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序章 ハジマリの刻:涼(リョウ)

「閑那……どうやってここに入ったんだ?!」
ドアには確かに鍵をかけて出かけている。さっき開けたときに違和感はなかったから、こじ開けたのではないと判る。
「鍵なんて、私には関係無いのよ」
「関係無いってな~……鍵は閉めてあったはずだぞ?」
暗さに目が慣れてきたのか、閑那の姿を確認出きるようになった。
「んふふ……私にはそんなの関係無いのよ」
明るかったら、閑那はここでウィンクのひとつでもしていたんだろうな……
「私には他の人にはないチカラがあるのは、涼も知ってるわよね?」
そう言いながら、閑那はリビングにあるソファーに腰をおろした。
「あぁ……そのおかげで占い師をしてられるんだってな」
「えぇ、それもそうね」
「他にも何かあるってのか?――つーか、俺は寝たいんだが?」
「占いなんて、チカラのほんの一角に過ぎないわ……」
そういうと、閑那は立ち上がり俺の方に歩いてきた。
「突然お邪魔してごめんなさいね?でも、これだけは覚えておいて――刻は動いてしまった……もう誰にも止められないの。この私でさえも刻の前では無力なのよ……運命には誰も逆らえない……貴方はこれから幾多の困難に路を塞がれるわ。でも、貴方は一人じゃない。貴方と同じ運命を背負った人達とこれから出会うわ。その人達と路を切り開きなさい」
閑那は、そう言い終ると俺の横を通り過ぎて行こうとした。
「待てよ……それもお得意の占いか?」
俺は嘲るようにそう言い放った。
「違うわ。これは予言のようなモノ。今は信じられなくても、そのうち解るようになるわ……」
閑那は暗闇に消えていった。玄関から出て行った様子もなくこの空間そのものから消えたようだ――

あの奇妙なメールが着てから、何事もなくいつもとなんら変わらない日々が過ぎていったように思えていた――が、それはあっけなく崩れ落ちてしまった。
ふと目覚めると、まだ明け方近くだった。
何気に携帯を見ると――新着メール 1件という文字が。受信時間は夜中だった。差出人は柚琉だ。タバコをふかしながらメールを読み始めた。
『例のメールの件で、話があります。涼君の時間がある時でいいので、出来るだけ早く連絡を下さい。待ってます。 柚琉』
柚琉の出来るだけ早く=至急というのが冬夜に教わったアイツとの付き合い方の一つだ。まぁ、目も覚めちまったことだし、暇潰しも兼ねて電話してみっかな……でも、メールをメモらせてないのにどうやって――
呼び出し音が数回なると、柚琉の優しい声が聞こえた。
「こんなに早く連絡をくれるとは思ってなかったよ」
早く連絡よこせって言ったのは誰だよ……
「んなことより……話って何だよ?」
柚琉は苦手だ……何を考えているのかさっぱりわからないうえ、こういう口調そのものが俺には無理だ。だから、いつも用件だけしか話さないようにしている。でないと、こっちの調子が狂っちまう。
「はいはい……まったく涼君には愛想がないなぁ~……」
「俺はアンタの世間話に付き合ってるほど暇じゃ――」
「涼君、アサミって娘知ってる?」
俺が言い終える前に、柚琉は本題に入っていた。
「あぁ、何ヶ月か前にその辺のクラブで飲んだヤツにそんな名前の女がいたな……」
朝水というのは、飲み仲間のダチで俺に付きまとってる女の一人だろう……
「その娘がね――」
「ソイツがどうかしたんかよ?」
俺はイライラしてたまらなかった。
「ついさっき、変死体で見つかったらしいよ」
「はぁ?」
俺は間抜けな声を出していた。いきなり何を言い出すんだ、柚琉は……
「アサミって娘、ウリと薬ヤってたらしいね」
「お前……どこでそんなこと!?」
「僕の情報網を甘く見ないで欲しいな。これでも、分からないことはほぼ皆無だよ?」
俺は柚琉を甘く見ていたのかも知れない。朝水のウリと薬のことは、仲間内しか知らないことだと思い込んでいた。

柚琉の電話を切ってすぐに、メールが着た。またしても、知らないアドレスからだった。嫌な予感がしながらも開いてみると、そこには――
『冗談かと思っているようですが、私は本気なんですよ?(笑)これで信じて頂けたでしょう?次は、少し休ませて頂いて、1ヶ月以内にまた、あなたの大切な人に死んでもらいましょう』
俺は閑那の言っていた言葉を不意に思い出した。
刻は動いてしまった――
閑那の言っていた困難っていうのは――これから、俺の身に何が起ころうとしているのか、この時は知る術もなかったし、俺には関係無いと思い込んでいた。
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