第十章 想いの行方
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神無が誰の部屋に泊まるのか。それを確かめる術はなく、もし華鬼の部屋ならば水羽が場所はわかると言ったために諦めて、引き続き様子を見るに留めた。
「こうして眺めてるだけだとなんか平和だな……って光晴? どうしたの」
双眼鏡を下ろした陸が振り返ると、光晴が携帯を手に、まるで壊れたブラウン管のテレビにするように振ったり軽く叩いたりしていた。
「ん……。ちょっと入り用で電話したいんやけど、ココ圏外なんや」
「でも昼間、麗二先生電話してたよね?」
「山奥やし、電波悪いんかもしれん」
「急ぎなの?」
「……まぁ、な」
「じゃあ、中に行ってくれば?」
「! 水羽」
ひょっこりと顔を出したのは、いつから聞いていたのか――水羽だった。
「何の用かは知らないけど、家の固定電話なら繋がらないってことはないでしょ」
「おーナルホド。せやったら早速準備や」
何やらごそごそと荷物を探り始めた光晴を見て、陸は首を傾げる。
「準備って?」
「私服のまま侵入したらバレバレだからね、変装するんだよ」
「ああ、そっか」
「じゃーん! 陸、どないや?」
自ら効果音をつけて登場した光晴の服装は、神無が言っていた“うしさん”と同じ、黒のスーツ姿だった。
「わぁ、変装ってそのスーツなんだ!……うん、似合ってる。カッコいいよ」
「ホンマ!? いや~、陸がこう言うてくれるんなら、スーツも悪ないな。……襟、ちょっと苦しいけど」
「はいはい。いつまでも格好つけてないで、さっさと行ったら? 陸のことは僕らにまかせて」
水羽が、そう言って光晴の背をぽんと叩く。
「ちょい待ち! 陸!」
「なに?」
「俺がいない間、絶対にひとりになるんやないで」
「え? ああ、うん」
「約束や。水羽か麗ちゃんのそばに、ちゃんとおるんやで」
「わかってるよ。そんなに心配しなくても大丈夫だから」
「じゃ、行って来るわ。……水羽」
「ん、了解」
「行ってらっしゃい」
笑顔で見送った陸だったが、今のやりとりに若干の違和感を感じていた。
「陸、どうかした?」
「ううん。なんか今の光晴、いつもより過保護だったなあ……って」
「そりゃあ、そうもなるんじゃない? 僕と違って光晴はここの地理に明るくないし、神無と華鬼のこともあるし、おまけに堀川響までいるんだ。……だから光晴の気持ち、少しわかるよ」
「そう、いうもん……?」
「そういうもんだよ」
なぜか、それだけではない。漠然とそんな気がしていた。しかしそれが何なのか陸は見当がつかなかった。――今は、まだ。