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第二章 試練の刻

歪んだ空間に吸い込まれたと思ったら、二人は真っ暗な――1m先すら全く見えない暗闇に立っていた。
「ようこそ、『アンダー・ブレイン』へ」
2人の後ろから、楓が声をかけた。
「アンダー・ブレイン?」
「そうよ。ココの事を私達はそう呼んでいるの。誰が始めにそう呼んだかは知らないけどね」
「ココで――チカラを手に入れるのか?こんな何もない暗闇で……」
涼は溜め息を吐きながら辺りを見回した。
「ついて来て。目的の場所までは連れて行ってあげる。けど、私から離れたら……その時点で終わりだと思ってね?迷ったらチカラを手に入れるどころか、死ぬ事も許されずに彷徨い続ける事になるから」
楓は言い終えると同時に歩き出した。2人には見えない道が、楓には見えているかの様な確かな足取りで――
2人は置き去りにならなぬ様に、そしてはぐれない様に楓の後ろを一定の距離を保ったまま歩き続けた。会話など一切無い、暗闇と沈黙の世界が3人を包んでいた。
どの位歩いたのかすら分からない。時間の感覚が全く無くなっていた。疲れるという感覚すら無い。
しかし、頭の中ではもう嫌という程歩いた様な感覚に陥っていた。そんな感覚に耐えられなくなった綾芽は、楓に切り出した。
「楓さん、いったい何処まで行くんですか?」
「もう着いてるよ?早速飲み込まれかけたみたいだね、貴女達」
「え?」
「どういう事だ?」
「周りをよく見てみなよ」
楓に言われ、辺りを見回すと暗闇の中に無数のドアが存在していた。
「これは……?」
「見ての通り、ドアだけど?」
「そんな事は解っている!」
「ココから先、何処に行くかは自分で決めないと。私はココまで案内するしか出来ないしね」
「そんな……」
「どのドアを選ぶかはもう判っているはずだよ。自分が進むべき先が何処か、それが解るのは貴女達だけだよ?自分に問いかけて、何処に行くか決めなさい」
もう判っている――自分の進むべき先……自分にしか解らない……何処が……どのドアが進むべき道に続いている……?どれだ――
『ここだよ』
無数のドアを睨む様に見ていたら、頭に声が響いた。
「え?」
「なんだ……今のは??」
「聞こえたみたいだね。さぁ、声のするドアへ進みなさい。ソコが貴女達の進むべき道よ」
「声のする……ドア……」
どれから聞こえているのかも分からない。けど、なんとなく声のする方向へ歩いて行った。近くに行けば――どのドアか判るハズ……
『ここだよ。早く来て』
さっきよりも声が大きくなった。二人はそれぞれの探しているドアへと近づいている。そう確信した途端、他のドアがぼんやりとし始め最後には消えてしまった。
「私の役目は――ひとまず無事に終わったってとこかな」
楓はそう言うと、暗闇の中に飲み込まれていった。

「ここが……俺の進むべき道、か……」
涼がドアに手をかけた瞬間、さっきまでの暗闇とは一転して懐かしい風景が目の前に広がった。
懐かしい――しかし、決して思い出したくもない事件が起こった時の風景だった。
「チッ……よりにもよってコレが俺の試練だとはな……」
涼は呟きながら、確実な足取りでソコに向かっていた。戸惑いはしたが、迷いはなかった。
もう過去の事だ――そう自分に言い聞かせながら、歩み続ける。心の奥底に閉じ込めていた記憶を頼りに、ゆっくりと重い足を前へと進める。

やがて、周りを鬱蒼とした木々が囲む開けた場所に辿り着いた。目を閉じ、深く深呼吸をする涼。覚悟は出来ている。もう二度と、同じ過ちは繰り返さない――そう心に決めていた。
目を開けると、ソコには数人の男に囲まれ、一人の女が立っていた。
「静紅(シズク)……」
女を見て、涼は呟いた。やっぱりコレか……涼は静紅の姿を見て確信した。
「確かに……コレは思い出したくもない嫌な事だな……」
苦笑する涼を無視し、周りはコトを進めていく。
「来ちゃ駄目って言ったのに……どうして?涼!?」
「ヘッ……やっとご到着、だな?涼」
「待ちくたびれたぜ?ビビって逃げたかと思ったよ!」
一人の男がそう言うと、他の男達がゲラゲラと笑いだした。静紅は声を殺して泣いている。
「お前等……静紅に何しやがった?」
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