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第一章 出逢いの刻

一方、凛香(リンカ)は――相変わらず一人でいた。
あの頃とは違い、愛想笑いはしなくなっていた。疲れる。それが理由だった。
いつからか愛想笑いしかしていなくなっていたことに気付き、最近はほぼ無表情になっていた。
夢を見た。またあの時と同じ夢だ。ただ一つ違ったのは、少年(ミカド)との会話だった。
『久しぶりだね、お姉ちゃん』
「ミカド……」
『始まったみたいだね……』
「えっ……?何のこと??」
『ヤツが――ヤツがついに動き出したんだね……』
「だから、何のことって訊いてるでしょ!!?」
『ごめんね、お姉ちゃん……僕には――ヤツを止めることは出来ないんだ……』
「一人で勝手に話を進めないでよっ!」
『お姉ちゃんのお友達、死んだでしょ?』
「え……?なんでその事……」
なんでミカドが朝水の事を――
『アサミさんっていうんだ、あのお姉ちゃん……』
「人の話を無視すんなよ!」
『とにかく――お姉ちゃん、閑那って人を探して……』
「なんでよ??」
『僕にはそれしか言えない――僕はそっちの世界にあんまりカンショウしちゃいけないんだ……』
ミカドは寂しそうな顔をしながらそう言うと、光の中に消えていった。
カンナ……凛香がそう呟くと、現実の世界に引き戻されていた。

平日だというのに、ソコは他とは比べ物にならないくらい人で溢れていた。まるで休日のテーマパーク並の人だかりだった。まぁ、ソコもテーマパークと言えなくもないが――
ソコはいろんな種類の占いが楽しめる場所だった。
手相にタロット、星占術などありとあらゆる占いがソコでは楽しめるのである。
良く当たると評判の店もあれば、全然駄目だという店もある。閑那の店はその一角にあった。
今日は閑那の店は休業日だが、人と会うために閑那はソコにいた。防音設備の整った部屋は、外に物音はもちろん、話声が漏れることはないので、大事な話がしたい時、閑那はソコをしばしば利用していたのだ。
最初にソコに現れたのは涼だった。涼が来た時、店のドアには“Close”の看板が出ていた。
何度か閑那に呼ばれて来た事のある涼は、閑那がいるであろうことを知っていたので店の中へと入っていった。
「閑那、いるか?」
幻想的な光に満ちた部屋の中で涼は言った。
そして、部屋の中にある珍しい雑貨などを手に取っては元の場所に戻しながら、部屋の中を見て回っていた。いつ来ても不思議な場所だ、と涼は思っていた。
「何か気に入ったものでもあった?」
不意に後ろから声をかけられた。いつもそうだ。人が驚くのを楽しんでいるのか、いきなり視界に入らない場所から不意に声をかけてくる。
「いるならもっと早く出てこいよな、閑那」
「あら、ごめんなさいね?奥にいたから声が聞こえなかったのよ」
「奥……?」
ここに来たのは初めてじゃなかったが、今いる部屋以外にも部屋があることは知らなかった。
「えぇ、この部屋は仕事部屋。奥には簡単なリビングみたいな場所があるのよ」
「以外と広いんだな、ここ」
「そうね、ここに半日近くいるんだもの。ココみたいに狭いと気が狂っちゃうわ……」
「そうだな……で、会わせたいヤツらってのはどこにいるんだ?」
閑那と長話をするためにココに来たんじゃない。
「まだ来てないわ。私もまさかあなたが一番に来るとは思ってなかったしね」
来なかったら自分の身が危ない。そう、いろんな意味で危ないのを知ってるからこそ、涼はそれなりに急いで来たのだ。

授業がすべて終わった学校の一室。3人はこれからの予定を話し合っていた。
「これから何処に行くん?」
眞葵の問いかけに、咲羅は笑顔で答えた。
「私のバイト先」
「「はい~??」」
綾芽と眞葵の間抜けな声が重なった。
「咲羅のバイト先って……あの変な兄ちゃんがいる??」
綾芽が恐る恐る聞くと、咲羅はプ~と頬を膨らませた。
「変って言わないでよ!閑那さんは私の尊敬している人なのよ!?」
咲羅は綾芽と眞葵に向かって、閑那の素晴らしさを語り始めた。
げんなりしている綾芽に代わって、眞葵がもう分かったからと咲羅を止めた。
「で、その素敵なお兄さんに俺らはご招待されたワケね」
「うんっ。閑那さんが、私たちにどうしても会わせたい人と話があるから、今日学校が終わったら絶対に来て欲しいって言われてるの」
笑顔で言う咲羅に、二人はもはや逆らえなかった……
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