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第二章 試練の刻

「ここまで来れば大丈夫かな……?」
一息吐きながら、綾芽は傷の具合を確かめた。
「本当に死ななかったのが奇跡だなぁ~……」
あちこちに痣や擦り傷を作りはしたが、なんとか命は繋ぎ止めたようだった。
「これも試練――ってとこか」
溜息を吐きつつ、これからの事を考える事にした。
おじさんの出現、それは綾芽にとって最悪としか言いようがない出来事であった。
アノ人を越えなければ、ここから抜け出る事は不可能であろうと、そう自負していた。
「さて――と、どうしようかなぁ……このままじゃ勝てないし」
よいしょっと立ち上がりながら、この体でどうやっておじさんと渡り合えばいいのか――まともにヤリあったんじゃこっちが負けるのは目に見えている。どうやって体の差を埋めるか、ソコが大きな問題となっている。
「考えてもラチが明かないか……相手はあのおじさんだしなぁ」
綾芽にとって、おじさんは唯一無二の恐怖の対象であった。その恐怖を乗り越えろというのが、試練の様に思えてならなかった。
「眞葵(マキ)と咲羅が居ない事だけが唯一の救い――って感じだな……」
苦笑しながら、考えを巡らせた。どう足掻いても、体の差は埋められない。
ならば、逆にこの差を上手く利用して越えるしかない。どうやって逆手に取るか――問題はソコだった。
この辺りでこの体を活かせる場所……眞葵達とよく遊んでいたあの林はどうだ?アソコなら――子供の体を活かせる!
「よし――そんじゃ、ま……鬼ごっこの再開とでもいきますか?」
そういうと、目の前にはおじさんが立っていた。
「ようやく見つけたぞ……綾芽!?」
「遅かったね、お・じ・さ・ん」
「貴様ぁ……」
「あははっ。悔しかったら捕まえてみれば~?」
綾芽は言い終えると同時にダッシュした。ここからが本番、とでも言うように――
「ったく……待てっつてんだろうが!このクソガキがっ!!?」
「待つわけないじゃん?おじさん頭悪すぎ~」
ケラケラと笑いながらも、林へと男を導く綾芽。アソコに上手く連れ込めれば――顔は笑っていても、心の中は恐怖一色だった。
「大丈夫、綾芽。アンタなら出来るよ。この位、今のアンタならどうって事ないでしょ!!」
口に出して自分を奮い立たせる。今はコレしか出来ない。それでも、何もしないよりかはマシだった。
あの角を曲がれば――そうすればこっちのモンだ。そう思った途端、よからぬ予感が当たってしまった。
「こんなのって……アリなん??」
「あっ綾芽ちゃんだ~!」
笑顔で手を振ってくる二人を見て愕然とする。が、迷っている暇などなかった。ヤツは確実に近づいて来ている。気配で判るほどに――
「きゃっ」
「痛いよ、綾芽ちゃん!!」
「いいから、死にたくなかったら一緒に来て!?」
気がつくと、二人の手を思いっきり引っ張りながら走っていた。あのまま置いてきたら、ヤツの餌食になりかねない。ソレを避けるには、こうするしか今は思い浮かばなかったのだ。
「死にたくなかったらって……?綾芽ちゃんどうかしたの?」
「おかしいよ、綾芽ちゃんいつもと違うよ!?」
「いいから……黙って一緒に来て!!」
巻き込みたくはなかった。二人におじさんの事を知られたくなかった。
けれど、あのまま置いて来たんじゃ、私の名前を口にした途端に、殴る蹴るの嵐が二人を襲うだろう。
「綾芽ちゃん、またおじさんから逃げてるの?」
もうすぐ林だという所で、咲羅がふいに綾芽に聞いた。何で咲羅が知ってるの??私は咲羅や眞葵に教えた覚えは無いのに――
一瞬足が止まってしまった。けど、このまま此処で呆然といていたら、3人ともおじさんにヤられる。そう思ったら、止まっていた足が動き出した。
「大丈夫だよ、綾芽ちゃん」
眞葵が笑顔でそう言った瞬間、背筋が凍る思いをする事になった。さっきまで一緒に居た眞葵と咲羅が消え、ソコには――眞葵と咲羅が立っていた場所には、何故かおじさんとお母さんが立っていた。
「綾芽……貴女またこの人の事を『おじさん』って呼んだんですって?」
後ずさりしながら、2人に背中を見せないように気をつけた。
「百合ぃ~、コイツやっぱりお仕置きが足りねぇんじゃねぇのかぁ??」
「そうかも知れないわね~……男親無しで周りから冷たい視線受けてるってのに、この子ちっとも判ってないみたいだし?」
「いや……やめて……お母さん……おじさん……」
「コイツッ!?また俺の事おじさんって呼びやがったぜ??聞いたろ、百合?!」
「えぇ……この耳でしっかりとね――」
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