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序章 ハジマリの刻:凛香(リンカ)

朝っぱらから雨に雷~?うっざ~い!!今日はもう学校ふけよ~!こんな日は授業なんてうけてらんないよ。もう一眠りしよ~っと――

アタシは夢を見た。どこか真っ暗な所。周りは一面の闇。何も見えない。怖い……とにかくここから抜け出したい。ここにいたらダメだ。直感的に、アタシはそう思った。一昔前に流行った、シックスセンスってヤツ?あれ?違ったっけ??ま、いっか――とにかく、あの時はそう思った。
『なんでアタシがこんな目に合わなきゃなんないのよっ!!』
心の中でそう叫んだアタシの前方に、うっすらと明かりが見えた。そう、まるで闇夜を照らす月明かりのように――一か八か、その光の方へ恐る恐るだけど、近付いてみた。
今いる暗闇みたいな不安感は全然なかった。逆に心地よい光と暖かさに、アタシは包まれていた。
『お姉ちゃん……』
どっかから小さい子の声が聞こえた。そら耳かと思っていたら――
『お姉ちゃん……』
な……何!?今の声!??
そら耳じゃなかったらしい――
「だ……誰!?誰かいるの??」
アタシは叫んでいた。
『怖がらないで……僕はここにいるよ?』
慌てて辺りを見回したら、ず~っと前の方に小さな人影が見えた。
「誰よ……そこにいるのは!?」
声が少しだけ震えていた。そして――
『僕は決してお姉ちゃんにキガイを加えたりはしないよ?だから……ここまで来て』
人の質問にはきちんと答えなさいよ!!そう思ってかなりムカッとしたアタシに、声の主はこう言った。
『僕はミカド――ここのカンリシャだよ』
今……心を読まれた?んなワケないよね。漫画やドラマの世界じゃあるまいし――
『ここは僕のテリトリーなんだ。ここにいる限り、僕にはお姉ちゃんのココロが読めてしまうんだ』
何故か、その時ミカドという男の子は寂しそうに言った感じがした。
『僕はお姉ちゃんに“チカラ”を与えなきゃいけないんだ』
何言ってんの??ワケ解んない!いきなりんなこと言われたって、パニくってるアタシには理解なんてできなかった――
『今は……まだ何も知らない方がいいよ』
ちょっと――夢なら覚めてよ!パニくってる頭の中でそんな事を叫んでいた。
『全ては――運命なんだ。受け入れるしかないんだよ……』
頭が痛かった……なんでアタシがこんな目に合わなきゃならないのよ――その頃には、パニックは怒りに変わっていた。
『お姉ちゃんには、僕と同じチカラ――“サトリノチカラ”を与えるね』
「ちょっと!!何のことか全然わかんないよっ!説明してよ!!」
アタシは久しぶりに叫んだ。こんな大きな声を出したのは何年ぶりだろう……
そんなこと考えてた次の瞬間、いきなり周りが光った。とてつもなく眩しくて、とても目なんか開けていられなかった。そして、その光はアタシに向かって飛んできた!
避けようと思った瞬間、その光はアタシの中に入っていった。とてつもなく熱く、なのにどこか懐かしいような――そんな感じに包まれていた。

目が覚めたアタシは、汗でびしょびしょだった。時計を見たら、朝起きた時間から1時間かそこらしか経ってなかった。でも、外は朝とは正反対の快晴だった。
「さっきのって……どうせ夢だよね」
あんなの気にしてたら、ストレスで禿げちゃうよね?華の女子高生が禿げてたまるかっ!ってことで、汗かいてキモいからシャワー浴びてさっぱりしよっ!そう思ったアタシは、一階の浴室へと向かった。で、廊下で母とすれ違ったときに、いきなり頭の中に声が響いた。
『まったく、どうしてこの子はこんな不良になったのかしら……私の育て方がいけなかったとでもいうの??』
それは、間違いなく母の声だった。でも、母とは一言も口を聞かずにすれ違ったのに――
いつからだろう……家族とは同じ家で生活をしているのに、顔を会わせても口を利かなくなったのは……昔はあんなに和気あいあいとしていた家族が崩壊したのは――

シャワーを浴び、さっぱりしたアタシはいつものように街をぶらついてた。学校へ行っていない友達は、大概この辺でぶらついてる。そんな仲間に落ち合うため、アタシはここへ来た。
「あれ~?凛香じゃん、今日もサボり?」
早速、仲間内でシュウと呼ばれてる男が声をかけてきた。
「朝起きたら土砂降りでさ~、学校行くのダルかったからね」
シュウと他愛もない話をしていた時、またさっきのように声が響いた。
『ったく、朝からこいつに会うなんて最悪だよ……早いとこ切り上げて別れっかな』
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