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第二章 試練の刻

「チッ……しぶてぇガキだな、テメエはよ!」
悪態を吐きながら、男は綾芽へと近づいていく。
何とか体勢を立て直した綾芽は、思いっきり走った。体中が痛い――でも、立ち止まったらヤツに捕まる。その恐怖心から、無我夢中で逃げ走る。

「キャーーーーー!!」
「静紅!?」
涼は静紅を助けようともがくが、がっちりと体を羽交い締めにされているため、身動き一つ自由にならない。
「このっ……離しやがれ!!」
しかし、男はいっこうに離す気配が無い。
意を決して、涼は自分を羽交い締めにしている男を利用し、目の前に立っている雅季の顔を目掛けて蹴り込んだ。
が、雅季に気付かれてしまい、当初の狙いは外れてしまった。
だが、雅季は気付くのが遅かったのか、ソレを完全には避け切れていなかった。
不意に喰らった蹴りの痛さに、雅季は膝をつき肩を押さえている。そのお陰で、涼は漸く静紅の姿を見る事が出来るようになった。
「いや……涼、見ないで!」
ソコには、数人の男により犯されている静紅の姿があった。
「静紅っ!!」
我を失った涼は、力任せに後ろにいる男を投げ飛ばし、行く手を阻む雅季達に殴りかかった。人数的には絶対に不利である。
「テメエは大人しく見学してなっ!」
昔なら静紅を見捨てて逃げていただろう。しかし、もう二度と同じ過ちを繰り返したくはなかった。そう、もう二度と――
「俺は……もう逃げるのは止めたんだ!!」
叫びながら、涼は雅季に殴りかかっていた。
涼の動きを先読みした雅季は、余裕でその攻撃をかわすと素早く蹴りを入れた。
だが、涼もその行動を読んでいたのか、サッとかわした。すると、今度は別の男が殴りかかってきたのだ。
「黙って言うこと聞いてれば、痛い目見なくて済むのによ~」
「雅季さん、コイツは俺等に任せて楽しんできて下さいよ」
殴りかかてきた男を返り討ちにし、雅季目掛けて突進しようとするが、呆気なく阻まれてしまった。
「あぁ、悪いな。涼、テメエばかりに美味しい思いはさせないぜ?」
「チッ……もうお前の思い通りに動くオモチャじゃねぇって、言ってんだろうがっ!!」
叫びながら涼は行く手を阻む男達を次々と殴り、蹴り倒していった。
しかし、雅季は確実に静紅の許へと近づいていく。
「いや……来ないで……」
「来るなって言われて、はいそうですかって言うわけないだろ?静紅、涼と付き合ったアンタがイケナイんだよ――」
「静紅に……静紅に手ェ出すんじゃねぇ!!」
「おい――」
雅季に近づこうとする涼を、またしても雅季の仲間に遮られる。
何回倒しても、その数は一向に減る兆しは見えない。

「ったく……何なんだよ、お前等は……」
「アンタの思い通りにはならないって事だよ、涼さん?」
ニタニタと笑いながら、男達は涼に詰め寄ってくる。気を抜いたら、一斉に仕掛けてくるつもりらしい。
「フッ……」
その事を思うと、涼は何故か笑みがこぼれた。この俺が、こんなにも安く思われてるなんてな――
「反吐が出るぜ、手前等のやり方にはな!」
「何とでも言うがいいさ!お前には決して止められないんだからな!!」
「ハッ!負け犬の遠吠えにしか聞こえねぇんだよ!!」
「何だと!?この……生意気言ってんじゃねぇぞ!涼ごときが!!」
「何とでも言えよ?お前等ごときがいくら束になろうが、俺の敵じゃねぇんだよ!」
「チクショー……人が下出に出てるからっていい気になりやがって――」
「雅季さん!コイツ、殺っちゃっていいすよね??」
「あ~……好きにしていいぜ?なぁ、静紅」
「駄目っ――逃げて!涼!?」
「悪ぃけど――俺はもう逃げないって決めたんだよ!」
ナニかに覚醒でもしたかの如く、涼の風貌がいきなり変わった。力も先程とは打って変わって、大勢の男達相手にかすり傷一つ負っていない。
「ヘッ……こういうコトかよ!」
チカラの覚醒を自覚すると、涼はもの凄い速さで男達をなぎ倒していった。
「悪ぃが――夢はここまでだぜ?雅季」
「チッ……いつの間に――」
雅季が言い終える前に、涼は雅季の頭を鷲掴みにしていた。
「お前には随分と世話になったよなぁ~?」
「痛ぇ~!!放しやがれ!涼!?」
「お前には、奴等とは比べ物にならない位のお返しをしないとな――」
悪笑を浮かべた涼は、雅季の頭を鷲掴みにしている手に一層力を加えた。
「痛っ……放せ、涼!!?」
「放せと言われて放すヤツがいるか?雅季?」
ブチブチと髪の毛が切れる音が断続的に続く。
「涼!お願いだから止めて!!」
「静紅……お前を犯したヤツを助けるつもりか?」
「そんなんじゃ……ないよ……」
「じゃあ――何だと言うんだ?」
すっかり人格まで変わってきている涼。
それを察した静紅は、泣きながら涼を止めた。
「涼に――罪を犯して欲しくないのよ……!!」
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