1. 幼少期
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『サヤ... 強く...生きなさい...
愛して愛されて...優しくありなさい...
母さんも...天国にいる父さんも...あなた..を...
愛.....して..................』
「お母さん!!!」
日が昇り始めてアラームがなる前に飛び起きると頬から涙が流れていた。
久しぶりに母の夢を見た。
1年前、あの事件があってから
何度母に会いたいと願っただろうか。
夢でもいいからと神に願ったところで
母が出てくることは極たまに。
あんなにも大好きだった母の声も
思い出せなくなっていた。
今もまだ悲しみは消えないが
くよくよしている暇はない。
早めの朝食を済まして、
1ヶ月後のアカデミー入学に備えて
今日も修行をしに行く。
いつもの演習場につくと、そこには既に
綱手がいた。
「綱手ねぇちゃんおはよう」
「おはよう、サヤ」
そう言って笑う綱手に覇気はなく、
少しやつれている。
少し前に終戦した第二次忍界大戦では
弟の縄樹、先日の任務では恋人のダンを
亡くしたのだ。
「綱手ねぇちゃん
朝ごはん食べてないでしょ?」
「..食欲がなくてね」
「だと思っておにぎり作ってきたよ。」
差し出した爆弾おにぎりを見て
驚いた顔をした綱手はありがとうと微笑んで
豪快に食べ始めた。
「食欲ないんじゃなかったの...」
「可愛い姪が作ってくれんたんだ。もったいないだろ?それにお前を鍛える私がスタミナ不足だと困るしな!」
サヤは知っている。綱手が私を大切に思っていることを。だからこそ、いつ死ぬか分からないこのご時世を生きぬけるように朝から修行を付けてくれているのだ。
綱手にとってもサヤにとっても
血の繋がりのある唯一の存在。
綱手が強制的にねぇちゃん呼びさせているが
その関係は確かに母子のようであり
姉妹のようであった。
「さてと!今日は桜花衝の復習でもするか。」
「うん ! 」
サヤはチャクラコントロールに
長けていた。
母が生きていた頃には水面歩行をマスターし、綱手との修行では
体術と医療忍術を極めている。
綱手の贔屓目抜きでも天才だった。
(さすがおじい様の血を色濃く継いだだけはあるな。)
「バッゴーン!!!」
バキバキに割れた地面とドヤ顔のサヤ、
さすが私の姪だと褒める綱手、
それを水晶越しに冷や汗をかいて見ていた
3代目の姿があった...。
その日の修行を終えた夕方、
珍しく公園に1人で向かうと同じ年代の子達は
親の手を引いて帰る時間だった。
(お母さん....)
朝の夢を思い出していると、
1人公園にポツンと突っ立っている
男の子がいた。
友達が全くいないサヤは話しかける
勇気もなく近くのブランコに座った。
そして思い出すのは今朝の夢。それから母が亡くなったあの日の事件。
あの日は雲ひとつない晴れで、
母と庭の池の上で押し相撲をして遊んでいた。
:
:
:
「隙あり!」
バッシャーン
「ああぁ!また負けちゃった...
お母さん少しは手加減してよ〜。」
何故わざわざ水の上で押し相撲をするのかと
母に尋ねたことがある。
『水面歩行くらいしか母さんは教えるものがないからね。』
母は数年前に体を壊し、忍びを引退していた。
術を発動させる程のチャクラを使用すると
命に関わるらしい。母と幼い頃に戦死した父は
木ノ葉隠れの里の中でもかなりのやり手で
貯金は使い切れないほどあるから
心配しないでねといつか母は言っていた。
なんでも母の祖父はこの里の初代火影様で、
父は秀でた一族出身ではなかったが
優れた判断力と行動力で千住一族に婿入り
したとか。
そんな母と父を尊敬していて大好きだった。
母も私に毎日のように大好きよ。愛してるわ。と頭を撫でてくれていた。
しかし何故か生まれて数年、サヤは
家の敷地外に出たことがなかった。
たまに綱手ねぇちゃんが遊びに来る程度。
水面上での押し相撲も一段落付き、
一緒にお風呂でも入ろうかと話していた時
母がふと外に目をやった。
「サヤ、少しこの部屋で大人しくしててね?」
母が急に玄関先へと向かった。
初めは母の言いつけを守り、
普段はあまり使わない部屋で鼻歌を歌って
待っていた。
「どうしてなの!?」
普段は穏やかな母の怒鳴り声が聞こえた。
言いつけもすっかり忘れて玄関先に向かうと
顔に包帯を巻いて、杖をついたおじいさんが
母と口論をしていた。
「ほう。これが初代火影の血を濃く受け継ぐ子か?」
片方の目が値踏みするようにこちらを見た。
「サヤ!?部屋で待ってなさいと
言ったでしょう!」
母が珍しく怒るので慌てふためいていると
包帯のおじいさんが近寄ってきた。
「これはこのワシーダンゾウが預かろう。
しっかり根の忍びとして育ててやろう。」
「これですって!?私の子よ!
近づかないで!」
何故母がこんなに慌てているのか
分からなかったが、このダンゾウという
おじいさんは悪い人なのだと認識した
サヤは母の後ろに隠れた。
「悪足掻きはよせ。それの木遁は
いずれ木の葉にとって欠かせないものに
なろう。宿命なのだ。諦めろ。」
そう言ってダンゾウが何かの術の印を
くみ始めた時。
「木遁!樹界降誕!!」
母が術をダンゾウより早く放った。
その術はダンゾウを突き抜け、家を壊し、空高くまで昇った。
「これで三代目様が異変に気づいて駆けつけてくれるわ。...ゲホッ ゲホッ!」
血を吐き出す母を見てサヤはただ震えて
1歩も動くことが出来なかった。
「無駄なことを。可哀想に。お前の大切な子は震えて声も出てないぞ。」
先程母の術によって貫かれたはずのダンゾウが
傷一つ付けずにたっていた。
「何故!?ゲホッゲホッ!...確かにあてた筈..!」
「ワシにとってどんな術も無意味なものよ。
いいか娘。お前もワシに逆らえばこの女の
ようになると思え。」
そう言ってダンゾウはサヤに術を施して
消えた。翌日、三代目様に聞けばこれは
呪印と言うらしい。
母はごめんねと何回も謝ってから
そばに来てと言った。
「あ....あ...お....お母さん血が.....」
なんと情けない第一声だっただろうか。
「もっとこっちに。」
母の声に連れられるようにピタリとそばに
寄ると、母が手を握った。
「サヤ... 強く...生きなさい...
愛して愛されて...優しくありなさい...
母さんも...天国にいる父さんも...あなた..を...
愛.....して..................」
「お..お母さん?お母さん?どうしたの?
寝ちゃったの?...ね..ねぇ。お母さん!」
その日、家の周りには森ができた。
母の樹界降誕の周りに離れないように
サヤの木遁が放たれていた。
幸いその家は敷地が広く、他の家に被害は
なかった。
初めて木遁を無意識に発動させたためか
気絶したところを保護され、
目が覚めると病院で三代目様がいた。
「................お母さんは?」
「...息途絶えてしまった。早くに駆けつけられなくて本当にすまぬ。」
「ダンゾウは!?アイツにッ~ィッッタ!」
ダンゾウの話をしようとしたら舌が痛んだ。
「それは根の証じゃ。喋らんでも何があったかは大体わかっておる。」
「ならっ!なら!アイツを殺してよ!!
お母さんよりもっと痛くして!」
一気に涙がボロボロ溢れ出した。
「..それは出来ぬ。
だが謹慎処分は下しておる。そしてお主が
根に移動するのも今すぐではない。
中忍になったらと交換条件をだした。」
もう何も言い返す気力はなかった。
ただただ布団に顔を押し付けて悔しさと
悲しさで泣くしかできなかった。
「いいかサヤや。お主はこれより
戦争孤児じゃ。千住の姓は名乗ってはならぬ。
これはお主の母の遺言じゃ。
中忍になって自分を守れる力がついたのなら
千住の名を返そう。」
何故母は姓を名乗って欲しくないのか。
疑問はあったがそれよりも里の大人は
なんて酷いんだろう。火影様はダンゾウを罰してはくれないのか。当時はそう思った。
あとで綱手が、ダンゾウは母に手を出していないので罰することは出来ないことを教えられ、
根やダンゾウの噂、全て知った。
確かにダンゾウは何もしていない。
そして木の葉を非道ながら守っているのだ。
「一体私は誰を恨めばいいの?」
三代目様から与えられた部屋に引っ越してから
三日三晩泣いた。ダンゾウも、早く助けに
来てくれなかった3代目様も恨んだ。
それでも心が晴れることはなく、
考えるのことも恨むこともやめた。
ダンゾウも3代目様も木の葉の里も
恨んでいない。嫌いでもない。
嫌だって思うから嫌なんだ。
恨めしいって思うから恨むんだ。
賑やかな木の葉、優しい3代目様、大好きな
お母さん、綱手ねぇちゃん、みんな好き。
ダンゾウだけは好きになれないけど
嫌いでもない。普通。
そうやって嫌なことに蓋をした。
三代目も綱手もサヤの蓋に
気づけなかった。
母の死を乗り越えた優しい子。
それが1番楽だった。
:
:
:
:
「おい!おい!聞いてんのか!?」
「え?」
気が付けば男の子の顔が目の前にあった。
「うわぁ!」
そういえば公園のブランコに座って
物思いにふけてる最中だった。
この少年はまだ帰ってなかったのか。
そんなことを考えていると
「人の顔みてうわぁ!はねェだろ...」
「ご、ごめんなさい。ビックリしちゃって..」
「別にいいけどよ。お前帰らないのか?
親が心配するぞ。」
「...親いないから大丈夫。」
あぁ、返し方が悪かったかなと後悔した。
今、根掘り葉掘り聞かれたら
泣いてしまいそうだった。
「....悪ぃこと聞いたな。
...オレも家族居ないんだ。その...だから...
一緒に遊ぼうぜ!」
彼なりの励ましだったのだろう。
「ブッ」
思わず吹き出してしまった。
予想外の返答と彼も孤児であることに
心の底がなんだかポカポカする気がする。
「なんだよ!笑うことねぇだろ!」
「だって一緒に遊ぼうって...ククク」
それからお互いに自己紹介をして
お互いにアカデミー入学を控えていることを話した。
母の事件は言えなかっが、戦死とだけ
言っておいた。
オビトも両親が幼い頃に戦死してから
祖母に育ててもらったらしいが
その祖母も先日亡くなってしまったらしい。
お互いに何か近しいものを感じ、
毎日この公園で夕方から夜になるまで話した。
「俺は火影になる!」
そう言うオビトがとても眩しくて
何故だか凄く励まされた。
眩しくて眩しくて眩しくて。
心の穴が埋まった気がした。
だけど
「オビトは本当に
リンちゃんが好きなんだね。」
「な!なんだよ急に!
ま、まぁそうたけど...ゴニョゴニョ」
「だってさっきからずっと
リンがリンがぁって言ってるよ?」
「まじか!?やべぇ気をつけないとだな...」
リンが好き。
そう言うオビトは火影の夢を
語る時と同じくらい眩しくて。
胸が痛んだ。
そして気づいた。
あぁオビトが好きなんだ。
リンが好きって言ってるオビトに
惚れたなんて口が避けても言えない。
リンちゃんに会ったことはない。
けれどオビトが一生懸命彼女のことを説明
してくるものだから、
勝手にのはらリンという女の子を想像した。
そしてそんなに良い子なら友達になりたいと
思う反面、会いたくないと思う
醜い自分もいた。
けれどね、オビト。
嫌なことに蓋をして、
全部好きだと自分に言い聞かせてきたけど
オビトは胸をはって好きだと言えるよ。
たとえあなたが私を見ていなくとも。
愛して愛されて...優しくありなさい...
母さんも...天国にいる父さんも...あなた..を...
愛.....して..................』
「お母さん!!!」
日が昇り始めてアラームがなる前に飛び起きると頬から涙が流れていた。
久しぶりに母の夢を見た。
1年前、あの事件があってから
何度母に会いたいと願っただろうか。
夢でもいいからと神に願ったところで
母が出てくることは極たまに。
あんなにも大好きだった母の声も
思い出せなくなっていた。
今もまだ悲しみは消えないが
くよくよしている暇はない。
早めの朝食を済まして、
1ヶ月後のアカデミー入学に備えて
今日も修行をしに行く。
いつもの演習場につくと、そこには既に
綱手がいた。
「綱手ねぇちゃんおはよう」
「おはよう、サヤ」
そう言って笑う綱手に覇気はなく、
少しやつれている。
少し前に終戦した第二次忍界大戦では
弟の縄樹、先日の任務では恋人のダンを
亡くしたのだ。
「綱手ねぇちゃん
朝ごはん食べてないでしょ?」
「..食欲がなくてね」
「だと思っておにぎり作ってきたよ。」
差し出した爆弾おにぎりを見て
驚いた顔をした綱手はありがとうと微笑んで
豪快に食べ始めた。
「食欲ないんじゃなかったの...」
「可愛い姪が作ってくれんたんだ。もったいないだろ?それにお前を鍛える私がスタミナ不足だと困るしな!」
サヤは知っている。綱手が私を大切に思っていることを。だからこそ、いつ死ぬか分からないこのご時世を生きぬけるように朝から修行を付けてくれているのだ。
綱手にとってもサヤにとっても
血の繋がりのある唯一の存在。
綱手が強制的にねぇちゃん呼びさせているが
その関係は確かに母子のようであり
姉妹のようであった。
「さてと!今日は桜花衝の復習でもするか。」
「うん ! 」
サヤはチャクラコントロールに
長けていた。
母が生きていた頃には水面歩行をマスターし、綱手との修行では
体術と医療忍術を極めている。
綱手の贔屓目抜きでも天才だった。
(さすがおじい様の血を色濃く継いだだけはあるな。)
「バッゴーン!!!」
バキバキに割れた地面とドヤ顔のサヤ、
さすが私の姪だと褒める綱手、
それを水晶越しに冷や汗をかいて見ていた
3代目の姿があった...。
その日の修行を終えた夕方、
珍しく公園に1人で向かうと同じ年代の子達は
親の手を引いて帰る時間だった。
(お母さん....)
朝の夢を思い出していると、
1人公園にポツンと突っ立っている
男の子がいた。
友達が全くいないサヤは話しかける
勇気もなく近くのブランコに座った。
そして思い出すのは今朝の夢。それから母が亡くなったあの日の事件。
あの日は雲ひとつない晴れで、
母と庭の池の上で押し相撲をして遊んでいた。
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「隙あり!」
バッシャーン
「ああぁ!また負けちゃった...
お母さん少しは手加減してよ〜。」
何故わざわざ水の上で押し相撲をするのかと
母に尋ねたことがある。
『水面歩行くらいしか母さんは教えるものがないからね。』
母は数年前に体を壊し、忍びを引退していた。
術を発動させる程のチャクラを使用すると
命に関わるらしい。母と幼い頃に戦死した父は
木ノ葉隠れの里の中でもかなりのやり手で
貯金は使い切れないほどあるから
心配しないでねといつか母は言っていた。
なんでも母の祖父はこの里の初代火影様で、
父は秀でた一族出身ではなかったが
優れた判断力と行動力で千住一族に婿入り
したとか。
そんな母と父を尊敬していて大好きだった。
母も私に毎日のように大好きよ。愛してるわ。と頭を撫でてくれていた。
しかし何故か生まれて数年、サヤは
家の敷地外に出たことがなかった。
たまに綱手ねぇちゃんが遊びに来る程度。
水面上での押し相撲も一段落付き、
一緒にお風呂でも入ろうかと話していた時
母がふと外に目をやった。
「サヤ、少しこの部屋で大人しくしててね?」
母が急に玄関先へと向かった。
初めは母の言いつけを守り、
普段はあまり使わない部屋で鼻歌を歌って
待っていた。
「どうしてなの!?」
普段は穏やかな母の怒鳴り声が聞こえた。
言いつけもすっかり忘れて玄関先に向かうと
顔に包帯を巻いて、杖をついたおじいさんが
母と口論をしていた。
「ほう。これが初代火影の血を濃く受け継ぐ子か?」
片方の目が値踏みするようにこちらを見た。
「サヤ!?部屋で待ってなさいと
言ったでしょう!」
母が珍しく怒るので慌てふためいていると
包帯のおじいさんが近寄ってきた。
「これはこのワシーダンゾウが預かろう。
しっかり根の忍びとして育ててやろう。」
「これですって!?私の子よ!
近づかないで!」
何故母がこんなに慌てているのか
分からなかったが、このダンゾウという
おじいさんは悪い人なのだと認識した
サヤは母の後ろに隠れた。
「悪足掻きはよせ。それの木遁は
いずれ木の葉にとって欠かせないものに
なろう。宿命なのだ。諦めろ。」
そう言ってダンゾウが何かの術の印を
くみ始めた時。
「木遁!樹界降誕!!」
母が術をダンゾウより早く放った。
その術はダンゾウを突き抜け、家を壊し、空高くまで昇った。
「これで三代目様が異変に気づいて駆けつけてくれるわ。...ゲホッ ゲホッ!」
血を吐き出す母を見てサヤはただ震えて
1歩も動くことが出来なかった。
「無駄なことを。可哀想に。お前の大切な子は震えて声も出てないぞ。」
先程母の術によって貫かれたはずのダンゾウが
傷一つ付けずにたっていた。
「何故!?ゲホッゲホッ!...確かにあてた筈..!」
「ワシにとってどんな術も無意味なものよ。
いいか娘。お前もワシに逆らえばこの女の
ようになると思え。」
そう言ってダンゾウはサヤに術を施して
消えた。翌日、三代目様に聞けばこれは
呪印と言うらしい。
母はごめんねと何回も謝ってから
そばに来てと言った。
「あ....あ...お....お母さん血が.....」
なんと情けない第一声だっただろうか。
「もっとこっちに。」
母の声に連れられるようにピタリとそばに
寄ると、母が手を握った。
「サヤ... 強く...生きなさい...
愛して愛されて...優しくありなさい...
母さんも...天国にいる父さんも...あなた..を...
愛.....して..................」
「お..お母さん?お母さん?どうしたの?
寝ちゃったの?...ね..ねぇ。お母さん!」
その日、家の周りには森ができた。
母の樹界降誕の周りに離れないように
サヤの木遁が放たれていた。
幸いその家は敷地が広く、他の家に被害は
なかった。
初めて木遁を無意識に発動させたためか
気絶したところを保護され、
目が覚めると病院で三代目様がいた。
「................お母さんは?」
「...息途絶えてしまった。早くに駆けつけられなくて本当にすまぬ。」
「ダンゾウは!?アイツにッ~ィッッタ!」
ダンゾウの話をしようとしたら舌が痛んだ。
「それは根の証じゃ。喋らんでも何があったかは大体わかっておる。」
「ならっ!なら!アイツを殺してよ!!
お母さんよりもっと痛くして!」
一気に涙がボロボロ溢れ出した。
「..それは出来ぬ。
だが謹慎処分は下しておる。そしてお主が
根に移動するのも今すぐではない。
中忍になったらと交換条件をだした。」
もう何も言い返す気力はなかった。
ただただ布団に顔を押し付けて悔しさと
悲しさで泣くしかできなかった。
「いいかサヤや。お主はこれより
戦争孤児じゃ。千住の姓は名乗ってはならぬ。
これはお主の母の遺言じゃ。
中忍になって自分を守れる力がついたのなら
千住の名を返そう。」
何故母は姓を名乗って欲しくないのか。
疑問はあったがそれよりも里の大人は
なんて酷いんだろう。火影様はダンゾウを罰してはくれないのか。当時はそう思った。
あとで綱手が、ダンゾウは母に手を出していないので罰することは出来ないことを教えられ、
根やダンゾウの噂、全て知った。
確かにダンゾウは何もしていない。
そして木の葉を非道ながら守っているのだ。
「一体私は誰を恨めばいいの?」
三代目様から与えられた部屋に引っ越してから
三日三晩泣いた。ダンゾウも、早く助けに
来てくれなかった3代目様も恨んだ。
それでも心が晴れることはなく、
考えるのことも恨むこともやめた。
ダンゾウも3代目様も木の葉の里も
恨んでいない。嫌いでもない。
嫌だって思うから嫌なんだ。
恨めしいって思うから恨むんだ。
賑やかな木の葉、優しい3代目様、大好きな
お母さん、綱手ねぇちゃん、みんな好き。
ダンゾウだけは好きになれないけど
嫌いでもない。普通。
そうやって嫌なことに蓋をした。
三代目も綱手もサヤの蓋に
気づけなかった。
母の死を乗り越えた優しい子。
それが1番楽だった。
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「おい!おい!聞いてんのか!?」
「え?」
気が付けば男の子の顔が目の前にあった。
「うわぁ!」
そういえば公園のブランコに座って
物思いにふけてる最中だった。
この少年はまだ帰ってなかったのか。
そんなことを考えていると
「人の顔みてうわぁ!はねェだろ...」
「ご、ごめんなさい。ビックリしちゃって..」
「別にいいけどよ。お前帰らないのか?
親が心配するぞ。」
「...親いないから大丈夫。」
あぁ、返し方が悪かったかなと後悔した。
今、根掘り葉掘り聞かれたら
泣いてしまいそうだった。
「....悪ぃこと聞いたな。
...オレも家族居ないんだ。その...だから...
一緒に遊ぼうぜ!」
彼なりの励ましだったのだろう。
「ブッ」
思わず吹き出してしまった。
予想外の返答と彼も孤児であることに
心の底がなんだかポカポカする気がする。
「なんだよ!笑うことねぇだろ!」
「だって一緒に遊ぼうって...ククク」
それからお互いに自己紹介をして
お互いにアカデミー入学を控えていることを話した。
母の事件は言えなかっが、戦死とだけ
言っておいた。
オビトも両親が幼い頃に戦死してから
祖母に育ててもらったらしいが
その祖母も先日亡くなってしまったらしい。
お互いに何か近しいものを感じ、
毎日この公園で夕方から夜になるまで話した。
「俺は火影になる!」
そう言うオビトがとても眩しくて
何故だか凄く励まされた。
眩しくて眩しくて眩しくて。
心の穴が埋まった気がした。
だけど
「オビトは本当に
リンちゃんが好きなんだね。」
「な!なんだよ急に!
ま、まぁそうたけど...ゴニョゴニョ」
「だってさっきからずっと
リンがリンがぁって言ってるよ?」
「まじか!?やべぇ気をつけないとだな...」
リンが好き。
そう言うオビトは火影の夢を
語る時と同じくらい眩しくて。
胸が痛んだ。
そして気づいた。
あぁオビトが好きなんだ。
リンが好きって言ってるオビトに
惚れたなんて口が避けても言えない。
リンちゃんに会ったことはない。
けれどオビトが一生懸命彼女のことを説明
してくるものだから、
勝手にのはらリンという女の子を想像した。
そしてそんなに良い子なら友達になりたいと
思う反面、会いたくないと思う
醜い自分もいた。
けれどね、オビト。
嫌なことに蓋をして、
全部好きだと自分に言い聞かせてきたけど
オビトは胸をはって好きだと言えるよ。
たとえあなたが私を見ていなくとも。
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