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第二章 試練の刻

感情を押し殺し、平静を装いながら男達に問う涼。しかし、答えはすでに知っている。コレは過去のセカイだ。
何が起こるか――涼にはすでに分かっている。そう思っていた。
「何って……ナニに決まってるよな~?」
「こっからがお楽しみだぜ?涼ちゃん?」
気が付くと、涼の後ろにも数人の男が立っていた。
「なっ……」
「ココはアンタの知っているセカイじゃないんだよ!」
涼の後ろに立っていた男が、その声を合図に涼を羽交い締めにした。
「こんなんじゃ……なかったハズだ!!」
「言っただろ?ココはアンタの知っているセカイじゃないんだってな」
さっきとは別の男が、悪戯っぽく笑いながら涼にそう言い、近づいてきた。
「ココは――アンタが一番恐れているコトを実現するセカイなんだよ!」
言葉と同時に、男の拳が正確に鳩尾にのめり込んだ。
「ぐっ……」
その痛みに堪えながら、涼は男を睨み返した。
「お~怖っ」
笑いながら男は涼の髪を鷲掴みにし、自分の顔に近づけた。
「お楽しみはこっからだぜ?涼ちゃんよ~」
「ふざけんな――雅季(マサキ)」
「いつから俺に逆らえる様になったんだよ!テメエの立場を弁えろや!!」
涼に雅季と呼ばれた男が、静紅を囲んでいる男達に目で合図した。
涼からは雅季が邪魔で、静紅の姿は見えない。が、何が起こるのかは知っていた。状況は違うが、起こることは同じだと思っていたのだ。
「イヤッ……来ないで……」
「静紅!!」

「私の進むべき道――か。今頃咲羅(サクラ)達心配してんだろうな~……」
綾芽は苦笑しながらドアノブに手をかけた。力を入れずにそっと触れただけなのに、一瞬にして周りの光景が変わった。
「ココは――」
綾芽の脳裏を嫌な予感が遮った。
「確かに、コレはちょっとキツいな~……耐えられるのかなぁ~……」
『自分を信じられなかったら負ける』
楓が言っていた事を思い出し、大丈夫と自分に言い聞かせながら歩みを進めた。懐かしい町並みが綾芽を包み込む。
「そう言えば、こんな店もあったなぁ~……」
恐怖よりも、懐かしさが勝っていた。
昔、通学時に通っていた道。今ではたまにしか通らないから、いつの間にか在ったハズの店が無くなっている、というのが現実である。
しかし、ココは現実ではない。当時のまま、その道は存在している。
ふと店のショーウィンドウのガラスに映った自分に目をやると、ソコには幼い自分の姿が映っていた。
「な……にコレ??」
思わず口を出て吐いた言葉。
ガラスから自分の体へと目を移すと、やはり体は縮んでいた。あの頃とまったく同じ状態でクリアしろとでも言わんばかりに――
「まいったなぁ~……まさかとは思ったけど、外見まで同じとはなぁ」
溜め息を吐きつつ、綾芽は歩を進める事にした。

「待てっつってんだろ!このクソガキが!!」
とある一軒家に近づくと、男の罵声が聞こえた。
「やっぱりコレなんだ……あぁ~やだなぁ……」
男の罵声が聞こえた家を見ていると、中から小さな女の子が走り出てきた。
その女の子は綾芽の姿を見ると、近くまで走りより、ニコッと微笑みかけるとそのまま綾芽に向かって突進してきた。
ぶつかる!と思い目を瞑ったが、何の衝撃もない。不思議に思い目を開けると、女の子の姿は消えていた。呆気に取られていると、女の子を追ってきたらしき男が、ドカドカと足音をたてて出てきた。
「綾芽っ!やっと捕まえたぞ!!」
男はもの凄い形相で綾芽の腕を掴んだ。
男が切れた息を整え終わる頃には、綾芽は冷や汗と鳥肌に襲われていた。
昔の事とはいえ、やはり怖い。男の次の行動が判っていても避けられない。
この体じゃ、反撃のしようもない。
綾芽は恐怖のあまりに目を固く瞑り、身を縮めた。その瞬間、綾芽の体は男に抱え上げられてしまった。
「放して、おじさんっ!!」
「テメエ……おじさんって呼ぶなっつっただろが!!」
男が怒鳴ると同時に、綾芽を地面へと叩き付けた。綾芽は大怪我だけは避けようと、頭を抱え込み地面へと落ちた。
幸い、打ち身や捻挫程度で済んだものの、下手をすれば死んでいたかもしれない――
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