第一章 はじまりの場所
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夏休みの明けた9月1日、始業式。私立鬼ヶ里高等学校のその朝は、穏やかとはいかなかった。
「なんかさ、執行部の会長、生徒会長殴ったらしいよ?」
「執行部って――士都麻先輩が、木籐先輩を!?」
式の最中、校長の話に飽きた女子生徒がこそこそと小さな声量で話をし始める。
学園には生徒会と執行部の二つが存在する。生徒会は学園運営などの“政(まつりごと)”をつかさどり、執行部は娯楽全般をおおいに盛り上げる“お祭り”好き集団だ。
本来なら足並みをそろえなければならないこの二つは、木籐 華鬼と士都麻 光晴がそれぞれトップに立ってからはどうもうまくいっていない。
「なんか、いきなりだったらしいよ? 木籐先輩の肩に手をのっけて、そのまま思い切り」
「痛そー」
「では、生徒会長より一言」
少女たちの声をかき消すかのように副会長、須澤梓の澄んだ声が響く。壇上を行く華鬼は全校生徒の前であるにも関わらず気だるげで、何より自然体でありすぎる。
そんな彼がマイクをぶん取って話し出す。
「よくわざわざここまで戻って来たな。朗報をひとつやろう」
「――花嫁が届いた」
あまりにも不遜に、生徒会長は嘲笑している。生徒は意味をはかりかねて答えを探すようにざわめき出した。
(木籐?! 何言って――)
「今夜、俺の結婚式がある」
始業式の壇上で最大級の爆弾を投下させた華鬼に、事情を知る者は皆顔色を変えた。