第二章 生け贄の娘
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「光晴!!」
「陸! なんでここに?!」
「陸さん、まだホームルームは終わっていないはずですが?」
一番図体のデカい男が振り返ったと思えば、隣にいた白衣の男がにっこりと笑みを浮かべた。
「すごく嫌な予感がして。何があったんですか?」
何かあった? とは聞かない。何かがあったのは確実なのだから。すると、タイミングよく目の前の保健室のドアが開かれ少年が顔を出した。
「とりあえず、中で話そうよ」
「水羽」
「ああ」
「あ、麗二。替えの制服どこ?」
「それでしたら確か――」
「……初日から、そんな」
三翼から事のあらましを聞いた陸は、さっと青ざめた。
「いっそ公言しちゃう? これからああいうの増えるよ」
「そら得策やないで。なんせ華鬼は鬼にはムチャクチャ評判悪いんじゃ。神無ちゃんボロボロにされてまう」
「けど、庇護翼が僕らだってわかれば牽制になるんじゃない?」
「だといいんやけど」
思い出したように立ち上がり、窓辺に歩み寄った光晴の視線の先――保健室の一角、カーテンで隔離された中から衣擦れの音が漏れてきていた。
「制服は何着でも用意出来ますが、その体はひとつきりです。あまりいじめては駄目ですよ?」
その声への返答はない。
「カーテンを開けます」
そう言ったのは、長髪を後ろで軽く束ねた驚くほど美貌の男――通称保健室の“麗人”である。
だが今視線を集めているのは麗二ではなく、その後ろの少女だった。