の木籐の態度を見てるからね。それに、郡司と透もいてくれれば心強いよ」
ね。と、にっこり笑顔で返されれば、もう言うことはなかった。
「それじゃ、話も終わったみたいだし」
「俺らは帰るよ」
「うん、じゃーね」
「景気よくやりましたねぇ」
「先生も当事者じゃないですか。明るいと惨状がよく見えますね」
「あれだけ鬼が集まれば当然やろ。壁や柱なんかがちょっといかれたんやけど」
「ちょっとじゃないよ。僕の部屋、天井でっぱってたんだよ」
「そらご愁傷さま」
「楽しそうだね……。もう手当てしてあげない」
「ちょ、陸!?」
壁の一部は崩れ去り、屋根には大きな穴。もちろん床も無事ではなくて、階下まで被害が及んでいた。
その様子を後ろで見ていた6人は胸中で溜息をつき、その内のひとりが声をかけた。
「本題に入りませんか? ここに呼ばれた理由はわかっているつもりです」
「求愛の件ですよね?」
「しかも鬼頭の花嫁」
「なに考えてるんだよ、水羽!!」
「あんた子供でしょ!?」
「いや、その件はおいといて、まず求愛の話を――」
「おいとくな!! 33歳って言ったらまだ子供だよ! 子供!! それが鬼頭の花嫁に求愛して、あの人に恥かかせて、無事でいられると思ってるの!?」
長命である鬼にとってその年齢での求愛はあり得ない事柄で、鏡に映したように同じ顔の少年二人が水羽を責めた。
(人間なら、とっくに大人だけどねぇ……)
陸も彼らの年齢を聞いたときは、それはもう驚いたものだった。
「歳は関係ないし、僕にだって守りたい人はいる」
「そーゆーことや。郡司、透、主の命じゃ。庇護翼として花嫁を守れ」
光晴に呼ばれた二人は椅子から立ち上がった。がっしりとした大柄な男が、隣にいる長髪の男に一瞬だけ目を向けて、光晴に向き直る。
「花嫁は、鬼と婚姻した後は庇護翼の手を離れ、その鬼が守ることになるはずです」
「なんや郡司、不満か?」
花嫁を守るはずの庇護翼が求愛し、さらに自分の庇護翼にまで守らせる。それはあまりに異常な出来事で、男は困惑するが、やがて深呼吸をして頷いた。
「お受けします」
「透は?」
「受けます。――ですが、陸はどうなるんですか?」
透、そう呼ばれた男の視線は光晴の隣にいる彼の花嫁・陸に向けられていた。
「私?」
「陸もや。二人とも、俺の花嫁やからな」
「はい」
そして麗二や水羽が自分の庇護翼に伝えている最中、陸は郡司と透の元へと歩み寄った。
「郡司、透」
「陸」
「陸は、納得してるのか?」
「うん、してるよ。私は、昨日の木籐の態度を見てるからね。それに、郡司と透もいてくれれば心強いよ」
ね。と、にっこり笑顔で返されれば、もう言うことはなかった。
「それじゃ、話も終わったみたいだし」
「俺らは帰るよ」
「うん、じゃーね」